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特別な食体験を演出する|nomaのシェアテーブル

世界の食トレンドと消費者が食に求める3つの役割で紹介した通り、食事が栄養補給から自己実現の手段へと変化するなか、消費者が食に求める役割は「主体的な選択、コミュニティへの帰属、パーパスの発見」の3つに分けることができます。

このうち「コミュニティへの帰属」を満たしたい消費者ニーズに応えている飲食店には、どのような事例があるでしょうか? 本記事では北欧デンマークのコペンハーゲン中心部にある noma のシェアテーブルの取り組みを紹介します。



1. 世界一のレストラン「noma」とは


noma(以下、ノーマと記載)は、実業家のクラウス・マイヤーと、料理人のレネ・レゼピがタッグを組み、2003年にオープンしたレストランです。

店名はデンマーク語の「nordisk」(北欧の)と「mad」(料理)を組み合わせた造語で、その名の通り北欧の食材と生産者に光を当て、その文化を伝えることをコンセプトにしています。

2010年には「世界のベストレストラン50」の第1位*に選出され、2012年にはアメリカの雑誌「TIME」の世界で最も影響力のある100人にレネが選ばれたことから、食を目的にデンマークを訪れる旅行者は11%も増加したと言われています(*2010年以降も2011年、2012年、2014年、2021年に第1位を獲得しています)。

引用:デンマーク王国大使館
(https://denmarkfood.jp/news/worldsbest50restaurants/)


また現在ノーマは、ミシュランガイドで三ツ星と、サステナビリティを積極的に推進しているレストランに与えられるグリーンスターを獲得しています。

2023年の3月から5月には、日本では東京に続き2回目となるポップアップレストランを京都に開きます。ひとりあたり12万を超える価格設定でありながら、販売開始からわずか3分でチケットが完売するなど、世界の注目を集め続けているレストランです。

このノーマを語る上で外せないのが、特別な食体験を演出するシェアテーブルの存在です。

2. 特別な食体験を演出するシェアテーブル


ノーマには一般的なレストランにあるような2人席や4人席の他に、シェアテーブル(Shared Table)という大きなテーブル席が用意されています。

Photo: Rasmus Hjortshoj|引用:World Architects
(https://www.world-architects.com/ja/architecture-news/works/noma-2-0)


シェアテーブルはその日の予約状況に応じて、4名から16名までの世界各国から訪れるお客様が着席します。国や言葉が異なる見ず知らずの人同士がひとつの大きなテーブルを囲み、たのしい食体験を共有するという仕掛けをどのように実現しているのでしょうか?

その鍵を握るのは、よく訓練されたフレンドリーなホールスタッフです。

例えば、シェアテーブルに座っているゲストのひとりが誕生日だった場合、一般的なレストランではそのゲストには特別なデザートが提供されますが、ノーマではシェアテーブルに大きなホールケーキが運ばれてきます。

そしてホールスタッフによって指名された別のゲストが、この日シェアテーブルに座っている全員分を取り分けて、みんなでお祝いをします。取り分けが下手で大きさがバラバラになってしまっても、それ自体が特別な思い出にもなります。

シェアテーブルではおいしい料理とともに、この日ここでしか味わえない食体験が、ファシリテーター役を務めるホールスタッフにより演出されているのです。

3. 参考情報


ノーマとシェフのレネについて詳しく知りたい方は、彼のドキュメンタリー映画「ノーマ|世界を変える料理」をご覧ください。

またレネとその妻ナディーヌの書籍は日本語でも刊行されています。




筆者が代表を務めるフーズフーズでは、日本の食産業が進むべき未来を示すガイドブックを年1回刊行しています。

2023年のガイドブック「whose foods magazine 2023|Explore the Future of Food」は、2022年の秋に国を越えた移動と観光が再開している世界6カ国12都市を48日間かけて調査したフィールドワークに基づき作成されました。

第一部では最新の食トレンドと消費者インサイトを、第二部では日本の食産業が世界に通用する食体験を届けるためのステップを、国内外の優良事例とあわせて紹介しています。詳しくは下記をご覧ください。

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世界各国でのフィールドワークをもとに、最新の食トレンドと消費者インサイトや、日本の食産業が進むべき未来とそのステップを、国内外の豊富な事例…

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