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こだわりを捨ててよ。ブラッディ・メアリー。

トマトジュース、豆乳、おにぎり。会社員だったころ、いつもこの組み合わせで朝食を取っていたことを思い出した。
そう、トマトジュースは野菜を取るためであり、サラダの代わりのようのものだった。
今の日本では至極当然だろうと思うが、日本ではトマトは野菜だ。

ところが、フランス人にトマトを野菜か果物かと聞くと「果物に決まっている」と云われるそうである。

確かに、トマトというやつは昔から果物か野菜かの論争の対象になっている。
そういえば子どものころ、田舎のおばちゃんの家に行くと、トマトに砂糖をかけたものが出てきたりしていた。昭和40年代の話だ。

いつ頃からか生野菜のサラダが食卓に並ぶようになったかはっきり覚えていないが、そのころにはトマトは野菜サラダの上に乗っていた。

別の表現をすれば、トマトジュースはオレンジジュースの仲間ではないと思っている。


長々とした前置きになった

「ブラッディ・メアリー」は、割と有名なカクテルだ。

トマトジュースを使ったロングカクテルである。

ウォッカをトマトジュースで割るというのが基本のスタイルで、アレンジもいろいろある。
レモンを絞ったり、グラスにセロリのスティックを差したりする。

ヘミングウェイも好んで飲んだらしいが、ヘミングウェイのアレンジは独特で、ウスターソースやタバスコなどを入れていた。

ここまでは普通にカクテルの紹介だが、カクテルと言えば、シロップやフルーツあるいはフルーツジュースなどで甘く調合したものだと認識している。

ウォッカをグレープフルーツジュースで割った、ソルティドッグ。
テキーラをオレンジジュースで割り、グレナデンシロップをグラデーションになるように流し込んだ、テキーラサンライズ。
ズブロッカをアップルジュースで割った、シャルロッカ。
ジンにオレンジジュースは、オレンジ・ブロッサム。

でも、ブラッディ・メアリーはそこに並べるのに違和感がある。

なぜなら、”甘くない”からだ。


カクテルという文化が発展したのは、アメリカである。
アメリカ人はお酒の飲み方におおらかでいろんな飲み方を編み出して、それがカクテルとなり、バーが生まれた。それが国外にも浸透して行ったのであり、いわゆるバーと言うのは、アメリカンスタイルなのである。

そのアメリカで、ブラッディ・メアリーはとても人気があるといわれるが、なんとアメリカ人は、ブラッディ・メアリーを朝に飲むのだ。

アメリカのバーは、朝食も出す。バーのモーニングやブランチはとても美味しい料理を出すらしいが、そこで飲まれるドリンクの代表がブラッディ・メアリーで。店の8割の人が飲んでいるという記事もある。前述のヘミングウェイのアレンジはここらでは割と普通で、写真で見たが赤くない。ウスターソースのせいで茶色だ。

さらにいうと、本来の夜のバータイムになると、ブラッディ・メアリーは注文できない店も多いらしい。

つまり、そういうカクテルなのだ。


日本では、カクテルの本にはしっかりと紹介してあるし、バーに行けば、スタンダードなカクテルだが、こうして文化をたどってみると真相がわかる。


しかし。

違う視点で見ることができることに気が付いた。

トマトがもつ糖質以外にいっさい糖分がないこのカクテルは、今ブームの糖質制限の人にぴったりなのである。

甘くないカクテルだが、実は結構美味しい。

果物か野菜かなんてこだわりでカクテルの仲間と見られないなんて考えずに、素直に美味しいかどうかだけで判断すれば、じつに美味いカクテルなのだ。

僕は、レモンをしっかり絞ってさっぱり仕上げるのが好きだ。
レモンスライスを飾れば、他のカクテルと同じように素敵に見える。
セロリを入れるのは嫌いじゃないが、それじゃやはりサラダになってしまう。

夜の暗めのバーで、粋に飲むなら、セロリ抜きかな。
むしろセロリを差しているほうがかっこいいのかな。

いやそんなこだわりも捨てて、とにかく自分が好きなようにアレンジしていいのがカクテルなのだ。

なにしろ、超ドライなマティーニが好きな人が、ベルモットの瓶を眺めながら飲むという笑い話もあるぐらいなのだから。(それってすでにジンのストレートだけどね)

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