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投資家向け資料の構成を考えてみる 〜#5 i-plug(4177)の場合〜

ども、そろもんです。

仕事で上場を目指している会社さんのサポートをしているときに「資金調達のために投資家へどうやって自社の将来性を伝えれば良いのか」と言われることがありました。

ネットを探せばベンチャー経営者向けにピッチ資料の作り方を解説したコンテンツはたくさんありますが、個人的に新規上場銘柄への投資をやっていることもあり、新しく上場する会社の「成長可能性に関する説明資料」を読んでみるのもヒントになるんじゃないかと思い、具体例をみてまとめてみようと思いました。

趣味の一環でやっているので小難しいことは書かず、感想ベースでまとめます。

今回は2021年3月に上場したi-plugです。
成長可能性に関する説明資料はこちら

事業内容

まずは事業内容から。

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新卒用のダイレクトリクルーティングのプラットフォームを提供しています。
特色は、プロフィール情報の中に適性検査を含めることで、企業側が採用したい学生とのマッチング精度を向上させているところにあります。

企業側にも社内の活躍社員の適性検査情報を登録してもらうことで、実際に活躍している社員に似た社員をマッチングできるという点が魅力です。

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課金システムは成功報酬型と早期定額型があります。
成功報酬型は次の3月末までだけ利用できるプランで、採用人数に応じて一定額を頂く形態です。

早期定額型は次の次の3月末まで利用できるプランで、当初採用予定数に応じた期間利用料に加えて、当初採用予定数を超えた際に超過採用人数に応じて一定額を頂く形態です。
予定数採用できる自信のある企業にとっては実質的な値引きになりますが、i-plugからすると期間収入になるので、この契約数を増やすことが積極投資を通じた成長のために重要になりそうです。

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上記二つのスライドで他の主流サービスとのポジショニングの違いを説明しています。
企業側から見た「募集枠の充足と採用投資効率向上のためにターゲット層に直接アプローチしたい」という課題を満たすには新卒ダイレクトリクルーティングがフィットするということが表現されています。

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マーケット状況としては、新卒採用サービス全体では市場成長は鈍化しているものの、マス向けのアプローチではない直接アプローチ型のサービスは成長しており、中でも新卒向けダイレクトリクルーティングは市場が立ち上がったばかりということもあり成長性が大きいと説明されています。

今なら先行者利益が狙える、ということでしょうか。

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コロナ禍という最近の環境変化が自社にとっては追い風であるという説明もされています。

実績紹介

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登録学生数、企業登録数とも高い成長率を維持しています。

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これは公表するのに勇気がいる数字だったと思いますが、同社のサービスを通じて実際に採用決定した人数も公表されています。

直近年度の決定人数(3,441)÷企業登録数(7,547)は45.6%となっており、単純計算では半数以上の企業が採用できなかったことになりますが、一番初めの年度が14.1%だったことを考えるとかなり確率が上がってきています。

どれくらいの割合が妥当なのかよくわかりませんが、確度が向上していっているというのはアピールポイントになると思います。

強み

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人材紹介ビジネスは一般的に入社人数に応じて売上が発生する成功報酬型の収益モデルですが、同社はストック収益化するプランも提供し、収益の安定化を図っています。
昨今の風潮として、ストック型ビジネスであることを打ち出せると投資家からの評価も高くなると思いますので、どうやってそのような説明ができるかは重要です。
ただ、ストック型と書いてあっても実際の性質が伴っていないことがバレてしまうと逆効果だと思いますので、その点は注意が必要と思います。

同社の場合は顧客企業へ採用管理システムとしての機能も提供しており、その中でデータを蓄積して採用活動分析もできるようにすることで、実際にもストック化していっているように思いました。

成長戦略

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大枠では新卒採用領域を起点とした新規事業展開も検討されているようですが、当面はOfferBox自体の強化が成長戦略の主軸となっています。

売上は採用単価×採用決定数で構成されますが、上記スライドのとおり最重要ターゲットの絞り込みをロジカルに行い、どのような施策を当てるか具体的に説明されています。

他と並列で書かれているためあまり目立ちませんが、営業人員を増員して現状存在しないカスタマーサクセスを設置する、というのは結構大事な点では無いかと思います。
このビジネスでカスタマーサクセス機能不在でここまで成長したことを考えると、結構な伸びしろを感じます。
できていないことのアピールにもなってしまうので書き方が難しいですが、うまく伝えられるとより成長可能性が感じられる気がします。

まとめ

・ダイレクトリクルーティング+適性検査という組み合わせでサービスの独自性を説明している。

・顧客企業の課題感と自社のポジショニング、プロダクトの関係性をきっちり説明している。

・少子化で新卒採用マーケットは悲観的に思われがちなところだが、実際の事業領域に絞ったデータを見せることで同社の主戦場が成長領域であると説明している。

・最近の環境変化(コロナ禍)が機会であることを説明している。

・マッチング効率の改善状況をグラフ(決定人数推移)で説明している。

・一般的な直接アプローチ型サービスはフロー型ビジネスになりがちだが、提供プランの作り方でストック型ビジネスになっているとアピールしている。(採用管理システム機能も提供しており、データ蓄積によってスイッチングコストが上がる点も説明するとなお良かったかも)

・成長のための短期施策が明確。

おまけ

おまけ

エンジニアの方がよくやるもくもく会を学生向けに横展開してました。
学生側のニーズも吸収できると思いますし、クチコミで登録者を増えそうという点でも良さそうです。


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