「人見知り」が大きな武器になった話


 人見知りで悩んでいるのは僕だけではないはず。


「人見知りさえなければもっと人間関係が円滑に築けるはずなのに」

「私から人見知りがなくなればどれだけ幸せな人生が送れるか」

「自分が好きになれないのは人見知りだからだ」


僕はつい最近までずっと人見知りに悩んでいた。しかもその悩みは歳を取るにつれて深刻になり、ある時は人間関係を本気で断ちたいと思っていた。


 大学生の時は出会いと関わる人が一気に増えた。初めての出会いは楽しみよりも不安の方が圧倒的に多い。


「きちんとコミュニケーションが取れるかな」

「悪い印象を与えないかな」

「多少無理してでもアプローチしていかないと」


新たな出会いのたびにこんなことを考えてしまい、結局はガチガチに緊張してうまくコミュニケーションが取れずいつも悪い印象を与えてしまう。だから第一印象がいい人をただただ羨んでいた。人見知りを短所だと思い込んだままずっと生きてきた


 しかし、今夏仕事で和歌山に来ていた時のこと。そこで出会った人(Aさんとする)との会話が人見知りに対する見方を180度変えた。


僕:僕はとても人見知りをするので、初対面が一番苦手で嫌いなんですよ。人見知りさえしなかったらもっと早くに多くの人と仲良くなれると思うですけどね。年々ひどくなってきているので新たな出会いはもういらないかなって思っています。仲良くなれる気がしないんですよね。それに疲れますし...


A:そうなんだ。私は逆に初対面の人でもガツガツ話しかけられるから、割とコミュニケーションはちゃんとできる方だと思う。緊張とかもしないし。


僕:いやー羨ましいですね。初対面ですぐに仲良くなれる人を見かけるたびに「僕もあの人のように積極的に話できたらいいのになぁ」って思っています。


A:でも私は生まれ変わったら、人見知りの方がいいなって思うよ


僕:え、なぜですか?誰とでもすぐにコミュニケーション取れるってそれだけでアドバンテージじゃないですか。


A:これ私の理論だけどね。人見知りって加点方式じゃん。確かに最初は冷たくなったり、緊張したりで相手の自分に対する第一印象は低いかもしれないよ。点数でいうと20,30点ぐらいかな。仮に2回目以降も(同じ)相手とうまく話ができなくて、相手の自分に対する印象が10点に下がったとしても、自分のダメージってそれほど大きくないよね。


僕:まあ確かにそうですね。


A:もともと低い第一印象がさらに悪くなったとしても相手は「まあそんなもんだよね」って納得できるから諦めがつきやすい。だからショックが少ないと思うの。


A:でも仮に第一印象が80点の人の場合、それが60点に下がったら、同じ20点でもダメージは全然違うと思わない?「あの人(相手のこと)第一印象めっちゃ良かったのに、実際はそうでもなかったな」って。


僕:確かに好印象の人のマイナスはかなりイメージダウンに感じますね。


A:逆を考えると、第一印象が30点でも、その後何回か話したことで印象が20点上がったら、相手は「おや?それほど悪くないかもな」っていう印象を抱くと思うの。第一印象よりもいいと感じたら相手は興味を持ってくれるかもしれないから、関係が続く可能性があるね。関係が続けば続くほど相手の印象はよくなりやすいよね。


A:でも無理に第一印象をよくしようとして80点だとしよう。残りの20点は相当頑張り続けないと上がらないから、自分を飾り続けて最終的には押し殺さないといけない羽目になる。自然体の自分から遠のいていくんだよ。


この話を聞いて人見知りに対する見方が大きく変わり、僕が長年抱えていた人見知りという性質は武器になるのではと感じた。


 ここで大学時代を振り返ってみた。とある団体に所属していた2年生の夏。オープンキャンパスでスタッフをしていた時のこと。休憩時間だったので僕は1人でお昼を食べていた。すると、1個下の後輩(Bとする)が僕のいる教室に入ってきた。


その教室には僕とBの2人だけ。本来なら先輩の僕が後輩に何か声をかけるなりして場を和ませるべきなのだが、僕は人見知りなうえに後輩への接し方がまるでわからなかった。だから一言も話さずひたすら弁当を食べ、沈黙を貫くことに。


数年経ってBから話を聞くと、「あの時先輩と一緒になって何も話しかけてくれなかったので雰囲気が最悪で、すぐに教室を出たかったです。先輩の第一印象は最悪でしたよ。なんて無愛想な先輩なんだろうなって笑」。あえて点数化するなら5点くらいだったと思う。


幸いなことに今ではBが僕をいじってきたり、相談をしたりするくらいの関係なので、Bの僕に対する恐怖心は一切ない。


これはBだけの話ではなく、他の後輩からも時が経って同じことを聞かされた。


 直近の出来事だと、無人島に行った時も参加者のほとんどが初対面なうえに年下だったので、人見知り全開だった。ある人(Cとする)曰く「話しかけてもすごく塩対応だったので『なんか怖いなぁこの人』という印象だった」らしい。幸いその後しっかり話ができたことで頻繁に連絡を取り合う仲になり、今では僕の印象は100点に近いくらいいいとのこと。CもBと同様、とても僕をいじってくる。あまりのいじりに時々イラッとくるほど。


Aが僕に話してくれた「人見知り長所理論」を無人島で試したところ、僕にはAの理論は間違っていなかったと思えた。だから、人見知りだとしても長くじっくり関係を保っていれば大丈夫だと確信できるようになった。


 たとえ人見知りだとしても、その性質は自分のほんの一部にすぎない。一見短所に思えることが実は長所になり得ることは多々ある。人見知りはまさにその典型なのではないか。


僕はこれからも人見知りを克服することはなく、それを武器にして多くの人と関わっていきたい、そう心に誓った。


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