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詩『美しい殺意』

美しいものは純粋に
真っ直ぐ切先を向けてくる
躊躇わず胸を刺してくる
それはもはや殺意の様相

花弁に潜む螺旋の歴史を
あまたの書物に遡るとき
水面に揺れる満ち月は来て
無限に輝く白金の窓

空を流線形に切り抜く社
先人の祈りを組みあげて
山はいのちの根城となって
どこまでも足許に横臥する

心の隙間に入り込み
遠慮もなしに踏み荒らしてゆく
記憶の概念を根刮ぎ奪い
季節でさえも歪ませてゆく

くるめく意識に踊らされ
死んでは生まれを繰り返す
美しいものには抗えない
それはもはや本能のごと

避けようのない鋭利な針を
胸にいくつも突き立てながら
悪意のない殺意はささやく
どうでしょうかと微笑みながら




20210430
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