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夜な夜なフロマージュ

こんな私でもたまにはお菓子というものを作りたくなる

何故だかはわからない


いつもバスで通る交差点を少しだけ西へと入ったところにある

赤い構えの小さなフランスの料理屋さん

お店のショーケースに並べられた小さな料理たち

夏野菜のクスクス、冷たいビシソワーズ、紅茶のブリュレ、タコとアンチョビのサラダ

右端にある白いお菓子に目に止まった

白いフロマージュ

「紅茶や珈琲、又は赤ワインと共に・・・」と書いてある


丁寧な夕食の後、グラスに半分だけ残ったボルドーに染まったワインと

白いフロマージュ

それだけで幸せな予感

もちろん味は気取らなくて美味しい


また買いに行ったらいいのだけれども、自分で作ってみたくなった

夜な夜な

日が次の日へ回ってしまったくらい

キッチンをオレンジ色に灯して

シンプルなフロマージュのケーキ

クリームチーズ、卵、お砂糖、生クリーム、小麦粉を少しだけ

それを混ぜてゆく


夜の時間は延々だ

何も急ぐことはなく、何者かに邪魔されることもない

ただただ、幸せな音と香りに満たされるのだ

いつも早寝の私は少し眠いけれど、その眠ささえも心地の良い音に変わる

ここに音楽はいらない


オーブンからぷくぷくとした香りがキッチンの中で充満する

それがあまりにも夜の香りと違うので少しだけ不思議な心地がする

ケーキの表面が真っ黒になるまで焼く

オーブンから出てきたフロマージュは、ぷっくりと膨れている

それを見て、幸せな心地で布団に入る


そんな夜の時間

たまにはこんなんもいい


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〈 today’s art 〉

Title : wall paint
/ photograph
/ Place : Venice
/ Yuko

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