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パワハラの壁にぶち当たったら

「神様は、乗り越えられない壁は与えない。」
という言葉は、直球で信じてはいけない言葉です…

諸々の事情で急遽、北関東の実家にUターンしたのが45歳。
半年ほど仕事を離れていましたが、この歳でもパートで転職できました。
そして入社8ヶ月で、正社員へ転属。

仕事があるのは有難い、
と思ったのも束の間。

入社から一年経った頃、パワハラで苦しむこととなりました。

そもそも、そのパワハラ上司の部下になると、皆さん退職していくのです。
私が入社してから一年足らずの間に、4人。

その中には、私を採用してくださった上司も含まれてしまいました。

そして私の番が…。
私はパワハラ上司直属の部下になりました。

「仕事は、僕が一度説明したら理解してください。」
「僕の説明が分からなければマニュアルを読んでください。」
「再び私に尋ねる前に、自分でどこまで調べたんですか。」
「そんなことも分からないんですか。どう指導して良いのか分かりません。」
「僕があなたを採用したわけじゃないので」

管理は非常に細かく、失敗は徹底的に時系列で追及され追い込まれる。

パワハラ上司を見るだけで、心拍が上がるようになりました。
話をする時も、まともに思考できないので、ますます対話が上手くできず、パワハラ上司の苛立ちに拍車がかかる。

仕事って、こんなに大変だったんだ
毎日出勤するって、すごいことだったんだ
今まで上司に恵まれ過ぎていただけなんだ
私、こんなに仕事できなかったんだ
私、甘かったんだ
このつらい状況が、ずっと続くんだ
仕事するってしんどいことだったんだ
私に頑張りが足らないんだ

こんな風に私は自分を責めていました。

この歳で会社を辞めても、次の会社がすぐに決まるとは思えないし、
次の会社に転職したとしても、私は仕事ができないから、きっとまた怒られるだろう…。
頑張って、仕事を自分でこなせるようになればいいんだ。

こんなふうに思っていました。

毎朝起きるのがつらくて、車の運転席に座り、今日は何を怒鳴られるんだろう、覚悟していけば怖くないかもしれない。そんなふうにも思っていました。

このままだったら、どうなっていたか…。

追い込まれていたあの頃、
たまたま前職でお世話になっていた元上司でありラン仲間だった方と会う機会がありました。

私の様子がおかしかったのか、めずらしく直球で聞かれました。
「最近どやねん?」

パワハラで悩んでいることを話したくても、なかなか言葉が出てこない…。

私は「自分が仕事ができないから困った状況に陥っている」と思い込んでいたので、恥ずかしいという気持ちもありましたし、

当時は、実家に戻ってきて、今まで毎週会っていたラン仲間も身近におらず、
誰にも、相談はおろか、愚痴すらこぼしていませんでした。
自分自身の状況が言語化できるほど、整理できていなかったんだと思います。

パワハラ上司を考えると心拍があがり、上手く言葉が紡げませんでしたが、
初めて、少しずつ自分の置かれている状況を話すことができました。

すると、元上司は即答しました。

「人間関係のそういう悩みは、乗り越えようとしたらあかん。
避けないとあかんよ」

避ける…?

「そう、避けんねん」

ああ、そうか。

辞めてもいいんだ。


この時、初めてそう思いました。

そして元上司は、某電機にお勤めだったころ、同期が自殺未遂を図った話をしてくれました。

同期は部署異動の後、そこでの仕事が上手くいかず、上司や先輩に厳しく"指導"されており、悩んでいたそうです。
そしてある通勤時の朝、曲がって会社へ向かう通勤路を何となくまっすぐ行ってしまい、そのまままっすぐ進んでいるうちに山奥へ向かい、首を吊ろうとしたと。
しかし吊ろうとした紐のようなものが体重で千切れてしまい、そのまま木の根元にうずくまっていたそうです。

同期が無断欠勤で、自宅は出たことを知った同僚一同が探し回り、木の根元にうずくまる彼を見つけました。
「仕事は愚か、死ぬこともできないのかと」泣きじゃくったとか…。この後に及んでも自分を責めてしまうんですね…

その後、すぐに異動となったそうです。

「彼は、死のうとしてその山のほうへ向かったわけではなくて、
曲がるべき角をなんとなく曲がらず、
そこにある紐で何となく首を…
のような感じやったんよ。
もうまともに考えることがでけへんねん。
そんだけツラいのに、異動願いを出すとか、会社を辞めようとか考えられへんねんな。
せやから、そういう問題に直面したときは乗り越えようとしたらあかんねん。
避けないとあかんねん」

そんな話をされるほど、ひどい顔してたんだな私。
そこまで追い込まれていたんだ自分。
このままだったら、通勤路をまっすぐ進んでしまっていたかもしれない。

その夜、私は社長に、退職の意志をチャット連絡しました。
通常なら、上司に連絡するべきですが、チャットですら接触を避けました。

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その後、社長は私の環境をすぐに変えてくれました。 
特にパワハラされているなど伝えていなかったのですが、
さすがに察していました。


あれから6年。

私は、その会社での勤続6年が過ぎ、部下ができました。

最近、ようやくパワハラ上司とも心拍が上がらずに話ができるようになりました。
6年かかりました。

特に頑張ろうなどと思わず、パワハラ上司とは接触を持たないように注意していましたし、
社長も接触を避けるようにしてくれていました。

でも最近部下ができた私に、ある時、社長が「この話は彼(パワハラ上司)に相談してみて。彼も子どももできて変わったと思うよ」とさりげなく接触を促してきたのです。

ドキドキしましたが、以前と変わったのは私も同じ。
何より仕事や社内のことが理解できているので、パワハラ上司と同等の立場で話ができる。

それでも心拍は上がるし、最初は緊張していました。

でもその後は、私のほうから相談や報告を持ちかけるようになっていました。
業務遂行するのに、躊躇している時間がない。

あれ?心拍上がらなくなってきた?
他の上役と話すのと変わらない姿勢で、大丈夫かもしれない。

あの頃は信じられない、今の状況。
乗り越えようとせず、避けた結果、周りが(私の場合は社長が)変えてくれました。
私やっぱり恵まれていました。

もちろん私も頑張りましたが、それは、仕事と向き合うこと。
そうしたくても、パワハラ環境では、どうしてもその人と向き合うことになってしまうのですが、そこに陥ると抜け出せないように思います。
そうなったら、避けること。これが第一だと思います。

悩んでいる方の一助になれば幸いです。

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