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第18回「そいつ」2024年2月❷

週一で、同じ映画を見る。ただそれだけ。
観る映画は「遊星からの物体X」、つまり「THE THING」です。

ルール

  1. 毎週1回「遊星からの物体X」をみる

  2. 毎週1回みて、気づいたことを書く

  3. 木曜または金曜の通勤時間で見る

  4. ネタバレとかは気にせず書く


基本は通勤中のiPhone se(3G)。
イヤホンはAppleの有線イヤホン。
ということだったが、最近はもう気にせず休みの日に家で見ることも増えてきた。

第18回目 2024/2/12(月)


前回からの道のり

(前回の記録からわたし自身の変化)

2/8(木)〜2/10(土)
ビクトル・エリセ「瞳をとじて」
すごい良かったです、観ましょう。
170分くらいあったとはいえ、映画館で見たらあまり長く感じませんでした。

2/11(日)
ヴィム・ヴェンダース「PERFECT DAYS」。期待と不安まじりで行ったので楽しめた。好きな作品だけど、自分にとっては絶賛してしまうと違う気がする。うーん…と、なる。
OFF THE RECORDでカセットウォークマンを買う。この映画を観た後に買うの照れ臭いな。帰りの電車で少しカラブツを観るが、酔ってるし、止める。

2/12(月)
帰宅してカラブツ。最初から視聴。


今週のテーマ選定

前回メモしていたこともあり、立場の逆転について書き出してみる。書き出してみると、細かなものが見つかった割に、総論的な批評は難しい内容と思える。とりあえず書き出して考えてみる。

久しぶりにドイツ語字幕で見てみるが、流石にまだ読めない。
以前も触れたが所有している媒体は以下①②
①2018年発売のブルーレイ
②2021年に出た4KUHD。(ただし、同封ブルーレイで視聴)
普段は、綺麗な②で視聴。
英語日本語以外で視聴する場合は、①を活用している。

これは全然関係ないが、いつも見てる②Blu-rayより、今回①の方が白さが強い気がする。黒さとか含め、全体的に薄い。最新版は綺麗な上に濃淡が強いのかも。

まるでさっきと違うひと

コトが起きてからの立場の逆転というのは、どんな映画でもよく見られる。事件や事故、災害といった想像もしなかったことでの逆転。
2人の場合もあるし、1人対全体の時もある。敵対関係もあれば、友好関係の場合もある。

分かりやすいものを一つ目に。
ブレアとウインドウスの関係を。冒頭のノルウェー人との銃撃戦のあと、ウインドウスは通信室から必死に通信が繋がる相手を探す。お手上げ状態だ、と半ギレでヘッドフォンを置くと、後ろで見ていたブレアが注意する。「どこでも良いから繋げ!伝えるんだ!」と叱り、ウインドウスと衝突。ウインドウスは反論してみるものの、年長者の圧に負ける。

しかし、物語が進んでいき、物体Xの正体を知ったブレアは隊員みんなを疑い、基地を破壊して回る。仲間に向けて銃を発砲するし、ヘリコプターを壊し始める。しまいには通信室にやってきて、ウインドウスが使っていた無線機を全てぶち壊し始める。銃、斧、椅子を使ってやりたい放題。
お前たちはまだ何もわかっていない、ここから出ていかせんぞー!と無線を壊している。
そう、さっきと言動が正反対。コトが起きて、ブレアは外部との接触に対する考えが180度変わっている。
考えてみれば、ウインドウスを叱る役は本当はブレアでなくても良い。途中でギャリーが叱るシーンもあるので、まわりの年長者が叱りに来ればいいはず。
だが、この無線室の破壊、外との遮断というシーンを面白くするためにブレアを配置したように思う。


(このシーンでのブレアの斧の使い方が上手い。最初は短く持って振り下ろし、そのままするっとグリップを緩めて、遠心力で長く持ち替えながら当ててる。的に当てる精度も高く、力を入れすぎずに、斧の破壊力が増してる。逆に、チャイルズは長めに持って力任せでやってる。)

コロッという音が聞こえる

あまりにもすぐ意見が変わる人もいる。
冒頭のギャリーとコッパーのことだ。
娯楽室のビリヤード台にノルウェー人の遺体を寝転がせ、コッパーはノルウェー基地に行き、生存確認をした方がいいという。
ギャリーは天候の変わりやすさから、やめといた方がいいのでは?と疑問を呈する。
気象研究員であるベニングスは少しなら時間(a tad)があるし、急げばまだ嵐の前に間に合うと伝える。ギャリーは「A tad!?」と半ギレ。隊員の命を危険に晒さないか、反論をしたそうだ。
ところが、次のシーンになるとギャリーはマクレディに近寄りノルウェー基地に向かえと依頼する。マクレディは行きたくなさそうだ。めんどくさいのもあるし、空を見る限り安全なフライトとは言えないからだろう。ギャリーはすぐいきゃ大丈夫という口調だ。
ここにきて、コッパーは「マクレディ、君が決めろ」と譲歩する。
さっきまでは「いまなら行ける」と意気込んで、なんならギャリーをその気にさせておいたのに、コッパーは急にマクレディの意思を尊重し始める

この意見がコロッと変わってるのは、編集上カットしたシーンがあるのかも…とも感じた。娯楽室での議論を見ていたフュークスとパーマーが、マクレディの作業を手伝ってたのをみると、その間に少し時間がないとおかしい気がする。映されてないものを議論するのは妄想でしかないので、無駄だし、ここら辺にしておく。

ただし、このマクレディが行きたがらない演出は、ノルウェー基地でも活きてきていると思う。
コッパーとマクレディがノルウェー基地につくと、最初はコッパーが先頭に立つ。マクレディは後ろからついていき、コッパーがつけた懐中電灯の差す方向に進んでいく。反対側から家具で押さえされたドアを押し開けたマクレディは、現場でランタンを手に入れる。ここから彼は自分の意思で、現場を見て進み始める。ノルウェー人の遺体に慄くコッパーに対し、先に進もう…と今度はマクレディは先頭に立つ。外に落ちていた焼き焦げの物体Xも持ち帰ろうと彼が提案する。
アメリカ基地では消極的で、従わされていたマクレディが、不気味な出来事を境に立場が逆転している。

このマクレディの立場の逆転の話は、過去の記録内容が総合的に表れてる気がしたのであえて再記述した。(主導権の話、光の話など)
物語はこのあと、ギャリーの転落、マクレディの孤立など、主導権に関わる立場の逆転が幾つも見られるが、それは第一回の記録と重複するため、そちらを参照のこと。


職業における逆転

それにしても前述の通り、ギャリーは隊長であったはずが、銃を譲ったことで転落の一途を進む。指示を出すべき人間がロープで縛られ、みんなから火器を向けられる。
「隊長」という役職との対比が面白い構成になっている。

そう思うとコッパーも「医者」という役職で不幸な末路を迎える。それまでの彼は、傷跡を塞いだり、はたまた遺体解剖するために腹を切ったりしていた。
そんな彼が、倒れたノリスの心臓マッサージをしていると、むしろ腹の方から開かれて、コッパーの腕をブッチィ!と食いちぎる。腹を開く人間が、開かれた腹に食われる。なんというめちゃくちゃな話。寓話にも落語にもならない…。

同様にブレアは「生物学者」兼「獣医」。ノルウェー基地から回収した物体Xを解剖したのも彼。コッパーがわざわざ行わないのは、人間かどうかも分からないからだろう。
兼任している獣医というのは、犬THINGから逃げ切った犬たちを介抱している。
注射を打っているシーンがそれだ。
しかし、ブレアは錯乱したあとにこれらの犬を斧で殺してしまう。犬を介抱すべきだったブレアが、犬に手を出してしまったわけだ。
先ほどの通信室での暴走といい、それまでの自分とは正反対の行為を起こしているコトがよくわかる。

うしろ指をさす人間は、うしろ指を気にしない

この作品の一番のテーマは、疑心暗鬼であって、お互いへの不信感から通常ではあり得ない行動や倫理的判断に繋がることを描いている。
今回の検証はどうしてもブレアの検証が多くなってしまうが、これもその一つだ。
物体Xが隠れているこことに気づいてしまったブレアは、一番にクラークを疑う。犬THINGと長く過ごしていたのは、犬の管理飼育を担当していたクラークだったからだ。
彼はその後、倉庫へと監禁される際にクラークに注意すべきことを仲間に伝える。隊員のほとんどはクラークを疑い始める。なにかあるごとにクラークがいないと騒ぐし、(荒っぽい感じだが)口喧嘩の仲裁に入ろうとしたクラークの動きに過剰に反応したりする。

ところが実際、クラークが人間だったのはご存知のとおり。反対にブレアの方こそ、正体は物体X。容疑者だと騒ぎ立てる人間が、実は容疑者になることがある。

実は、同様にもう1ケース似た案件がある。
パーマーとウインドウスの件だ。
パーマーが最初にウインドウスに疑いをかけるのは、マクレディに3人でフュークスを探しに行くと言われた時だ。この時は、物体Xという疑惑というより、逃げ出して暴走するウインドウスへの不信感だったのかもしれかい。
しかし、そのあとノウルズが1人で帰還した際に、もう一度ウインドウスはパーマーに喧嘩をふっかけられる。ウインドウスは、なんで俺ばっかりに喧嘩を売るんだ!と2人の信頼は完全に壊れる。
当たり前だが、逃げ回ってばかりのウインドウスは物体Xではない。安全とわかれば帰ってくるくらいなのだ。
その反対にパーマーは、やはり物体Xだった。

このブレアとフュークスの事例の類似性からは、前述のとおり容疑をかける人間ほど容疑者になるという点を指摘したいわけだが、両事例の全てが相似するというわけでもなさそうだ。
ブレアの場合、彼がクラークを疑っていたのは、まだ人間だった。疑心暗鬼でおかしくなっていた時期こそクラークを疑っていたが、物体Xになる頃には言動が異常に落ち着いていた。
一方のパーマーはどうだろうか。どのタイミングでパーマーが物体Xになったかはかなり難しい問題だ。
ただし、前述のケンカのふっかけ方を見ると
(1回目は不信感ともとれるが)、2回目のケンカは意図していると取れそうだ。
つまり物体Xが自分の身を隠すために人間たちの不信感を使ったように取れないだろうか。ウインドウスの「なんでいつも俺ばかり!」という反論は尤もで、その時点では帰ってきたノウルズが疑われる流れだった。お互いの不信感を煽るようなことをしている。
これ以上進めると空論に入り込みそうなのでやめておく。
とにかく、ブレアとパーマーとでは、相手を疑う流れが少し違うように思う。

自分に甘くないと生きてけない

前項のとおり人を疑うのは簡単だが、人を信じさせることほど難しい。
本作では疑心暗鬼がいくつもの愚かな行動を引き起こす。主人公株であるマクレディは、勢いでクラークを殺してしまう。しかし、クラークは人間だった。映画の中心人物が、過失で仲間を殺すなんて、しかも弁解も反省もせずに話を進めていく
チャイルズはそこを逃がさない。血液テストの結果、クラークが人間だとなると、お前の理論でいくと殺人を犯したんだぞとマクレディを睨みつける
しかし思い返してみると、チャイルズもマクレディを殺そうとしていた。
雪嵐の中帰ってきたマクレディを閉め出そうとしていた。ウインドウスはマクレディが人間だったらどうするんだ?と聞くと、「何もしない!死ぬのを待つんだ」と答える。
マクレディが侵入して火薬室に立てこもると、率先して斧を持ち、ドアをこじ開ける。殺す気満々。なんつう状態。
これだけ殺意剥き出しだった男が、いまさらマクレディの過失殺人を責めている。自分以外の殺人は許さない、自分の場合は緊急時なんだという自分本位の極み。

これだけの極限状態ともなると、倫理観も崩壊しないと生きてけない。
チャイルズはこの後、パーマーの正体が分かるまでマクレディを信用しない。ゼイリブ出演時と同様、そんな簡単に人の考えは変えられない…ということを演じてのける。(ゼイリブの時は長尺プロレス)
彼の鋭い目つきが、ジョンカペはそういう配役にしたいのかもしれない。


来週に向けて

今回は総論的な評価にあまり辿り着けずに立場の逆転を羅列した感がある。
しかし、ま、「疑心暗鬼も極限までいけば人間は愚かなことを犯す」というコンセプトを1番わかりやすく対比できてるようにも思える。

原作を最近手に入れたので、そろそろ原作を読んでみようかな、と思っている

  • 音無し鑑賞

  • 光のことをもっと考える

  • 顔、その視線

  • マップ使いながら視聴

  • カメラの位置

  • BGMの特定

  • 別の言語の字幕/吹替

  • そろそろ原作読む

  • 物語に駆けつけるキャラ

  • そろそろオーディオコメンタリ分析

  • 運ぶ

無理だったら普通に楽しむ。
好きな映画のいいところは、普通に楽しめることだと思う。

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