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CB基準に守備を見た時のピッチの景色【CB基準の守備分析講座講師 清水智士インタビューVol.4】

元J1コーチの2倍早く守備の穴を見抜く『CB基準の守備分析講座』【動画解説】」の講師をしていただいている清水智士さん(サガン鳥栖、ベガルタ仙台でコーチを歴任。育成年代の指導もしたい!と考え現在は大同大学大同高校サッカー部コーチ)のインタビュー第4弾、最後です!
Vol.1:つくばで肌で感じた学ぶ姿勢の重要性
Vol.2:勝つことを知り尽くしたユンジョンファン監督との仕事
Vol.3:指導する上で最も大切にしている「寄り添う」姿勢

サッカーアナライザー:ちなみに、FIゼミの特別講座「CB基準の守備分析講座」の講師をしていただいていますが、CB基準を意識的に見るようになったのはいつ頃ですか?

清水さん:実は、プロの世界を離れてからです。というのも、プロを離れて、整理されたことがたくさんあるんですよ。プロの世界で仕事をしていた時は、とにかく次の試合、次のシーズンに向けて必死にやってたような感じで。

そこから離れてこの1年で、セミナーをやらせてもらったりもしながら自分の分析方法も整理できました。「ああ、俺こうやって見てたわー」って(笑)

サッカーアナライザー:ああー、整理する時間って大切ですよね。すごいわかります。

清水さん:だから元々CB基準で見てたとは思うんですよ、感覚的には絶対。それをよりはっきりと基準として見るようになったのは今年ですね。

もし今からプロの世界に戻ったとしたら、当時の4年間よりも整理して伝えられると思います。それぐらい、この1年の整理もとても大切な時間でした。

サッカーアナライザー:成長を続けてる感じが良いですね。

清水さん:そうですね。だから、プロでやっているから凄いとか、そうじゃないからダメだとか、僕はそういう風には全然捉えてなくて。どこにいるかじゃなくて、何を学んで、どう考えているか、そこでどう成長しているかが大事だと思うんです。

サッカーアナライザー:そうやって色々整理されて、CB基準を守備を見るようになって、欧州とJを比べてどうとかってありますか?

清水さん:どうなんでしょう。欧州だからとか、日本だからとかじゃなく、それぞれのやり方だと思います。良い悪いではなく。

先日、講座のサンプル動画で解説しましたけど、「CBがこうしているから周りの選手はこうだよね」とか、「CBがこうしているなら、この選手はこうじゃないの?」とか、その決まりがあるのかとか、その決まりが選手たちの良さを引き出せているのか、とか。

例えば、チームとして前からプレスに行ってDFラインを上げれば、必然的にCBのカバー範囲は広がる。DFラインを下げればCBのカバー範囲は狭くなる。

それなのに、「うちはCBの能力が低いから前からプレスに行きます」という話を聞いたことがあります。そういう時には、「その辺りの原理原則は本当に理解されてるのかな?」などと思うことはあります。

逆に能力が高い選手がいるから、組織的には機能していなくてもその能力を活かしてなんとかしてるな、とかそういうのもありますね。

でもそれはJリーグだから、欧州だからというわけでもなくて、欧州のチームを見てても、やろうとしていることと実際の選手の能力がちょっと違うと感じることもあれば、Jリーグでも素晴らしいチームがたくさんあります。

サッカーアナライザー:なるほどですね。ちなみに例えばこのチームの守備のやり方が印象に残ってるとか、好きとかありますか?

清水さん:そうですね。僕が思うのは、ボールを保持しながら強いチームというのは、必ず守備が安定しているということですかね。

バルセロナやマンチェスターシティなど、守備がかなりしっかりしている。良い守備があるから、良い攻撃ができていると感じます。まあ良い攻撃ができるから、良い守備もできるのでしょうけどね。

あとは、印象に残っているのは、クラブW杯で鹿島アントラーズと対戦した時の、ソラーリ監督率いるレアル・マドリードですかね。

サッカーアナライザー:ジダンが再就任する前のですね。

清水さん:そうです。あの時、最初からガッっとボールを奪いに行くよりも、まず立ち位置で相手のやりたいことを全て消して、相手の選択肢を奪ってからボールを奪いに行く。相手を完全に無力化する、かなり頭の良い守備組織だなと。

サッカーアナライザー:そこでもやはりCBを見るんですよね。

清水さん:CBのタイプによって、その周りの選手の役割が変わると思います。埋めるスペースや、掴む人が変わってきます。

サッカーアナライザー:例えばセルヒオ・ラモスなら左右上下に広くカバーをしますよね。

清水さん先日FIゼミで実施した観戦会をしたクラシコの話ですよね?
カバー範囲広く人を潰しに行くと、周りの選手はそれによってできるスペースをカバーしなければならない。

あの時のヴァランはスアレスにマンツーマン気味に付いてあまりサイドに出ていかない傾向があったので、そうするとヴァランの1個前の中盤の選手たちがそれによってできるスペースをケアしにこないといけなかったり、そういう原理原則は大切ですよね。

サッカーアナライザー:そうですよね。

清水さん:僕が韓国にいた時に最強だった、全北現代はほぼほぼフルコートマンツーだったんですよ。

サッカーアナライザー:えっマジすか。すごい。

清水さん:でもクロス対応だけはゾーンだったんですよ。

サッカーアナライザー:ほぉー!

清水さん:ゴール前だけゾーンだったんですよ。たぶんスター軍団だし、人に対しては強かったんですよ。質的優位が全てにあったんで。でも最後のところ、人を掴みに行けなかった時は、最後にゴール前のスペースを埋めてましたね。

大柄な選手たちがスペースに立つと、まあこちらが使えるスペースがないんですよ。こういうチームもあるんだなって、かなり強いなって思ってました。

サッカーアナライザー:面白いですね。

清水さん:僕らは相性は悪くなかったんですが、韓国はより個人と個人のバトルが多かったので、いつも全北に試合を持っていかれていました。

そういうチームとJリーグのチームが対戦するのを見るのはかなり面白いです。お互いにやろうとしてることもわかりますし。
ちなみにその年、全北現代と柏レイソルがACLで当たったんですよ。めっちゃ面白かったですよ。

サッカーアナライザー:かなりタイプ違う両チームですね(笑)

清水さん:人を潰したい全北現代と、スペースを取っていきたい柏レイソルという構図で、見所の多い試合でした。

サッカーアナライザー:最後に。今後、清水さんはどうなっていきたいですか?

清水さん:んーそうですね。『サッカーを本当の意味で楽しめる人』という表現を僕はしているのですが、サッカーの本質的なところ、戦術的な駆け引き等をたくさん知って、サッカーを深く楽しめる人を増やしたいなと。
そういう思いはやっぱりありますね。

サッカーアナライザー:とても良いですね。僕も非常に共感します。本日はありがとうございました。

FIゼミ特別講座「元J1コーチの2倍早く守備の穴を見抜く『CB基準の守備分析講座』【動画解説】」講師、清水智士インタビュー
Vol.1 つくばで肌で感じた学ぶ姿勢の重要性
Vol.2 勝つことを知り尽くしたユンジョンファン監督との仕事
Vol.3 指導する上で最も大切にしている「寄り添う」姿勢
Vol.4 CB基準に守備を見た時のピッチの景色(本記事)

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