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【読書記録】「たけしくん、ハイ!」ビートたけし

初版は1984年の太田出版で、その後新潮文庫版を経て、私が読んだのは金の星社の「ビートたけし傑作集 少年編1」として2010年に発行されている。かなり息の長いベストセラー。

本人が原稿を書いたというより口述したものを文字起こししたんじゃないかと思う文体だけど、貧乏な子供時代が芸人らしいユーモアを交えて語られていて一気読みしてしまった。

一番印象に残ったのが、掘っ立て小屋みたいなところに住んでいる友達が留守の間に家に忍び込んで、柱を切って家を潰してしまったというエピソード。一家が帰宅して、ペタンコになった家が見えるところに親子三人でポツンと立っていた、という描写のところで、笑ってしまうような、寂しい気持ちに浸ってしまうような絶妙な語り口で引き込まれてしまった。

さっきも書いたように多分口述で書かれているのでサクサク読める。基本的には「やんなったよね」「ひどかったよね」など、自分の子供時代がいかに貧乏で悲惨なものだったかということを語っているけど、その背後にはたけしが幼少期に対して抱いている優しい、懐かしい眼差しがあるんだろうなと感じた。そして読者としてもその眼差しを共有できた。名作。


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