「二十歳の頃」№15 母の友人にきく

インタビューしたのは、私の母の大学時代の友人で、私自身も幼い頃から知っている女性である。1975年生まれ。神戸大卒。シカゴ大学のビジネススクールに通い、MBA(経営学修士)を取得。JPモルガン証券東京支店に勤めた後、独立し、投資に関わるコンサル事業を行っている。(聞き手・大和倖太郎=2年)

――大学で何をしようと考えていましたか

高校の時から途上国開発に興味がありました。貧しく恵まれない国の状況がひどいことはなんとなく分かっていて、どのように是正していけるのだろうと思っていました。

――途上国開発に興味を持ったきっかけは

親でしょうね。1980年代にアフリカで飢饉があったんですけど、子供の自分は日本にいたから食べ物に困らない。でも、もしアフリカに生まれていたら死んでたやろうなって。生まれた場所が違うだけでそうなることを、小さいときに母親に教えてもらって。高校、大学に進むにつれて、それを無視できない感が強くなっていったんですよね。

――大学4年生の時、フランスに留学しています

アフリカにはフランスが統治していた地域があって、文献もフランス語で書かれたものが特に教育学には多い。英語はいつでも勉強できる。フランス語を学ぶのは今しかない。留学先をフランスにしたのはアフリカに対する興味からでしたね。

――「途上国開発」に大学4年間でどうアプローチしようと考えましたか

学生のうちにアカデミックな勉強と、プラクティカルな活動の両輪をしたかった。それがどのような形で実現できるかは、動いてみないと分からない。いろんな人から話を聞いたり、問題意識をすり合わせたり、友達とディスカッションしたりしながら埋めていきました。私はアイセック(*)という学生団体に所属していました。どのような問題意識を持っていて、どのようなゴールを設定して活動するかを一通り書いた企画書を作って、それが承認されれば自分たちでファンドを取ることができたんですよ。実際に企画を立てて、アフリカの教育開発に3年間費やしました。

――どのようなことをしたのですか

一緒に活動していた人と、学生にできることは何だろうと話していて。アフリカをテーマにしようと。当時インターネットもないし、実際にアフリカに行った人もいない。ケニアのバラトン大学にあるアイセックの事務所と、現地でこんなプロジェクトをやりたいと連絡を取り合って調整をした。そのプロジェクトの中身は、アフリカの子供たちに学校生活をインタビューしたり情報を集めたりして、それを日本の高校の授業で紹介するというものです。1996年に初めてアフリカに行き、私たちが現地で体験したことを関西の三つの高校の授業で伝えて、ディスカッションしてもらいました。

――最初にアフリカに行かれた時のエピソードを教えてください

ケニアのナイロビに20日間ぐらい行きました。ビルはほとんどなく、土ぼこりもすごい。「ほんとに走れるの?」と思うようなボロボロの中古車ばかりが走っていた。本当に貧しい国なんだなって。子供の様子を取材してみると、孤児院がすごく多い。国は貧しいのに、子供の数は多いから、まかないきれてないわけですよね。学校を見ても、ものすごいんですよ、子供の数が。制服があればいいですけど、ない学校の場合は必ずしもきれいとは言えない格好の子が多い。でも、学校に来られるのはいいほうなんですよね。来られない子供たちは町で働いている。すごいカルチャーショックでした。文献で知っていたけど、実際に目にすると問題点のリアリティが全然違う。生まれる地域によって子供の生活が全く違うことを強烈に学びました。

――得るものは多かったですか

社会人になるための基礎的な知識は全部そこで作られたと思います。まず、誰もやったことがないことを一から形にするプロセスを経験できたこと。自分は知らないから他人に聞くしかなくて、ほんとにいろんな人に話を聞きに行きました。アフリカに関係のある人、開発学に関係のある人、JICA(国際協力機関)やNGOの人、学校関係者。何が足りていて、どんな問題があって、どのようなことをやれば喜んでもらえるのかは聞かないと分からない。
高校の関係者で同じような問題意識を持っている人がいたら「授業させてもらえませんか」と話をしに行く。見知らぬ大学生に授業をしてもらうのは大胆な決断で、信頼してくれたからできたこと。授業を受けた生徒の中には、私たちに憧れて神戸大学に進学した人もいて、人の連鎖みたいなものも経験できた。チーム作りのノウハウも学びましたね。チームをまとめたり人のメンタルを気遣ったりするのに長けた女の子が、主にチーム作りをしていたんです。仲間から自分の足りない部分を学ぶことができました。

【感想】

十分に考えて計画を立てること、実際に行動すること。どちらも行うことで、人生を豊かにできるとインタビューを通して学んだ。語ってくれた経験はリアリティのあるものが多かった。返答も素早かった。というのも、経験やそこで得た学びを十分に内省して整理し、今の生活に活かしているからなのだろう。大学生は自由な時間が多い。何を学びたいのかということを強く意識して過ごさなければならない。そのことを痛感した。

*アイセック
海外インターンシップやオンラインの国際交流イベントなどを通じて、世界中の若者のリーダーシップを育むことを目指している非営利組織。1948年にヨーロッパで設立。(アイセック https://www.aiesec.jp/ 2023年閲覧)

この記事が参加している募集

この経験に学べ