【読書メモ】ハマりたがる脳

本書は曖昧模糊な好みという概念をいろいろな研究結果や考察をもとにざっくばらんに評価している書籍になります。

あー顧客の好みなんてわからねえ、そもそも好みってどういうことだ…?

と迷宮入りしてしまっているビジネスマンは、新しい視点が芽生えるかもしれません。

結論がはっきりしているというより、こういう視点がある、ということをたくさんの事例で紹介している本なので、実際に書籍を取ってご自身のビジネスに当てはめてみることをお勧めします。

以下、読書メモです。

好みは学習から

生き物は、本来的に好き嫌いなど分かりません。

生きてきた経験と、自分の外からの刺激や印象によって好き嫌いが紐づけられるものです。

新しいものは毒かもわからないので、本来、生物としては避けるのが普通です。

ですが、新しくないものは印象に残りません。

新しくて最初嫌いだったものでも、繰り返し同じものを食べさせると好きになります。子供はいつか、ニンジンを好きになりますよね?(ならない?)

そういう意味では、好みとは、学習した風味であるといえます。

例えばコーヒーです。

コーヒーなんて苦くて子供のころは飲めたもんじゃないですよね。

そこで、コーヒーは最初に砂糖を入れて大丈夫だと学習させます。

そこから、何遍も飲むうちにカフェインの報酬系からコーヒーの風味自体が、好みの味だ!と錯覚するようになるのです。

そうなるともう、ブラックコーヒーでも飲めてしまいます。

酒も同じ原理です。

ビールなんて最初飲んだ時、なんでこんなもんを大人は美味しそうに飲むのだ??と絶対思いましたよね。

でも繰り返し飲んで、飲み会の席で美味しそうに飲む先輩たちに洗脳されるうちに、どうも嫌いになれない味になっているのです。

他にも、味のしないカロリーのあるマルチデキストリンを、そうとは知らない被験者に混ぜて入れたら、混ぜ入れた飲み物をより好むようになったという実験もあります。

このように好みなんてものはとかく曖昧です。

好みがどう傾くかは、情緒や経験、学習によって、無自覚に容易に変化してしまうのです

評価の曖昧さ

動画サービスの星評価はレコメンドのあくまで一指標であり、最重要視されません。

人の評価は曖昧なので、それがその時のレコメンドになるかどうかには直接的には繋がらないからです。

素人のレビューなんてものは、そのサービス自体の性質によらず、評価する人のその日の気分によりますし、高評価だけど俺は世間とはうがった目線でコメントしてやろうというひねくれた人だっています。

素人がいくらでも評価できるようになったこの時代、レビュー評価は絶対的な信頼などなく、私たち自身がどう見たいかだけが重要になります。

好みは予想できるか

音楽の趣味も味と一緒です。

甘い音楽も、聴きすぎたら飽きて嫌になります。

コカ・コーラのように絶妙な複雑さをもっているものが長く聞かれます。

好き嫌いの考え方も味と一緒で、その時の気分や外部からの刺激や印象によって音楽の印象が変わります。

経験によって趣味は変わるのです。

なので、個人個人で見れば好みの理由などわからず、予想などできないのですが、ある程度時代に流行った音楽を鑑みれば、大衆の好みは予想することができます。

繰り返し嫌でも聞いていることになるからです。聞いたことのある音楽は、好みへと変貌しやすいです。

CMは効果があるんですね。

ただ、「好きにならなかった理由」は分かりません。

好きでない理由は案外無視されてしまいますが、結局自分の人となりを表すには好きでない理由のほうが強烈なのです。

レビューは肯定的な意見が多くある中で、1件だけの否定的な意見があることは、その逆の状況より大きな影響力があることが分かっています。

なぜこれが好きとわかるか

好き嫌いは認識するより同時か、それより前に決定されます。

本能レベルでフィルタリングしてしまうのです。

そこからじっくり認識してみて、好き嫌いの印象を改めることは多少あるかもですが、多くの場合、一瞬で好き嫌いを判断した場合とじっくり見て判断した場合は同じような回答になったそうです。

途中で認識を改めるような出来事があったとしても、最初の情緒を変えるのは容易ではなさそうです。

人は好きである理由を答えることは容易ではないのです。

なぜ好みは変わるか

人はそもそも猿真似をしてしまう生き物です。

他人を真似してしまいます。それが流行りになったりするのです。

流行りと違うことをしたがるというのも、実質主流とは違うぞ、という、流行りをベースにした考えに過ぎないのです。

人は違いすぎること、新鋭すぎることは避けますが、慣れ親しんだことが多少混じっていればむしろ新鋭なものを好みます。

流行りは徐々に変わっていくのです。

少しの共感がなければ広まらないからです。

そしてそれ以外の小さな変化は、極めてランダムな社会的出来事や自身の経験によって生じるので、流行や好みの予測は極めて困難です。

そういう意味で、人は分類できるものを好きになる傾向にあるのかもしれません。

分類さえされてしまえば、すなわち、認知されてしまいさえすれば、人はモノゴトを好きになることができるのです。

好みの説明可能性

優れた猫コンテストや、最上の土壌コンテスト、最高のビールコンテストといったコンテストはあるが、その審査員は客観的にその対象を評価することなどできません。

まず、評価の順番にもよります。

1番目に評価したものの特徴によって、無意識に2番目に見る対象の評価が変わります。(初頭効果)

そして、そもそも、何が良いかという基準など、言ってしまえば人それぞれなのです。

人が判断すると、どうしてもそのバイアスが入ってしまいます。

好みを説明づけることなど不可能です。

それでも、何かを好きになる背景は必ず経験や社会的事象に隠されています。

なので、何が好きなのかを考えるより、なぜ好きなのか、をたどるほうが有益なのです。

案外、人は自分が好きなモノを自分でわかっていなかったりしますよ、という疑問を投げかけてくれています。

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