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Weibo、Wechat、RED?いやいや、ショートムービーでしょう(1)

概要背景

中国経済の発展は日本のニュースにもある通り、中国はユニークなポジショニングを取り、中国国内市場を抑えたプラットフォームを中心に例を見ない発展を納めている。先進国との差も徐々に追いつき追い越し、「衣食住足りて礼節知る」とはよく言ったもので、日本の方々は実感が無いかもしれないが、実は経済発展に伴い中国国内ではマナーも非常に良くなってきている。ここに来てようやく中国国内でもようやく名実ともに先進国の仲間入りしてきた、という声もちらほら出はじめたのも理解できる。

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図1)中国GDPの推移

この、誰から見ても明らかな経済発展を遂げた直近10年間で、最も変化が大きく中国経済領域の成長に寄与した分野はIT分野である。今回はこの中国IT分野の成長について考察する。

大雑把だが、以下のようにITだけではなく中国経済全体の発展を3つの時代に分けて捉えてみよう。まずはじめに、いわゆる改革開放時代(1978~1990年代まで)の中国を世界の工場と見立てた「メイドインチャイナ」時代である。そして1990年代から始まったのが、世界的には悪名高き?「コピーインチャイナ」時代、つまり物であれ知的財産権であれ、何でもかんでも絶妙にクオリティの低いコピー商品やコピーサービスを秒速で立ち上げる時代が到来する。この「メイドインチャイナ」時代と「コピーインチャイナ」時代のイメージこそが、世間一般の方々が持つ中国商品・サービスへの原風景だろう。後述するが、実はこの時代に中国ITが立ち上がり、「コピーインチャイナ」時代に基盤を整えた上で次の時代で飛躍しているのである。(図2)

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図2)GDP推移

そして2010年代からはじまる現在は「モデルインチャイナ(中国モデル)」時代と呼ばれている。

これは中国独特の優位なポジションを活用した、新たなハイクオリティ中国国産ブランド商品や中国発グローバルサービスが生まれている時代である。この時代は、「メイドインチャイナ」だがいわゆる世界の工場ではなく、ITを駆使したコストパフォーマンスの良い商品サービスで世界を狙っている。同様に「コピーインチャイナ」ではなく中国の大手企業はハイクオリティな商品サービスを世界に向けて発信している。要は、これまでの時代で培ってきた強大な国内市場を背景に、世界一の人口をテコにした生産能力でコストパフォーマンスを追求した商品サービス提供と、国内プラットフォーマーの巨額な研究開発によるハイクオリティな商品サービス提供とを両立させているのである。「モデルインチャイナ」時代とは、こういった現象がすべてのIT領域において同時並行で立ち上がる時代である。むしろ日本向け市場展開が遅い部類なので違和感があるかもしれないが、日本で流通している低価格ガジェットやハイスペックスマホ、サービスで言えばTik Tokやスマホゲームアプリだけでもなく、全領域・全世界に向けてコスパとハイクオリティ、新しいサービスすべてを提供している、という感覚を持つのが正確な状況把握である。(図3)

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図3)産業別成長比較

日本企業が失ったモメンタム

日本企業は中国の「メイドインチャイナ」時代をうまく活用し、「メイドインジャパン」から始まる日本企業の経済地位をより強固なものにした。この観点でいえば、先述の中国経済3つの成長ステップの最初の成長段階において、上手に利益を享受していた。

ただ中国経済発展の急速な流れ、つまり世界の工場としての経済発展から、低品質だとしてもとにかく中国国内需要を満たし経済発展を促す「コピーインチャイナ」時代において、日本企業はその波に乗ることができなかった。この波に乗ったのは韓国である。韓国は「コピーインチャイナ」から「モデルインチャイナ」へ移り変わるタイミングにおいて、うまく波に乗り中国国内市場で大成功を納めている。(図4)

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図4)対中国向け韓国輸出量

中国における韓国商品サービス成功例で最も典型的なのは、エンターテイメント領域においてである。

日本では知られていないが中国国内において2000年代から2010年前半までの芸能エンタメをトリガーにコスメ・ファッション・ライフスタイル領域におけるトレンドは、ほぼ韓国発といって過言ではない。一方日本はこの領域において大雑把に言えば、「コピーされるリスク」の前でマーケットインに躊躇し、中国人にとって日本のトレンドは1990年代に一世を風靡した「日本のトレンディドラマ」のままだ。むしろ古くさく、中国の若者に全く刺さっていなかったのである。

この「コピーインチャイナ」から「モデルインチャイナ」に変わる過渡期の中国国内市場において日本企業が韓国企業に奪われたモメンタムは、記事が数回バズった程度でクリアできる代物であるはずがないのである。

2010年代中国ネットにおけるメディア概論

改めて言うが、「コピーインチャイナ」から「モデルインチャイナ」への変革を構成する直近10年間で、中国ITは数々の奇跡的な成功を収め、ようやく世界の注目を得ることとなった。

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図5)中国プラットフォーマー時系列発展段階図

中国ITの成長をキーワードで線引きをするとしたら、2008年以前は1.0時代(PCとEC)であり、2009~2019年は2.0時代(モバイルとSNS)とし、2020年以降は3.0時代(IOTとAI)であろう。以下、簡単に本稿のターゲットである2.0時代における代表的なサービスを紹介する。

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図6)中国SNS変遷

Weiboは2009年に誕生し、2014年にてナスダックに上場。

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当時は、ITオタク達によって作られて小さなコミュニティサービスであったが、twitter、facebook,youtubeやinstagramなどの良いところ取りをして、中国人の国民性に適合したSNSを最速で作り出したのが成功要因である。中国において未だメジャーなソーシャルメディアであり、メディアとしてユーザーに情報提供するのが最大の役割である。

つづく


概要
1.日本企業が失ったモメンタム
2.2010年代中国ネットにおけるメディア概論
    Weibo
    Wechat
    BiliBili
    toutiao
    douyin
    kuaishou
3.なぜ中国経済で劇的な変化が生まれているのか? 
4.ソフト・ハードウェアのバージョンアップがもたらす消費者の行動変化
5.趣味嗜好の多様化による中国SNSの多元化
6.なぜ短編動画が消費者を影響する主流となったか? 
7.将来予測および日本企業のメディアチャンス
8.日本企業が中国では太刀打ちできないのか?
まとめ

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