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新卒のときは営業なんて大嫌いだった。

こんにちは。マイノリティという会社で代表をやっている柳澤といいます。

僕はこれまで十数年、営業組織の構築やB2Bのマーケティングを専門領域にキャリアを重ね、ついには会社を起業し、いまでは他社さんの戦略づくりを請け負っています。

noteでも「新しい営業の教科書を作る」という意気込みで記事を書いてきましたし、こんなにワクワクする仕事はないと思っています。

でも、じつは営業なんて大嫌いでした。新卒のころは逃げ出したくなる毎日でした。

今回は、僕がはじめて営業の仕事をやったときのこと、そこでの挫折と苦労、そしてほんの少しの成功体験について書いてみようと思います。

僕がいまも大事にしている「データを駆使した戦略づくり」「仕組みで売れる営業組織構築」にいたる原体験のようなものです。

新卒時のCanonでの研修(筆者は左下)

とにかく営業はやりたくなかったーー。

5月、6月。この時期になると、辛かった新人の営業時代のことを思い出します。

はじめて営業という仕事に触れたのは2005年4月のこと。新卒で入った会社で社会人デビューと同時に営業職になりました。

でも別に営業がやりたかったわけではありません。むしろ、まったくやりたくなかったです。

そもそもが営業に対して良い印象を持っていませんでした。「ノルマがあって、客先を回ってお願いをしなきゃいけない」というネガティブなイメージ。

ほとんどの学生が同じように感じているんじゃないでしょうか。ドラマとか映画を見ていても、営業マンがペコペコしているシーンをよく見ますし、気がついたらそういうイメージが刷り込まれていたのかもしれません。

僕の地元は田舎で周りは農家さんが多かったのですが、父は旅行会社の営業でした。

当時は携帯電話もなかったので、旅行会社の特性上、土日でも会社から家にガンガン電話がかかってきていて、「休みもないし、営業ってすごく大変なんだな」と、子ども心に思ったものです。

それなのに、なぜか自分も新卒で入った会社で営業をやることになったのです。これはもう想像を絶するくらいキツかったです。

100万円のコピー機を飛び込みで売る

そもそも僕は大学生のときにプロミュージシャンを目指していたので、就職活動なんてやっていませんでした。そのため音楽活動を並行してできるように、土日が休みだという理由でアルバイト先の会社にそのまま入社させてもらいました。

勘のいい方はわかると思いますが、そこはいわゆる中小のブラック企業でした。

それでも、土日はちゃんと休みだったので音楽活動はできましたし、会社のみんなも良い人でした。扱っている商材はOA機器で、商材の単価は100万円から200万円くらいでしょうか。要はコピー機などの代理店をしていたのです。

4月に入社するといきなり「飛び込みで売ってこい」と言われました。当然、何もわからないまま言われた通りにやりました。

普通に考えると、「100万円もするコピー機なんて、飛び込みで来た人から買うか!?」と思うでしょう。でも、当時の自分は「なるほど、法人同士の取引ってそういうものなんだな」と思っていました。

これはいわゆるリプレース営業です。コピー機はどこの会社にもあるので、飛び込みをしてコピー機の型番を見せてもらい、3年くらい使っている機種だったら入れ替えの提案をします。

小さい会社だったので僕が新卒1期生で、同期はもう1人だけでした。その彼はインターハイにも出ているような体育会系出身で、1日に100件くらい飛び込み営業をできるようなパワフルな子でした。

そのときは「絶対にこいつには勝てないな」と思って、会社に行くのがさらに憂鬱になりました。でも、なぜか僕のほうが先に売れてしまいました。

なぜでしょうか?

それは飛び込み営業が怖かったからです。怖かったから、少しだけズルをしました。

人と違うことをやるのが重要

なにしろ門前払いは当たり前、即座に断られるわ、怒られることもあるわで、最初の数日で早くも心が折れていました。とにかく飛び込み営業が怖かったんです。

なんとか1か月は勤めたものの、ゴールデンウィークを迎える頃に、「この仕事は絶対に無理だな…」と退職を考えるようになりました。

とはいえ、何もやらないわけにはいきません。その会社はコピー機以外のオフィス家具も扱っていて、その一覧をまとめたパンフレットみたいなものがあったので、僕はそこに自分の名刺をホッチキスで留めて、ずっとポスティングだけしていました。

そのまま会社に帰ると、やっぱり気合と根性の営業会社なので、「何人から名刺をもらってきたんだ?」という話になります。だから営業はまったくしない代わりに、名刺をもらうためにコピー機のチラシだけを手渡ししていました。

そうしていると5月上旬くらいに、「会社を立ち上げたばかりで新しいコピー機が必要だから話を聞きたい」という問い合わせがきました。初めての商談です。上司にクロージングしてもらったところ、すんなり決まりました。

こうして突然、営業の仕事で結果が出てしまいました。

いま振り返ると、ここには大きなヒントがあります。でも、そのときはわかりませんでした。当時のやり方は偶然にしか感じられなかったので、「このままやっても大丈夫なのかな…」とますます不安に思ったものです。

最初の成約においていったい何が良かったのか。いまならよくわかります。

要は「人と違うことをやることがすごく重要」ということです。学生のときは授業もテストもみんな同じ環境と同じルールで競争して、いかに結果を出せるか、でした。

けれど、社会に出るとすべてがそうではありません。結果さえ出せればプロセスは問われないことも多い。特に営業という仕事はそうでした。

当時の僕は「上司に言われたやり方で結果を出さないといけないんだ」と思い込んでいましたが、いま振り返ると、がむしゃらにやるよりは、同じ努力をするにしても確率の良いやり方で進めることが大切なんだ、と理解できます。

テレアポは、すこし楽しかった

それでも、その後は1か月近く休んでしまい、結局「辞めさせてください」と申し出ました。ただ、アルバイトのころからずっとよくしてもらっていた会社だったので、「ちょっと休んで、しばらくしたらまた出ておいで」みたいなことを言われました。

6月くらいから再び出社しはじめたのですが、ちょうどそのタイミングで会社に変化がありました。飛び込みよりテレアポのほうが打率が良かったらしく、メインの営業手法がテレアポ営業に代わっていました。

僕としては一刻も早く辞めたかったんですけど、「一応やるだけやってみよう」とテレアポをはじめてみたら、飛び込みよりも楽だったんです。

お客さんが目の前にいると、まったく言葉が出てこなかったりしましたが、テレアポはお客さんが直接自分のことを見ているわけじゃないので、台本を見て話せるのがよかったんです。

飛び込みのときにすごく苦手としていた部分がなくなり、気持ち的にすごく楽になりました。ちゃんと事前準備もできるし、自分のペースで話せる。そのうち、けっこうアポイントが取れるようになりました。

それで「6月だけ頑張ろう」と思っていたところから、「7月も頑張ろう」「8月も頑張ろう」と少しずつ延びていきました。それに、自分が取ったアポイントは上司が商談をしてくれるので、順調に決まりはじめていました。

そこから「3か月頑張ろう」「半年頑張ってみよう」と、ちょっとずつ自分のなかでも仕事に対する気持ちが変わってきました。

気づいたら、営業が楽しくなっていたんです。

結局、その会社には3年半いました。

2年目に主任になって、3年目に次長になりました。初めての新卒ということで可愛がられていたのか、すぐに昇進させてもらえました。

営業が苦手なところから、だんだんと楽しくなっていったわけですが、もちろん、きっかけはありました。

あらためて、「人と違うやり方をするのが大事なんだ」と思うようになった出来事です。

顧客の情報を記録してみたら……

当時、テレアポ用に「ここに電話をかけなさい」という会社のリストがあったんです。転職してきた人が前職から顧客リストをそのまま持ってきちゃった、みたいなこともあったようで、他の会社の既存顧客の機械の型番が入っているようなリストでした。

リストの会社に電話していくと、「ちょうど最近変えちゃったよ」というところもたくさんありました。データをちゃんと残していなかったからです。

電話して断られたら終わりというだけで、いま使っている機種のデータも、前にその会社にいつ電話したのかというデータも、まったく記録していなかったんです。

昨日断られた会社に次の日も電話をかけるみたいな営業をしていたわけですから、「すごく非効率だな」と思っていました。

当時は顧客管理システムみたいなものはなかったので、自分でExcelでリストをつくって、「いつ電話したのか」「いまはどういう機種が入っているのか」などの情報をすべて記録していきました。

そういうログを残していくと、他の人が知らない情報が把握できました。「今月はだめだったけれど、半年後だったらちょうど入れ替えるタイミングだろうな」、「受付の◯◯さんには断られたけど、違う人と話せたらいけるかもしれない」ということが全部わかってきました。

実際に営業活動のデータが貯まってくると、アポの効率が上がってきました。データを使うことで、再現性高く結果が出はじめたのです。

テレアポというと、普通の営業はだいたい1日に70〜80件くらいかけていたと思います。僕はデータを見ながら電話するので件数自体は40件くらいでした。しかし、80件かけている人よりも無駄打ちがないので、僕のほうがアポを取れていました。

いまにつながる原体験

これが現在の自分につながる最も大きな原体験だったように思います。いまでこそ誰もが当たり前にやっていることですが、データで顧客を管理する、ということをはじめて体験しました。

「人と違うことをやる」という原体験の上にさらにデータが重なりました。

そうすると、次のステップはどうなるか?

なんと、僕はあれだけ大嫌いだった対面の営業がやりたくなってきたのです。そこで上司に内緒で、自らテレアポ先に乗り込むことにしました。


その顛末はまた次回に。

振り返っていたら、いよいよ長くなってきました。よかったらnoteをフォローしてお待ちください。


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