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DAY16:推しの出演作品の中でも特に一押しの作品〜大人計画『キレイ-神様と待ち合わせした女-』〜


 「推し」と呼称できるひとがいない。さあ困った。

 わたしには、推しがいない。
 好きなひと、尊敬するひと、憧れのひと等はたくさんいる。いすぎて困る。けれど、その人たちに「推し」という言葉を添えるのは、何か違う。
 そういうはなしを、違うマガジンでしている。

(これも、ぼちぼち更新したい。話したいこといっぱいだ!)

 今回はご贔屓の作品をつらつらと。

 わたしのご贔屓の一人に、生田絵梨花さんがいる。

 生田さんは皆様ご存じ、大人気アイドルグループ・乃木坂46の元メンバー。歌唱力がピカイチで、音大卒でピアノの腕前も素晴らしい、グループ在籍時からさまざまなミュージカルで活躍している俳優さんだ。(ちなみに彼女、昨年バイオリンにも挑戦していた。そしてその部類のミュージカルでヒロインを務めている。すごい。すごすぎる。)

 グループ在籍時から茶の間オタクして彼女の活躍を見守っていたけれど、彼女の出演作品、基本的にチケットが取りづら過ぎて(出演者全員に大勢ファンがいらっしゃる)東宝ミュージカルは劇場で見たことがない。配信も今のように常時あるようなジャンルでもないため、「いつか絶対観に行く!」という心持ちだけ強く持っている。ほんと観たいから運を引き寄せるイメトレだけはしている。

 
 で、結局何を観たことがあるのか。(前説が長い)


 松尾スズキ主宰の大人計画『キレイ-神様と待ち合わせした女-』。
 わたしがはじめて、ナマで、【俳優・生田絵梨花】に会ったミュージカルだ。

 『キレイ』の上演は4回目。これまで奥菜恵さん、鈴木蘭々さん、多部未華子さんが主演を務めてきた。
 そんな『キレイ』のあらすじはこちら。

三つの国に分かれ、民族戦争が100年続く“もうひとつの日本”。争いのさなか、民族解放軍を名乗る集団に誘拐監禁されていた少女が10年ぶりにソトの世界に脱出した。過去をすべて忘れた少女は自ら“ケガレ”と名乗り、大豆でできたダイズ兵の死体回収業者のカネコ組の仲間となる。ダイズ兵を食用加工するダイダイ食品の社長令嬢カスミとも奇妙な友情で結ばれるケガレ。死体を拾い小銭を稼ぐ彼女を見守るのは、成人したケガレであるミソギだ。死に憧れながら死ねないダイズ兵のダイズ丸、頭は弱いが花を咲かせる能力を持つハリコナ、誘拐監禁しないと女性と一緒にいられないマジシャンらとも出会い、過去、現在、未来が交錯する時間の中で、ケガレは忘れたはずの忌まわしい過去と対決することになる。

『キレイ』特設HPより

 “天真爛漫”で“明朗快活”な生田さんが、大人計画の舞台に立つなんて、想像していなかった。だからこそ、絶対劇場で見なければ、とも思った。
(出演が「予想外だった」のは本人も同じだったよう。)



 
 二幕構成のなかで歌唱されるうたは24曲。

 第一幕、物語のオープニンソングである「ケガレのテーマ」。
 真っ直ぐ、これから起こる“自分”の物語を見据える力強い眼差しで、ケガレは歌い始めた。

 瞬間、肌が粟立って、涙腺が壊れた。

 汚れた身なりで生まれ、この世界に期待を持たない彼女から発せられる声が、あまりにも透き通っていて、綺麗すぎて。

 ステージのど真ん中、一筋のスポットライトが彼女を照らす。
 続いて出演者陣がゾロゾロと列もなく花道から舞台に上がる。いくつもの歌声が重なり、賑やかになる風景。そのなかで微動だにせず、彼女は一人で咲いていた。自分の運命を生きるために。

 世間が抱く”ミュージカル女優”の生田絵梨花は、そこにいなかった。


 あらすじにもあるように、スラムのような世界で生きるこどもを演じる生田さんは、綺麗なドレスを着て一身に愛を歌う西洋のヒロインとは全く異なていて。
 そこにいるだけで「品の良さ」が出る生田さんが、この作品のためにそれを消そうと努めている(けれどどうしても、それは見え隠れしてしまう)のも解って、余計に胸を熱くさせた。

 ケガレのあどけない笑顔や幼子のような仕草があまりに”純粋無垢”で、その向こう側にいる生田さんが、しっかりとケガレに寄り添っていることが伝わってくる。これは贔屓目かもしれないけれど。
 きっと普段のストイックな彼女を知っているから、余計にそう感じたのかもしれない。



 ここまで書いて思う。「推しの出演作品」について語るって、とっても難しい。
 だって、どんなに応援している俳優さんでも、出演作品を全て見ている訳ではないから。おもしろセンサーに引っかからければ観ないんだよな、これが。
 『キレイ』はわたしの好きな部類の舞台なのだけれど、これで推しを語れ!となると難しいし、作品だけ語るとかなりの長文になる。時間がたりない。
   これもひとつの課題か。


 ご贔屓について語るのと、作品について語るのは、やっぱり違う。



 わたしはこれまでの生田さんには残念ながら、会えていない。
 だから、「これから」一押しできる作品に出会えることに、期待している。
 もちろん『キレイ』も、人伝に聞いているミュージカルの感想も、生田さんが積み重ねてきた実績で、才能だ。でも彼女はそれらを更新し続けから。

 少し遠場所からになってしまうけれど、わたしは生田絵梨花の軌跡を見つめている。
 
   これもひとつの「あい」のかたち。

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