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温泉ライターが本気で推す温泉本#10『厳選 中国・四国かけ流し温泉ガイド&メモ』

温泉の沼にハマり、湯めぐりを始めてから20年。その間、数多くの先人たちの書籍から温泉について学んできた。

そこで、私がこれまで読んできた温泉関連書籍の中から、特に影響を受けてきた本を紹介していきたい。

第10回は、『厳選 中国・四国かけ流し温泉ガイド&メモ』(中野一行著、ザメディアジョン)

温泉ライターという立場上、「いい温泉はどうやって見つけたらいいですか?」という質問をよく受ける。

いまやインターネットで検索すれば、かなりディープな温泉でも温泉愛好家による詳細なレポートなどが見つかり、その温泉の大まかなイメージをつかむことができる。

もちろん、私もインターネットは大いに利用しているが、検索をかけるのは目的がはっきりしている場合に限られる。

たとえば、「○○県△△市」に出張の予定がある場合は、「△△市 温泉」などのキーワードで検索をかける。すると、自分の未湯の温泉が見つかったりするので、その温泉について、さらに検索ワードを絞って詳細な情報を確認していく。

だが、なんとなく「このエリアでいい温泉ないかな」と目的が漠然としている場合、検索をかけても情報が多すぎて、その波にのまれてしまう。

私の場合は全国津々浦々、おおまかに温泉地のことを把握しているため、自然と情報は絞れていくが、「たまには温泉旅行にでも行こう」という人は、漫然とインターネットで調べてみても絞り切れないのではないだろうか。

そこで頼りになるのが温泉ガイド本である。たいていは「テーマ別」「エリア別」のどちらかの切り口でまとめられている。

「テーマ別」であれば、拙著『絶景温泉100』などが該当する。絶景の温泉に憧れるのであれば、本書を参考にすると候補を絞りやすいだろう。

一方、「東北」「関東」「関西」などの「エリア別」にまとめた温泉ガイドの場合、目的地がおおまかに決まっている場合は便利である。雑誌やムックなどでもエリア別に括られているパターンが多い。

こうした温泉ガイド本の利点は、インターネットと比較して一覧性がすぐれていることだ。情報が整理されているので、自分が求める情報にすぐアクセスできる。

ただ、注意が必要なのは、これらの本が「どういう編集方針で温泉をピックアップしているか」だ。たとえば、私のように温泉愛好家であれば、湯の質にはこだわりたいので、「源泉かけ流し」であるかどうかは大事なポイントになる。

だが、そうなると頼りになる温泉ガイドはかぎられる。源泉かけ流しなど湯の質に重きを置いて紹介している著者の本を手に入れるほかない。私の場合も、信頼をおいている温泉ガイドを、エリアごとに手元に置いている。

そのうちの一冊が『厳選 中国・四国かけ流し温泉ガイド&メモ』である。

中国・四国エリアは面積の割りには温泉資源に恵まれていない。鳥取・島根・山口の山陰には湯質のすばらしい温泉地が点在するが、山陽エリア(瀬戸内海沿岸)と四国は、極端に源泉かけ流しの湯が少ない。

そんな同エリアの数限られたかけ流し温泉に特化して紹介するのが本書である。著者は広島を拠点に中国・四国の湯めぐりをしているカメラマンだ。

紹介されている件数はさほど多くはない。たとえば広島県は6軒、四国全体で10軒である。裏を返せば、それほどにこのエリアでは源泉かけ流しは貴重な存在だということ。

本書で紹介されている湯には7割くらい入浴したことがあるが、どこも納得の湯ばかりなので、残りの3割もぜひ訪ねてみたいと思っている。だから、中国・四国方面へ出かけるときは、まず本書のページをめくることになる。

本書のように自分が信頼を置ける温泉ガイドが手元にあると心強い。そのほかのエリアだと、北海道は小野寺淳子さんの『決定版 北海道の温泉まるごとガイド2022-23』。源泉かけ流しに特化しているわけではないが、北海道のほとんどの湯が網羅されているため、未湯の温泉を調べるのに重宝している。

九州だと『九州 男の隠れ湯 300湯』(合原幸晴)、『九州絶品温泉 ドコ行こ?――温泉天国 九州美肌の湯』(北出恭子)の2冊。ともに源泉かけ流しにこだわってセレクトされているため、安心して訪ねることができる。

温泉との相性は人それぞれである。まずは「この人がすすめるなら間違いない」という存在を見つけることが、いい温泉に出会う近道かもしれない。

温泉ガイド本にかぎらず、SNSやブログなどでお気に入りの温泉愛好家が推す温泉を訪ねみるといいだろう。

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