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アザもちの記憶の断片

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#社会学

出逢って。

 僕はどこか人とは違う。そんな風に考えていた時期があった。どこかじゃない、この口元のアザだ。アザは僕の人生を不幸にした。アザによって、人から好奇な視線を浴びた。家を一歩出る。ただそれだけのことが僕にとって、勇気のいることだった。好奇な、ときには嫌悪だったり奇異だったりするわけだけど、そういった視線におびえながら生きていた。

 視線だけならまだよかった。すれ違いざまに嫌味ったらしく、

 「口にウ

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ちゃんと社会学してね?

 ある日、ある居酒屋で、研究者である友人Hさんと社会学談義をしていた。Hさんは僕と話すとき、基本的なスタンスとして、どんな話題でも学問に引き付けて話すようにしているそうだ。僕はそういった中でHさんに揉まれていくうちに、社会学的な視点をもつことが少しではあるができつつあるように思っていた。

 そうしてお互いに疲れ果てて、帰ろうとしていたときだった。お店にお客さんが入ってきた。40代くらいの男性だっ

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