(コラム)なぜGDP重視の経済成長ではダメなのか(2)

GDP統計中の家計消費が必ずしも家計の生活水準(厚生水準)を表しているわけではないという事情はいくつかある。例を挙げてみよう。

例えば中古市場の発達である。乗用車は年間300万台以上が登録(つまり販売)されている。そうした中古の活用が進むことで、乗用車の平均的な使用年数も13年以上になった。40年前は10年未満であったから、それだけ1台の乗用車が大きな使用価値をもたらしているわけである。中古車を除く中古品の市場規模は2兆円を超える規模となっているらしい。オンラインでの個人間での取引も活発になっていて、これらは消費生活に寄与しているはずである。しかし、GDP統計には流通高が反映されるわけではなく、流通にかかる手数料部分の付加価値部分が計上されるだけである。

いわゆるシェリングの場合はどうだろうか?カーシェアの場合であれば、利用料は需要サイドで家計消費として計上され、また提供企業の売り上げとなり対応する付加価値部分が生産サイドでGDPを形成することなる。しかし、カーシェアの発達は乗用車自体の需要を抑えるわけで、その意味でGDP抑制的だが、消費生活の向上にはなっていると言えるかもしれない。

逆に、外食産業のように、GDPの増加にはつながるけれど、GDPには入っていない家事労働を代替している産業とも考えられ、家事労働が外部化しているという見方もできる。そうであれば、現実の使用価値の価値額の増加はGDPの増加ほどではないと言えるのではないか。これはその他の対個人サービス業でもそうした性格のものは多いだろう。

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