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神様のレシピ

彼の本を読み始めて、かれこれ20年近くになる。

幼い頃から活字中毒気味で新聞も良く読んだし、クリスマスプレゼントは毎年沢山の本だった。
小3のある日、読むものが無くなって父の本棚から六法全書を拝借して読んでいたら、母が呆れて赤川次郎の三毛猫ホームズシリーズを渡してくれた。

そこからは児童書はほぼ卒業して、大人向けのエッセイや小説や(中身は買う前に母が暴力的でないかとか、性的な表現が過激でないかとかチェックしてくれた)ありとあらゆるジャンルを読み漁った。

高校の頃、家を建てて郊外へ引っ越したこともあり、通学の手段が自転車から電車に変わった。
その当時、使っていた路線は30分(時間帯によっては50分)に1本しか最寄駅までの電車が無くて、時間潰しに駅ビルの書店へ寄ることも多かった。
時間を潰しすぎて電車を2本ほどパスして遅くなることも度々あったし、最寄駅までの20分は本ばかり読んでいた。
遅くなり、いつも何かしら本を買って帰る私を、両親は一度も咎めなかった。


伊坂幸太郎氏の小説に出会ったのは、転職してすぐの頃だった。
私が20代前半まで過ごした街で小説が書かれていること、小説にも私の良く知る街の風景が出てくること、登場人物達のウィットに富んだ台詞に惹かれて、全作読み尽くした挙句、絶版になっていたデビュー作と2作目の単行本も、あらゆる手を尽くして手に入れた。

彼の作品に出て来る人たちは、個性的で素敵。
中でも女性たちは、身近にいたら友達になりたいような魅力的な人たちで、少し重いテーマの話でも登場する女性たちが上手く緩衝材になっている事が多い。

彼の作品はいつの間にか、直木賞候補になり、書店大賞を獲り、いくつも映画化されていった。
ある映画などは、私の母校の大学のキャンパスでロケが行われたりもした。

作品に度々登場するのが
『未来は神様のレシピで決まる』
という言葉で、未来とは様々な要素によって出来上がる、という意味。
レシピとは、その要素の組み合わせのことだと私は理解している。

或いはそれを“運命“と呼んでも良いのかもしれないけれど、決して抗えないという意味では無くて、その一瞬一瞬での判断なり選択の積み重ねによって結果は大きく変わるし、可能性は無限なのだという事だと思う。

私たちは、自らの手でレシピの中身を変えたり、選択してゆけるのだと。
その結果すらも全て、神のみぞ知る。


いま私の手元に、未読本が2冊ある。
このところずっと読みたくて出していたのに、どうしても読書に気が向かなくて(私にとっては本当に珍しいこと!)、ソファの傍に置きっ放しだった『シーソーモンスター』。
そんな状況なのに、昨日発売されたのを知って先ほど買ってきた『逆ソクラテス』。

さて、どちらから読もうか。
私がどちらを先に読むのかも、きっと『神様のレシピ』で決まっている。


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