つむり

趣味で小説を書いています。気が向いた時に投稿します。スキありがとうございます。

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最近の記事

【オリジナル小説】鬼化事件の収束と友人アルの活躍について②(完)

 島の中心には、研究所がそびえ立っていた。元々あった貴族の塔を改築したものらしい。周囲は荒れた木々に囲まれ、まるでジャングルだった。 「さて、どうやって進む? ここって鬼だらけなんだろ」  エドが誰にともなく訊ねた。 「アルがいるじゃないか」  答えたのはキースだった。 「でも、アルの力は人間にしか効かないんじゃ」 「うん。そこで、これを使う」  キースは半円状の装置を取り出して見せた。それをアルの手に握らせて説明する。 「これはエンハンサー。能力強化装置だ。

    • 【オリジナル小説】鬼化事件の収束と友人アルの活躍について①

       老紳士の髭のような雲が空の九割を占めている。エドは雨が嫌いだった。一雨きそうな天気に自然とため息が出る。 「何」  親友のアルが素っ気なく訊ねた。 「あー、別に。ただ、雨降りそうで」  窓際の椅子から降りながら答える。さして興味もなかったのか、アルはふーんという表情で目の前のパズルに集中していた。  コンコン  ノックの音がして、部屋のドアが開いた。 「そろそろ時間よ、エドヴァルド」  エプロン姿のハーパー夫人は、エドが素直に頷くのを見てキッチンへと戻って行った。開いたドア

      • 【完全版】リアム・クルス

        序章~第1章まで公開中のオリジナル小説『リアム・クルス』の完全版を販売致します。是非ともご検討ください。

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        • オリジナル小説 リアム・クルス(第1章)

          第1章 リアムとカイル  灰色の壁に囲まれた、ひどく薄暗い小さな部屋で、一人の男の子が目を覚ました。彼の名はリアムといった。  窓のない部屋には言うまでもなく朝日など射し込まないが、生まれたときからずっと規則正しい生活を送ってきたリアムにとって、昨日や一昨日と全く同じ時刻に起床することなど容易だった。  リアムはまだ五歳だが、いつも一人で寝ているし、一人でちゃんと起きている。着替えもする。それから、女が階段の上のドアを開けて自分の名前を呼ぶのを待つのだ。  この日も女はリア

        【オリジナル小説】鬼化事件の収束と友人アルの活躍について②(完)

          オリジナル小説 リアム・クルス(序章)

          序章 ハンナ  高校生の頃、ハンナの人生は実に順風満帆だった。恵まれた容姿に加え、社交的な性格で友人も多く、地元の学校では一二を争うほどの人気者だった。父親の仕事は弁護士で、わりあい裕福な家庭で育った。 ――将来は教師になって、学校で子どもたちにいろいろなことを教えて、私のように素晴らしい人生を送ってほしい。  子ども好きなハンナは、いつしかそんな想いを抱いていた。努力家な面も相まって、成績も優秀だった。  当然、大学に進学するつもりだった。だが、受験シーズンを前に、両親か

          オリジナル小説 リアム・クルス(序章)

          初めての長編小説(あらすじ)

           現代のアメリカ。容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能と三拍子揃ったお嬢様育ちのハンナは、同じくハイスペックな男性ヘンリー・クルスと結婚する。高台に新居を買い、今後の生活への期待に胸を膨らませていた。ところが、ヘンリーはDV夫だった。ハンナは誰にも相談できずに苦しむが、しばらくして男の子を妊娠すると、子ども好きの夫は喜び、ハンナに優しく接するようになる。だが、結局は流産してしまい、夫は家を出て行く。夫と息子を失い、実親からも冷遇されたハンナは、失意のうちに立ち寄った公園で、ベビー

          初めての長編小説(あらすじ)