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750円で作るV2164 Dual VCA-モジュラーシンセ自作

SSM2164コンパチブルであるV2164を用いて、モジュラーシンセサイザー のDual VCAを自作したので、その備忘録。

背景

自作モジュラーシンセの24作品目。
自作モジュールの数が増えてきて、そろそろ自作モジュールだけで曲を演奏したいと思っていた。しかし、基本であるVCAモジュールが無かったので作成することにした。

私の自作モジュールは5V単電源で動くことを前提としているが、VCAやVCFは±12Vで動いたほうが都合がよい。
システムの一貫性は失われるが、今回は±12V電源を用いることにした。

ICはV2164を使用した。2164タイプのICは数多く存在するが、日本では秋月電子で購入できるV2164が最も入手しやすいからだ。

まあ、本音を言うと-12Vが必要なモジュールの作成を避けてきたんだよね。だってマイナス電位って意味わからないじゃん?
ただでさえ、アナログ回路が苦手なのに。

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制作物のスペック

ユーロラック規格 3U 6HPサイズ
電源:25mA 以下( at +12V ) / 25mA以下 ( at -12V )
±12V両電源が必要。
消費電流は正確な測定をしていないが、安定化電源が示していた消費電流から、おおよその値を推測している。

knob1:CH1 オフセット
knob2:CH2 オフセット
CV1:CH1 CVin (レンジ0-5V)
CV2:CH2 CVin (レンジ0-5V)
IN1: CH1 signal in
IN2: CH2 signal in
OUT1:CH1 output (レンジ0-12V)
OUT2:CH2 output (レンジ0-12V)

CH1とCH2は同じ回路、同じ性能である。
オフセットを下げると、音量はゼロになる。(市販されている一部のVCAモジュールは、音量が0にならない事がある)

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CVの入力が無い場合、音量はknob1又はknob2でコントロールする。
CV入力がある場合は、音量はCVで制御する。CVの入力範囲は0 - 5Vであり、CVが5Vのときの音量はオフセットで設定した値となる。

音量の増幅特性はexpカーブのみ。パーカッシブな音色を得意とする。
DCカップリングなので、音声だけでなく、CV信号もレベル制御ができる。

単純な信号減衰、信号増幅モジュールとしても使用できる。
DUALなので、ギターペダルのセンドリターンとしても使える。
モジュラーシンセの音声出力はギターと比べて10倍以上あるため、そのままギターペダルに通すと音が割れてしまう。
予め音量を減衰させペダルに通した後、増幅することで、モジュラーシンセでもギターペダルを使う事ができるのだ。

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製作費

総額750円
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V2164 VCA IC 440円
パネル 100円
TL072オペアンプ 30円 * 2個

V2164はSSI2164、SSM2164、AS2164に置き換えることができる。(と思う、未検証)
前述の通り、日本ではV2164が入手しやすい。海外ではAS2164を用いることが多いようだ。

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ハードウェア

2164 VCA ICは定番回路なので、VCA回路は探せばいくらでも出てくる。
ICのデータシートにも回路例が載っている。
今回の回路はV2164に書いてあった回路例を参考に、モジュラーシンセ用に定数を変更している。
といっても、私もアナログ回路に対する理解は小さいので、トライ&エラー、つまり手探りで定数を設定したので、悪いところがあるかもしれない。
とりあえず、動く分には動く。

上の回路図はVCA1個分のみ記載してある。DUALにするなら、VCA回路を2つ設定してやればよい。(当たり前だが、V2164のpin番号は、CH1とCH2で違うものを使用する事。)

オフセットをコントロールする抵抗は2種類ある。パネル上にあるメインの50kohmと、基板に実装してある100kohmの半固定抵抗だ。
半固定抵抗で大まかなオフセットを決めて、可変抵抗で細かな制御をする。

IN回路の150kohm抵抗は、モジュラーシンセ向けのもの、つまり5Vとか10Vで使う事を想定している。この150kohmの抵抗が小さいと、出力がすぐに±12Vにクランプされてしまう。
使用する楽器に合わせて、この150kohmの抵抗値を変えればよい。

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妥協

当初の計画では、expカーブだけでなく、リニアカーブの減衰特性の切り替えをする予定だった。
写真のとおり、リニアカーブの回路を組むことは出来たのだが、部品点数が大幅に増加することで製作難易度が上がってしまうため、リニアカーブ機能はあきらめた。

将来、シングルチャンネルの多機能VCAを作りたいので、そのときはexpとリニアを切り替えられるようにしたい。

開発環境

±12Vを使うモジュールの開発は今回が初めてだった。マイナス電源を準備するのが面倒だった。
Aliexpressを探してたところ1.5ドルで±12Vを作れるモジュールを見つけたので、それを利用した。

スイッチング電源で非常にノイジーなので、電解コンデンサを外付けしてノイズ対策をしてやる必要がある。
開発用と割り切れば、非常に有用である。

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