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営業が嫌いだった僕が、はじめての契約を取るまでの話

前回のつづきです。よかったら前のnoteから読んでみてください。

さて、前回までのおさらいをすると、僕は新卒で入った会社で、はじめての営業の仕事にとても苦労していました。飛び込み営業が怖すぎて逃げ回っていたら、たまたま契約が取れたりしたものの、5月には早くも1ヶ月の休養をもらうことになりました。

かなりの落ちこぼれ社員かもしれません。それでもなんとか職場に復帰してみると、テレアポ業務がはじまりました。

ちゃんとした顧客リストもないのに電話をかけまくるのが非効率に感じた僕は、勝手に顧客リストをつくることにしました。その結果、どんどんアポが取れるようになったのです。

「あれ? テレアポはたのしいぞ?」

などと思いはじめたころに、自分のなかで大きな変化がありました。

はじめて「自分で契約を決めたい」と思った

僕のような新入りが取ったアポイントは基本的にすべて先輩がクロージングしていましたが、僕が取ったアポはやたら決まる確率が高かったんです。「アポの内容が鮮明に記録されているから柳澤の案件は決めやすい」と上司からも言われていました。

それを聞いてうれしかったですし、アポさえ取れれば自分は営業に行かなくていいので、すごく楽でいいなぁと思っていたんです。

でも、そのうち、電話をしていると「これは決まるだろうな」「これは決まらないだろうな」と、だいたいわかるようになってきて、ついには「これは僕でも決められるんじゃないか」なんて思いはじめるようになりました。

だんだんと「欲」が出てくるわけです。

それにテレアポ業務にも少し飽きてきました。朝の9時から夕方の6時までずっと電話をしているのも退屈になってきて、「外に出たいな」と思うようになったんです。

あれほど対面の営業を嫌がっていたのに、いつのまにか「自分で決めたい」という気持ちが強くなってきていました。

当時の営業チームでは、「アポが取れたらパスして先輩に渡す」というのがルール。でも、あるとき「これは決まるだろうな」というアポを取ったタイミングで、ついに自分で契約を取りに出かけました。

久しぶりの対面営業、その結果は

会社には完全に内緒で行きました。

飛び込み営業もやりたければやってきていいよ、と言われていたので、「飛び込みしてきます」みたいな理由をつけて外に出ました。

訪ねたところは個人商店みたいな会社でした。アポの感触から自信を持って営業に行ったんですが、なんと、全然駄目でした。すぐに断られてしまいました。

これはショックでした。「やっぱり自分には無理なのか…」と落ち込みました。でも、先輩に嘘をついてまで来たわけですし、何とかしたい、という気持ちは強かった。それまでの自分だったらすぐに諦めていたはずですが、もう一度だけアタックしようと決意しました。

そして2回目の訪問。

対応してくれたのは社長の奥さんでした。話しているうちに、「そこまで熱心に言うんだったらあなたにお願いするわ」と言ってもらえて、ついに契約が決まったんです。

契約書を会社に持ち帰ると、結局、「こいつ、アポを渡さないで自分で行ったな」と、バレてしまいました。

怒られるのかな…と思ったんですけれど、なぜか「意外とやるじゃん」とか「ひとりで全部やってきたのか」みたいに褒められました。

そのときにはじめて、1人の戦力として見てもらえたような気がしました。

営業に向いているのはどんな人?

その後、毎月コンスタントに自分でアポを取り、そのまま受注までできるようになりました。入社からちょうど1年くらいたったころです。僕はようやく心から「営業っておもしろいな」と思えてきました。

もちろん最初はすごくつらかったです。何度も辞めようと思いましたし、入社1ヶ月で長期間休んでしまいました。そのことはいまでも覚えています。

けれど、もういっそ「自分なりにできることをやろう」「人と違うアプローチをしよう」と考えてデータを使ってみたら、これはいけると思えてきて、自分でクローズまで持っていきたくなりました。

言われた通りの飛び込み営業だけを繰り返していたら、その学びの過程はなかったと思います。

自分のなかのステレオタイプにも気づきました。たとえば「営業が向いている人」ってどんな人だと思いますか?

僕がイメージしていたのは、体育会系出身で、とにかく元気で、コミュニケーション能力が高くて、初対面の人とも盛り上がれる人でした。

でもこれはある意味では正しくないのかもしれません。

逆に僕はスポーツこそやっていましたが、無口なほうで、すごく人見知りもします。営業には向かないタイプだと自分でも思っていました。でも実際に営業をやってみると、こんな僕の性質も確実に活きる場面がありました。

傾聴もひとつの武器になる

新卒の会社では、まわりの営業マンはみんな、わりと強めのクロージングをするタイプでした。押し売り営業みたいなことをする人も多かったです。一方で僕は気が弱いし、コミュニケーション能力も高くないので、お客さんの話をずーっと聞いていました。

良く言うと「傾聴するタイプ」だったかもしれません。でも、ちゃんと黙って聞いていると、お客さんが求めているポイントがよくわかるんです。上司が商談しているところを横で聞いていると、「あ、次はこういう話をするといいんじゃないか」みたいに思うようになりました。

そういうシミュレーションをしながら聞いて、それを実際に自分が実行してみたらどうなったか。お客さんから話してくれる割合が多くなって、満足度の高い商談ができるようになっていきました。

「あなたと話すとなんだかすっきりする」みたいなことを言われるようになりました。こうなると、お客さんとしても「買わされている」感じがしません。ずっと喋っていたら、買っていた、と話すお客さんもいました。

そういうことが何度か起きるうちに、いわゆる典型的な営業マンと僕自身はまったく違うタイプだけれど、もしかしたら自分みたいな性格の人のほうが向いているんじゃないか…と思えてきました。

世間で言われている営業に向いているタイプと、実際の仕事の場面には意外と乖離があるのかもしれないと、なんとなく気がついてきました。

人間にある4つのタイプ、どれも強みに

ソーシャルスタイル理論というものをご存知でしょうか。人の言動を4つの類型に分けたものです。1960年代にアメリカの心理学者が提唱しました。

出典:リクルートマネジメントソリューションズHPより
  • アナリティカルタイプ

  • ドライバータイプ

  • エミアブルタイプ

  • エクスプレッシブタイプ

の4つがあり、人は必ずこの4象限のどこかに入ると言われています。

いわゆる営業にすごく向いている人は、エクスプレッシブタイプとエミアブルタイプの人と言われていました。僕はどちらかというと、アナリティカルタイプかドライバータイプです。

どのカテゴリが良い、悪いということではありません。

どのカテゴリであろうと、その個人の力を発揮して成果を出せます。だから、エクスプレッシブタイプが営業向きで、アナリティカルタイプが営業に不向き、というわけでもないのです。

それにお客さんもこの4つのタイプに分けられます。たとえば、お客さんがドライバータイプのときはどういうコミュニケーションをとったほうがいいか、みたいなことも営業の勉強会ではよく語られます。

たとえば、「指図されるのが嫌いなタイプだから、あまりクロージングを強くかけないように」とか、「こうしろ、ああしろと言わないように」とか、指示が飛んだりします。

そういった相性のようなものもあるので、必ずしもどれかのタイプが強いわけではありません。

一般的には「営業に向いている人はエクスプレッシブタイプ」と言われますが、一方でエクスプレッシブタイプの人は「つまづく」ことも多いです。

なぜかというと、コミュニケーション能力がすごく高くて、客先でも自分のことを話しまくるので、お客さんからすると売り込まれている感じを強く受けるようになります。

学生のころはそういったコミュニケーションで上手くいっていても、社会に出て、営業のシチュエーションになると弱点になることがあります。まったく勝手が違うことに驚き、つまづいてしまう人も多い印象です。

ときには自分を抑えたり、傾聴したりすることも大事です。

僕は社交的じゃないし、控えめだけれど、これが自分の武器になっているな、と次第に思えるようになりました。

最初は自分の弱点と感じていたことが、意外とうまくはまる。仕事って実は、そういう経験の積み重ねだったりします。

自分の弱点が一転して武器になってくると、一気に楽しくなってきますよね。

「まずは1か月」から、何かが変わる

4月から新卒で営業を始めた人のなかには、ちょうど昔の僕と同じような状況の人もいるかもしれません。

スタートアップで営業をしている若い人から「ずっと目標達成できない。どうすればいいんしょうか」と聞かれることも多いです。

そんなときに僕の新人時代の話をすると、「会社に行けなかったことがあるんですか?」みたいな感じで驚かれたり、共感してもらえたり、「じゃあ僕もなんとかなるかもしれない」と勇気を持ってもらえることもあります。

新卒入社の方はいまちょうど3ヶ月目が終わったところでしょうか。営業をやっていると、たぶん一番つらい時期かもしれません。

もしそうだとしたら、僕から伝えたいことがあります。

まず、大前提。精神的に疲れ果てて、心が壊れてしまうくらいだったら、そこから逃げることも重要だと思います。

ただ、そもそも自分にとって難しいことに挑戦しているときは「つらい」と感じることが多いものです。そして、そのつらい状態って、ずっとは続かないんです。

僕がいままで見てきた人のなかでも、いまはたしかにとても大変でつらいけど、1年後もまだその状態のままかというと、なんとか頑張っているうちに解消されていることが多いです。

なので、まず1か月頑張ってみたらどうかな、と思います。

「1年はやれ」「一生やれ」なんてことは言わないです。でも、目先の1か月だけ頑張ってみると次のステージが見えてくることもありますから、ちゃんと逃げることも重要ですが、まずは目の前の1か月を頑張ってみようよ、と。

それで駄目だったら辞めればいいんです。1か月の積み重ねがその先につながります。

僕自身はそれがすごく心の支えになりましたし、それがいまの自分を作っているのかな、と思っています。


今回はふと思い立って、新卒時代のことを振り返ってみました。

営業戦略の立案からカルチャー作り、カスタマーサクセスまでをカバーした一連の記事をマガジンにまとめています。よかったら読んでみてください。


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