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風景のレシピ | nakaban

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私たちは本当には何を見ているのか――「旅と記憶」を主題に絵を描く画家のnakabanによる、風景画へのまったく新しいアプローチ。人が世界をどう見て、どう捉え、どう表現するかという… もっと読む
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2023年5月の記事一覧

風景のレシピ #64 “自転車の男”| nakaban

風景のレシピ #64 “自転車の男” 1.どこかへ自転車を走らせる男を配置する。   彼のために、適度の起伏のある道を用意する。 2.道の左右には広大な荒地をひろげ、朝の光を全体に振りかける。 3.激しい海風を吹かせる。   風と塩に長年耐えてきたような無家をぱらぱらと配置する。 4.地平線の彼方から雲ひっぱり寄せる。その影を荒地に落とす。 5.あの自転車の男のように、道の向こうに行きたくなったら、できあがり。

風景のレシピ #63 “海岸の並木道”| nakaban

風景のレシピ #63 “海岸の並木道” 1.靄のかかった憂鬱な休日をよく練り、四方に伸ばす。   硫黄色の空には波状雲をたなびかせる。 2.どこかへと続く道を通し、低めの堤防を添える。 3.背後に高く切り立った崖をダイナミックに並べる。 4.道に沿えるように街路樹を植えていく。   できあがった並木に呼応するかのように、堤防にかもめを並べていく。 5.並木の背後に家を一軒建てる。   あなたの友人の家である。   波の音がそこかしこに鳴り響き、海風が薫れば、できあが

風景のレシピ #62 “Aquarium”| nakaban

風景のレシピ #62 “Aquarium” 1.ひとつの町をつくる。   地図を描くように始める。通りや塔のある建物、広場をつくる。   看板を飾り、街灯を立てる。   人や車は配置しない。 2.日が沈んだころ、その空間にミネラルたっぷりの海水を流し入れる。   しばらく経つと、海底となった地面から気泡が立ち昇りはじめる。   街灯や窓明かりの光源はそのまま点くにまかせておく。 3.地中海のいわしの大群を遊泳させる。 4.月を水に浮かべる。   光がいわしの背中や建物

風景のレシピ #61 “TREE HOUSE”| nakaban

風景のレシピ #61 “TREE HOUSE” 1.朝露をよく含ませた朝をひろげる。 2.無数の針葉樹を植え、朝の光をふりかける。   樹間から漏れ聞こえる鳥たちの歌を聴く。 3.多くの木を利用して足場を組む。   釘は使わないように工夫する。 4.足場の上に家を組み上げる。窓やドアを忘れないように。   ドアの前に都会から運んで来た植木鉢をひとつ置く。   デッキに穴を開け、梯子をおろす。 5.暫くの時の間を置き、森の苔で家が覆われたら、できあがり。

風景のレシピ #60 “マイクロ三輪トラック”| nakaban

風景のレシピ #60 “マイクロ三輪トラック” 1.明るい日差しに覆われた裏通りの空間をひろげる。   通り沿いに白い壁の民家を並べる。 2.モザイク模様の石畳を好みのデザインで敷き詰め、よく踏み固める。 3.旧式のマイクロ三輪トラックを路肩に停める。 4.明るい色の植物を好みの場所に一群生ける。   窓辺に花を飾り、石畳に花びらをふりかける。   休むための日陰の納屋を建て、アーチ越しにその風景を眺める。

風景のレシピ #59 “Watch”| nakaban

風景のレシピ #59 “Watch” 1.職人となって腕時計をデザインし、組み立てる。   文字盤、針、りゅうず、覆い、金属部分、ベルト…。 2.一晩寝かせておいた街角の空気を静かにひろげる。 3.時計を手首に巻き、その街角の雑踏に佇み、時を確かめる。