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「ソケリッサ応援文」

# 5 渡辺 篤(現代美術家)

僕が、新人Hソケリッサ!に初めて会ったのは友人の誕生日会だった。ソケリッサの事はウェブ記事かなにかで少しだけ知っていた様に思う。その日はアオキさん、横内さん、小磯さんの3人が来ていて誕生日を迎えるその友人や集まった仲間達に向けて踊りを見せてくれた。
 初めて見たソケリッサの踊りはほかではなかなか見かけないような動き。ソケリッサ立ち上げ人のアオキさんは路上生活をしているおじさんたち(アオキさんは愛と親近感を込めてメンバーをそう呼ぶ)の身体に宿る根源的な生き物としての輝きに惹かれているのだと思う。
 お世辞にも世間一般のカッコよさをまとったわけではないおじさんたちの姿かたち。けれども踊り始めた時に、固有の魅力を放つ。同時にその肉体がどんな人生を過ごしてきたのか、生活の背景についても想像が掻き立てられる。
 アオキさんはおじさんたちに踊りの型を、上書きして教えることではなく、その人の持つ所作や体型やその癖までをも肯定し、さらにその魅力を引き出すプロデュースをしているのだと思う。絵で例えるならば、絵画作品の魅力をさらに引き立てる最高の額縁職人。料理で例えるのであれば、塩と胡椒だけで素材の味を魅力的に引き立たせる腕前を持った調理人なのだと思う。アオキさんはその昔、有名ミュージシャンの振り付けを行なっていた時代があったそうだし、ニューヨークで活躍していたこともあるそうだ。でも今はおじさんたちと踊っている。
 僕が初めてソケリッサの踊りを見た日、なぜだか涙が溢れて止まらなかった。友人がスマホで寺尾紗穂さんの「九年」(僕はこの日からこの曲を毎日のように聴くようになった)をかけてくれて、それに合わせて踊る小磯さん(小磯さんはおそらくソケリッサ最年長のおじさん。ここのところ病気をしていたそうだけど最近復帰してまた踊っている)。鳥ような動きをする小磯さんの背後に、青い空が感じられた。ふわふわ自由に飛ぶ小磯さんを見ていたら、涙が溢れて止まらなくなってしまった。
 それから程なくして僕は、ソケリッサの上野での公演の舞台美術として関わることになった。アオキさんは、僕が元ひきこもりで、今はひきこもり当事者などと作品を作っている現代美術家だということを知ってくれていて、路上生活者/経験者で構成されるソケリッサの踊りをひきこもりの人たちに見てもらう機会を作りたいとのことだった(結局その時はひきこもりの人たちとの繋がりを作るには至らなかったが)。
 確かに路上生活者とひきこもりは関連性がある。孤立を経験した先に、個人主義的にならざるを得ない背景があったりして居場所を路上に求めた場合のホームレス。他方、孤立した先に家族主義や家に居場所を求めたひきこもり。独り過ごす居場所に屋根があるかどうか違いなのかもしれないが、どちらの事情にも背景に孤立した時間がある。
 僕は自分の当事者経験を活かして、社会の孤立課題に取り組む作品を今後も作っていくつもりだ。そしてまた機会があればソケリッサと何かを作りたいと思う。いつも刺激をもらっている新人Hソケリッサ!を今後も応援します。
 コロナは世界中の人を一時的であれひきこもり化させ、孤立を多く生んだと言われる。路上生活者やひきこもりも大勢増えたのだろうか。コロナの時間をモチーフとするという今回の新作ダンスが多くの人(お金持ちも貧乏人も、楽しい人も悲しい人も、孤独な人も)の目に触れ、そしてそのツアーが成功しますように。

(渡辺 篤)

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渡辺 篤
現代美術家。東京藝術大学在学中から、直接的/間接的な経験を根幹とする、新興宗教・経済格差・ホームレス・アニマルライツ・精神疾患・セクシュアルマイノリティなどの、既存の社会からはタブーや穢れとしても扱われかねない要素を持った様々なテーマやそれらにまつわる状況を批評的に取り扱ってきた。近年は、不可視の社会課題であり、また自身も元当事者でもある「ひきこもり」にまつわるテーマについて、心の傷を持った者たちと協働するインターネットを介したプロジェクトを多数実施。
2020年度「横浜文化賞文化・芸術奨励賞」。主な展覧会は「同じ月を見た日」(R16studio、横浜、2021年)、「Looking for Another Family」(MMCA韓国国立現代美術館、ソウル、2020年)等。ひきこもりをはじめとする孤立当事者らとの共同企画「アイムヒア プロジェクト」主宰。 https://www.atsushi-watanabe.jp

<写真キャプション・クレジット>
1《止まった部屋 動き出した家》(Nanjo House|2014年)
撮影:井上桂祐
2 新人Hソケリッサ!作品「Plaza・Z」(横浜象の鼻パーク|2019年)
撮影:渡辺 篤

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渡辺さんの写真(止まった部屋 動き出した家)は、最初ネットニュースか何かで見たのですがとにかく強烈な印象でした。出会った時期は、髭も剃っていて別人のように柔らかい印象になっていましたが、渡辺さんの生み出す作品を眺めていると、美しさの根底にある強い叫びと共に、やはり本人の内面にはあの頃の強烈さが潜み続けているのだと感じています。実は密かにその身体から一体どんな踊りが生まれるのかと興味を持っています。先日のアトリエ屋上で行ったコラボの折、踊る姿が見たいなぁとそっと提案してみましたが、絶対無理と断られてしまいました。でもソケリッサ!の稽古に何回か通えば可能性はあると話していたので、いずれの機会を願っていようと思っています。

(アオキ裕キ)

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2021ー2022「路上の身体祭典 H!」新人Hソケリッサ!横浜/東京路上ダンスツアー
へのクラウドファンディング挑戦を開催中!

目標:150万円
期間:2021/10/7〜11/15

CAMPFIRE
https://camp-fire.jp/projects/view/439611

(ヘッダー写真 岡本千尋)

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