「地方⇒東京」の温泉ワーケーション
ワーケーションというと、「都市から地方へ」という文脈で語られがちである。
しかし、その逆はワーケーションではないのだろうか。無論、そんなことはない。
逆転の発想というほどでもないが、今回は「地方から都市へ」という文脈で温泉ワーケーションを考えてみよう。
札幌在住だからわかる東京の凄み
実際、ビジネスパーソンが集中しているのは、東京を中心とした首都圏であり、大阪、名古屋、福岡、札幌、仙台などの都市部である。そして、都市部で働く人が休暇やレジャーで出かけるのは、都市部から離れた自然豊かな地方であることが多い。
したがって、「ワーケーション=都市部から地方へ」という前提になりがちなのは当然ともいえる。
「地方から都市へ」はメインストリームではないかもしれない。だが、地方から東京などの都市部にやってきて、仕事や休暇を両立することも立派なワーケーションであることに議論の余地はないだろう。
このことは私が札幌在住だからこそよく理解できる。私は2021年1月に東京から札幌に移住してきた。札幌も大きな都市なので、雪がたくさん降ること以外、生活に不便を感じることはない。自然が身近な環境で生活できるのも大きな魅力である。
だが、東京は札幌などの地方都市とはあらゆるものの規模が違う。経済の規模も人の多さも桁違いだが、やはり東京はエネルギーや刺激に満ちている。住んでいるときは当たり前の環境に慣れ切っていたが、東京から離れて1年近くが経った今、大都会・東京ならではの凄みをあらためて実感している。
東京出張のついでにワーケーション
そこで提案したいのは、地方から東京などの都市部に出て、ワーケーションをすることである。
都市部にしばらく滞在し、そこでしか体験できないスポットやイベントなどを訪れて、さまざまな刺激を受けて帰ってくることは、ビジネスにとっても人生にとってもプラスになるはずだ。街を歩いているだけでも、普段の生活からは思いもよらない発想のヒントが見つかる可能性がある。
もともと東京など都市部に出張する機会があるビジネスパーソンなら、仕事のついでに延泊して、都市部で休暇を楽しむことができる。いわゆる「ブレジャー」という形態である。
もちろん、出張などなくても、都市部でテレワークをしながら、さまざまな場所に出かけて刺激を受けるのもいいだろう。
「都市型温泉ワーケーション」の可能性
では、「地方⇒都市」のワーケーションで、私の提唱する「温泉ワーケーション」は成立するだろうか。
たとえば、東京でワーケションをする場合、「東京まで来たのに、わざわざ温泉に出かける必要はないだろう」という声も聞こえてきそうだ。たしかに、都内に滞在するだけでも十分にワーケーションの目的を果たせるかもしれない。
それでも、あえて「温泉ワーケーション」をおすすめしたい。都内にも温泉付きのホテルや宿泊施設は存在するが、残念ながら湯の質という点では地方の温泉には敵わない。あえて東京のど真ん中で温泉に入る必要性もないだろう。
おすすめは、東京近郊の温泉地まで足を延ばすことである。たとえば、東京の都心部から箱根や湯河原、熱海などの温泉地は想像以上に近い。熱海は新幹線で40分ほどの距離だ。アクセスなどの利便性も東京の魅力である。電車の本数も多いし、各温泉地へ直通バスが出ていたりする。
たとえば、地方から1週間の予定で東京でワーケーションをするなら、「半分は東京の都心部、残りの半分は温泉地で過ごす」というスケジュールもけっして無理ではない。
箱根や熱海といった温泉地は都心部や外国人の客が多いことから、地方の温泉地では見られない魅力や賑やかさ、サービスを備えている。癒しだけでなく、ビジネスの観点からも刺激を得られるかもしれない。
東京以外でもこのような「都市型温泉ワーケーション」は可能である。たとえば、宮崎や鹿児島で生活している人が福岡の都市部でワーケーションを実施するというプランも考えられる。
博多駅から電車で10数分の距離には二日市温泉という歴史ある温泉地が存在する。温泉宿を拠点にして、博多の都市部のコワーキングスペースを利用しながら「温泉ワーケーション」をするのもありかもしれない。
ワーケーションは「都市⇒地方」の一方通行ではない。「地方⇒都市」という発想をもつことで、ワーケーションの可能性はさらに広がるのではないだろうか。
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