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Soft Rock Top 80位~71位


80位 Miss D.D. Phillips「Hey, Little Girl」1969年

Mods GirlイメージPerfectな表ジャケ!!

 橋本徹氏監修によるレコード・ガイドブック<Suburbia Suite>に掲載されたことで一気に人気盤の1枚として認知度が爆上がりしたMiss D.D. Phillipsの唯一作『S.T.』。The Shirelles・The Three Suns・Lori Burton・The Angels等のGirls Popを手掛けたことでお馴染みのNYの名匠Leroy Gloverと、A&Rのディレクターを務めオーケストラの指揮からLinda Scott・Lesley Gore・The Four Seasonsとの作品でも著名なポピュラー音楽の巨匠Hutch Davieがアレンジを担当。全編通して大変聴き込み深いSoul Popナンバーが詰め込まれており、60’s Girl Pop~Northern Soul~Mod Pop~Soft Rock等の各分野から関心を持たれる非常に評判の高い名盤に仕上がっております。  
 テンポの速い脈打ちビートが印象的な疾走系の楽曲が特に出来が良く、Soulfulな洗練さとオシャレ感持ち合わせた《Northern Soul》系ナンバーはフロアを沸かすKiller Trackとして重宝されているそうです。Soft Rockファンにとっては英国が生んだ作編曲家兼極上Groovy MakerであるKeith Mansfieldの最高傑作として名高い「Hey Little Girl」が収録されていることで、EP盤も含めファン垂涎の的となる作品になっております。この「Hey Little Girl」は、キャッチーでSoul Popなメロディ・60’s Soul特有の女性コーラスとホーンの鳴り・躍動するアップリフティングな展開・ハイセンスなアレンジ等、正しくGroovy Soft Rockの極め付け的な大名曲。一聴の価値ありです。

79位 Berry Lipman & His Orchestra「I Like It」1978年

アート・センスも一つの楽しみである独産Library盤

 1921年独バーグドルフに出生した作編曲家兼オーケストラ・リーダーBerry Lipman(本名:Friedel Berlipp)。お洒落にボッサ・カバーした表題曲「The Girl From Ipanema」が特にDJ界隈で絶大な人気を誇っておりますが、彼はドイツ版Burt Bacharachやドイツ版Herb Alpertとも称され、欧州を代表するEasy Listening界の巨匠として知られています。一口に「Easy Listening」と言いましても、Jazz系ラウンジからBossa Nova・Mellow Groove・Latin・Funk・Disco・Classic Pops…等々、多種多様なサウンドを取り入れながらも、自身の楽団とコーラス隊を従えて唯一無二のリップマン・サウンドを展開していくのが彼のミュージック・ポリシー。
 個人名義から変名名義、さらにはコラボ作品やコンピ作品まで数えきれない程に膨大な作品群を世に残してこられましたが、その中でもSoft Rock度の高い作品が1978年にリリースしたBerry Lipman & His Orchestra-Rex Brown Company『Season Opening』。名義上コラボ作品に思われがちですが、Rex Brown CompanyはBerry Lipman自身が立ち上げたグループになりますので、実質Solo作と言っても問題ないでしょう。どこに針を落としても、女性スキャットで彩る軽快にして爽快なラウンジの嵐で面食らってしまいます。 そしてアルバム最大のハイライトはラストに収録された「I Like It」。極上にして最高レベルにGroovyなHappy Disco Tune。

78位 Teresa Carpio「This Time I'll Be Sweeter」1976年

Soft Rock的観点で楽しむならColumbia期が最適

 キュートな声質とグラマラスで表現豊かな歌唱力を持つ超実力派女性シンガーTeresa Carpio(本名:杜麗莎)。数多存在する香港出身の歌姫の中でも、その規格外なヴォイス・パフォーマンスで他を圧倒的に凌駕する孤高の存在として一目を置かれております。彼女は両親からの英才教育を受けて幼少期より芸能の世界でマルチ・タレントとして活動した後、日本は赤坂へ来日。
 「クラブPacha」にてフィリピンのロック・バンドD'Swoonersをバックに歌っていたところを勝新太郎にスカウトされ、勝プロダクションに所属。数枚レコードをリリース後に香港へ帰郷し、Columbia・EMI 等の大手レコード会社と契約を交わして、全曲英歌詞でのSolo Albumを6作連発リリース。  
 3rd Album以降はLight Mellow~AOR~Free Soul寄りのサウンドへ移行する為、Soft Rock ファンにとってマスト・バイなのは1stと2nd。1stは最高傑作として名高く勿論異論はありませんが、デヴュー作ということもあってか、やや肩に力が入った感は否めません。幾らか余裕が出来て、サウンドに爽やかさと落ち着きさを感じる2ndの方が寧ろSoft Rockファン向け。しかも「ジャケ良し」・「選曲良し」・「サウンド良し」の三拍子揃った良質盤ということで、個人的激レコメンド。特にB面はSoft & Mellowな楽曲がこれでもかと立ち並び、かなりビビります。
 78位に選出した「This Time I'll Be Sweeter」は、その中でもハイライトと言える大名曲。 静かに始まるイントロから高揚感あるサビへの持って行き方が、亜モノ系他女性歌手と比較するともう完全にレベチ。クライマックスで聴ける天にも昇る情熱的な歌唱にヤラれます。次曲「April」や「Have You Never Been Mellow」にも言える事ですが、抑揚を抑えたイントロ部で魅せる優しくも艶やかなソフティー・ヴォイスに胸キュンです。

77位 The Latinos「Keep Your Faith」1976 年

「名称・出生・外見」全てが暑苦しいが、コーラスは極めて爽快!!

 AORファンにはお馴染み、Word盤『It Must Be Love』で著名なThe Latinos。ヴェラスケス・ファミリーを中心とした4人組「The Four Latinos」がその母体で、元々はゴスペル・カルテットとして1964年辺りから活動を始めたチカーノ系のCCMグループ。メンバーの入れ替わりが激しかったり、それによるサウンド転向やレーベルやグループ名の変更等、音楽キャリアとしては安定を欠いたグループでしたが、年代・作品毎に異なった魅力を放っているのが特徴。
 その中で最もSoft Rock度が高い作品が1976年にリリースされた通算7作目のアルバム『We Believe In You』。 特に印象的なのが男女混成Harmony。下積み時代の長いゴスペル期の影響からなのか、Chorus & Harmonyの洗練さが半端じゃなく、学生系CCMグループとは桁違いに上手いです。甘茶系スウィート・バラード「Sinner's Plea」も捨て難いですが、Soft Rockファンは鬼甘Mellow バラード「Keep Your Faith」で決まり!!

76位 The Stan Jackson Orchestra & Chorus「Bon Voyage」

花ジャケ好きには堪らん【Blossom Records】の逸品!!!

 主に欧州を中心とした各国で制作された非正規販売のライブラリー盤。数々の名門レーベルを構え、総じて高品質な良質盤を数多く生み出してきた独産ライブラリー物は特に人気が高い。中でもSoft Rockにおける最良の風が吹き当てていた60年代後半から70年代に掛けてのスキャット入りEasy Listening~Lounge系のJazz盤は、Soft Rock界隈から評判がすこぶる良くて有名。シャープで鋭角的なHarmonyと複雑なアレンジで魅せるタイプのカナダ産Soft Rockとは対照的に、独産ライブラリー物は爽快感や清涼系を意識した簡素でストレートなコーラス・スタイルが鉄板。その潔さと明瞭なサウンド・アプローチは、誰にでも取っ付き易いハッピー・チューンが盛沢山な為、初心者にも打って付け。
 独産スキャット・ライブラリーの帝王Berry Lipmanの作品を一通り制覇したら、アンテナが高くニッチ派生に強いガイドブック等を参照に、是非ハイセンスなレコ盤採掘に励んで頂きたいのですが、個人的に推薦したいのが独ニュルンベルク出身Hans Ehrlingerの関連作品群。独産ライブラリー界隈で作編曲家兼トロンボーン奏者として著名な彼は、多数の変名名義によるリーダー作に加えて、演奏楽団の一員として数百を超える夥しい数のライブラリー盤に貢献した実力&実績共にトップクラスの功労者。そんな彼の関連作品の中でも最高傑作の呼び声高い一枚が『At The Sunny Side Of Life』。
 全編通して洗練されたスキャット入りラウンジ・サウンドが最高にCool で、BGM試用盤としても使える汎用性の高い1枚。A面2曲目に収録された「Bon Voyage」は、耳触りの良いBossa Nova系Jazzサウンドを基盤に、爽快にして濃厚な男女混成スキャットが飛び交うKiller Soft Rockナンバー。間髪入れずに惹き込まれるオープニングや一糸乱れぬ絶品コ ーラス・ノリの良い Beatを刻むパーカス・咆哮するホーン隊・Berry Lipmanを彷彿させるゴキゲン Happyなサウンド・アプローチ等、独産ラウンジ物の良さが凝縮した逸品です。

75位 Sail「You're So Beautiful」1978年

極上のMellow Soulを予感させる厚い唇と真赤な口紅が印象的!!

 疾走系爽快Soulナンバー「Give Me One More Chance」で有名なNY州ローム出身の4人組ラテン系Modern SoulグループTarget。彼らがメンバー3人を加えてGroovy&Funkyサウンドを取り入れた新生グループがSail。念願の Albumリリースに至った1978年の唯一作『Steppin' Out On Saturday Night』では、Target期の全4曲をセルフカバーしておりま す。メンバー増強に伴い、どの楽曲もサウンドに厚みが増し、飛躍的なパワーアップを感じます。特にModern Soulを軸に、Disco・Latin Rock・Soul・Funk・Rare Groove ・Hawaiian Mellow等の多用なサウンドがアルバム内の楽曲に散りばめられ、ハイブリッド感を随所で体感できます。
 Soft Rockとはジャンル的に趣を異にするかもしれませんが、Softなサウンド・甘く爽快なメロディ・高揚感・コーラス等、紛れもなくSoft Rockとスウィート・スポットを分かち合う楽曲が1曲だけ収録されています。それが75位にセレクトさせて頂いた「You're So Beautiful」。1973年のTarget時代にも同曲をシングル・リリースしておりまして、聴き比べてみるとサウンドに洗練さとメローネスが高まった印象があります。
 甘くもMellowなメロディにも関わらず、乾いた質感も持ち合わせた不思議な魔力を放っている楽曲で、何故かヘビー・プレイしても飽きが来ない。恐らく、リード・ヴォーカルの歌唱によるものなのかと素人ながら感じているのですが、Soulにも関わらず高らかに歌い上げる節も無く、余力たっぷりで Soft &Mellowに美声を響き渡らせている…且つ、しつこくなり過ぎず淡泊にもなり過ぎない、程良い距離感で寄り添ってくれる…そんな感覚が何とも Soft Rock的で素敵。異ジャンルと言えども、これくらいの柔軟性を持ち合わせてSoft Rockを堪能していきたい次第であります。

74位 Cookie Wong「Bad Talk」1977年

煌きの星々に包まれた王道ポップスの玉手箱的名盤!!!

 米国カリフォルニア州サンフランシスコ出身の中華系米国人Cookie Wong。中国語名の苗字がWangではなくWongからして、香港か広東省出身は確定。亜モノばかり聴いていると彼女の歌唱法は紛れもなく前者だと勘ぐってしまいます。表ジャケでは西海岸生活の満喫ぶりが伺えますが、当時の香港スター歌手宜しくオールディーズ・ポップスを堂々カバー。親族の影響なのか、血は争えないのかは定かでありませんが、モロ香港ポップスそのものといった印象。
 現地のホテルやナイトクラブでの下積み経験により歌唱レベルは水準以上。気になるのは地声のバリエーション。楽曲の内容によって声質を器用に使い分けており、変幻自在な歌唱に驚かされます。特にチェスト・ヴォイスに滅法強く、懐深いヴォーカルを堪能出来る 「Summertime」のカバーは圧巻。 私的ハイライト、というよりFree Soulファンに大好評のアルバムタイトル曲「Bad Talk」 が最大の聴き所となっております。限りなくシンプルな王道ポップスを最高レベルなCool Pops仕様に仕上げた至極のポップ・チューン。

73位 Buddy Raymond & The Changing Times「Where Is The Love」

希少性の高いプライベート盤!!!

 米国イリノイ州の極小ローカル ・レーベル《Ramlo》からリリースされた自主制作盤。裏ジャケの直筆サインは聴衆へのファン・サービスで、ナイトクラブ・キャバレー・ラウンジ等のステージ演奏後に自らの作品を物販形式で販売し、日当を稼いでいた典型的なショウ・ バンドと推察。
 唯一作『The Changing Times』は、Santana Medley「Evil Ways - Oye Como Va」や Carpenters「Close To You」、Lou Rawls「Natural Man」、Eddie Harris「Cold Duck Time」、Roberta Flack & Donny Hathaway「Where Is The Love」、The Hollies「He Ain't Heavy .... He's My Brother」等、大衆に受けの良い定番カバーが大半を占めているJazz Funk系統のアルバム。全体的に当時の時流に乗ったサウンドを意識しており、良く転がるエレピの音色とムーディなサックスが非常に印象的で、インスト或いは長尺の間奏部なんかは正に極上のMellowラウンジとして聴き込み深い。オブスキュアにして最良質な内容が話題を呼び、最近では国内外問わず各所で取り上げられる人気盤に。性質上玉数が圧倒的に少なく入手難度は高めですので、見掛けたら即買いをお薦め。非常に匿名性が高く情報量が少ないのですが、裏ジャケに記載されている正式メンバーは下記の通り。名前を入念にググっても全くヒットしないので、関連作等は無さそうです。

Buddy Raymond…Vocal/Guitar/Bass
Phil Christie…Sax/Flute/Vocal
Skip Green…Keyboard/Vocal
Johnny Taylor…Drums

 Soft Rockファンの聴き所は3声コーラスが絶妙に絡むヴォーカル物の楽曲になりますが、 個人的にはSoft & MellowにカバーしたFlack & Hathaway 「Where Is The Love」を激押し。 粗削りではありますが、Soft Rock指数の爆上げに貢献しているThe TokensやThe Happeningsを彷彿させるイタロ系濃厚Harmonyが最高。

72位 Kari Astrup「Tenk a Fa Leve Igjen」1977年

Norway産ジェントリー・ポップ良質盤!!!

 ノルウェー出身の女性シンガー。1976年にCarpenters「I Need To Be In Love」を母国語でカバーしたシングル「Du Vet Jeg Savner Deg」がスマッシュ・ヒット。それを受けて制作された唯一作『Det Fins Dager』は、3曲の英米カバーを除いて、他8曲はノルウェイ・ライター陣による書下ろしの楽曲で固められています。元々はJazzにルーツがあるそうですが、アルバムでは王道ポップスに特化した作風の楽曲で溢れており、北欧特有の哀愁を帯びながらも爽快さも持ち合わせたサウンドを堪能出来ます。アルバム通して決して高らかに歌い上げる様な節は無く、【歌のお姉さん】的な優しく温もりある歌唱が印象的で、それが楽曲にノスタルジー感を与えております。  
 本国のみならず、世界中で彼女の知名度を上げるきっかけになったのがラストを飾るB面5曲目「Tenk a Fa Leve Igjen」。アルバム内でも特に異彩を放った極上のFree Soul系Soft Rockナンバーで、誰でも一度耳にすれば人気沸騰も頷ける好内容。たったの3分という尺でミニマルな楽曲構成を取りつつも、《爽快》《ダンサブル》《胸キュン》の三拍子を上手く詰め込んでいるのは正に驚愕!!

71位 Ralf Heniger「The World's Over」

不思議と魅力的な《だまし絵》的独産アート!!

 2002年にドイツのマイナー・レーベル「Crippled Dick Hot Wax!」からリリースされた復刻コンピ盤 V.A.『Popshopping 2』に抜粋セレクトされ、シュールでスタイリッシュな表ジャケットも再発用アートワークとしてそのまま採用された原盤『Ein Mann Und Eine Frau/The World's Over』。原盤アーティスト名のRalf Heniger(実名: Reimund Hess) は、ドイツ・ノイシュトレーリッツ出身の作曲家兼合唱団リーダー。婦人であり作詞家のVeronika Krayerと共に、JazzやPop Music・民族音楽に影響を受けた教会音楽である「神聖ポピュラー音楽(サクロポップ)」と言うかなり曖昧でニッチな派生ジャンルの楽曲制作を行ってこられた御方で、本人名義・別名義・変名名義等、作品毎に異なったアーティスト名表記により、多くの作品を残されてきました。

独2002年リリースのV.A.『Popshopping 2』

 正直、混乱や誤解を生じる複数の名義と聞いたことのない良く分からないジャンルを扱っている当たり怪しさが爆発しておりますが、ヨハネス・グーテンベルク大学の博士号を持ち、国立放送の音楽編集者として硬派なキャリアを築いてきた正統派ミュージシャンらしいです。
 彼の経歴はさておき、話を戻しますと復刻コンピ盤V.A.『Popshopping 2』に選出された「The World's Over」は勿論Ralf Heniger御本人による作曲。この楽曲がとにもかくにも劇的にヤバいGroovy Soft Rockで驚きを隠せない逸品なんです。リズミカルなBossa Nova調に合わせて女性スキャットによる「パパパ・コーラス」が被さり、バック演奏では管弦楽とピアノが交互にSoloを分かち合う何ともお洒落なサウンドを展開。
 やはり独産ラウンジ物は侮れない…。


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