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アザもちの記憶の断片

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#家族

階段。

 救急隊員「〇〇さんの息子さんですか?」

 突然の母からの電話で、知らない人が話し出した。

 救急隊員「救急隊員の△△です。」

 僕「えっ、はい・・・。」

 救急隊員「〇〇さんが階段で転び落ちたようで。今から急いで来れます           か?」

 僕「はい!すぐ向かいます!」

 状況が全く飲み込めないまま自宅を出た。当時、僕とは別々に暮らしていた母はパートナーと同棲していた。とに

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消火器。

 「ピンポーン!ピンポ!ピンポ!ピンポ!ピンポーン!」

 「ガチャガチャ!ドンドン!」

 母の彼氏(以下、Aさん)に違いない。そう思った僕は居留守を決め込んだ。Aさんは今にも乗り込んで来そうな勢いで玄関のドアを叩いたり、インターホンを鳴らしたりしていた。肝心の母はというとそのKさんのことで誰かに相談しに行っていた。ただただ怖かった。

 母「もしAさん来ても絶対家に入れないで!なんかあったら電

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時が止まって。

 19歳に統合失調症と診断されてから、29歳の今に至るまで、僕だけ時が止まってしまったかのように日々感じている。特に周りの同級生の友人たちが大学でキャンパスライフを謳歌している中、僕は日々この病気と闘っていた。特にパニック障害の心臓の発作が襲ってきたとき、何度と救急車で運ばれたことか。人混みが怖い。電車やエレベーターなどの密閉空間が怖い。怒鳴り声や工事音など音が怖い。僕の生活圏は徐々にこれらの病気

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彼氏がいない間に。

 母「いいから、早く来て!」

 突然の母からの電話に困惑した。新しい彼氏(以下、Bさん)ができて、今の彼氏に見切りをつけたようだ。今の彼氏(以下、Aさん)の家に入り浸っていて、実家にはほとんど帰ってこなかった。もう一週間近くAさんの家に戻っていないらしく、一度は話し合おうと言われたものの、最終的に、

 Aさん「荷物持って出てけ!」

 と、電話があったらしい。それで、荷物を実家に持って帰るつい

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