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比較せず受け入れる

「どうして自分だけこんなつらい状況なんだ」
「昔の自分はよかったのに」

自分の状況が悪くなったとき、僕たちは周りの人間や過去の自分と比べてしまう。自分の悩みやコンプレックスを周りの人間や自分の過去と比較するとただただ辛くなるだけだ。だから、ネガティブな部分は比較せずありのままで受け入れた方がいい。

特に自分の悩みというものは、現状を受けいれることでしか前に進むことはできない。それはとても難しいことだし、僕だってどんな困難な状況も受け入れて進んでいけるとは言い難い。だけど、それでも過去の自分や周りと比較せず現状を受け入れて進むというのは大切なことだ。現状を受け入れれば、心に安息が訪れる。

何か現状が悪くなってしまったときに、過去の状況と現在の状況を比較してしまう人は多いと思う。僕も例外なくそうだ。
 
 24歳まで特に大きな病気もケガもせず生きてこれた。とくに持病もないし、喘息もアトピーもない。健康そのものだと思っていたし、これからもそうだと思っていた。

 
 僕は2021年1月、地元の離島に帰省していた。1月の終わり頃の、ある晩。その日、家族は予定で出払っていて、僕は家に一人。

夜中にぐるぐると考え事をしていると今まで味わったことのない強烈な不安感に襲われた。気づいたら、僕は夜中に裸足で外へ飛び出している自分がいた。しかも、2度も。

 さすがに変だと思った。自分に何か起きているのではないかと不安な気持ちで、調べものをしていると、どうやら不安障害の症状が当てはまっている。

実は、前々から嫌な予感はしていのだが、曖昧にしていた。曖昧にしてた方が楽だったから。

僕は中学あたりから意識が遠のくような感覚に悩まされていたし、頭の中の考えが自分で止められなくなってしまってパニックになることが度々あった。疲れかなとか、栄養不足なのかなとか。原因を軽い方向でとらえて曖昧にしていた。

当然、病院にいったり、深く調べることはしなかったので、長い間、この症状が一体なんなのか分からなかった。が、ついに合点がいってしまった。


   
 「どうして、こんなことになったのだろう。今までの生活には戻れないのかな」と、絶望した。「生き地獄」とはこんな心理をいうのかもしれない。ずーっと不安。心の問題なので、治し方も検討がつかない。切り傷や骨折ではないのだ。目に見えないものに襲われているというのが本当に怖かった。
 
 すぐにでも病院に駆け込みたかった。薬か何かでどうにかこの不安な気持ちを押さえつけてほしかった。それに、もしかしたら、もしかしたら僕の思い違いかもしれない。ただ、疲れていただけかもしれない。そんな淡い期待とか、不安な気持ちを行ったり来たりしていた。
 
 あいにく、僕は地元の離島に帰省中。土日に病院はやっていない。症状がでたのが金曜日の夜中なのでどうにか二日間を自力しのがなくてはいけなかった。あの土日は僕にとっては人生で一番長い土日だった。

朝起きると涙が出た。起きたら今、自分に起きている問題に立ち向かわなくてはならない。ずっと寝ていたかった。けど、不安のせいでほとんど寝れない。現状に目を向けるのが嫌すぎるし、じっとしていると悪い考えばかりが浮かぶ。

電話では症状について伝えたが、出先から帰ってきた親の前で変な様子も見せたくない。案外平気だと示したかった。だから、とにかく運動したり、山に登ったりして気を紛らわせていた。でもさすがに体力にも限界があるし、田舎なので夜は真っ暗だ。夜はおとなしく家にいるしかない。
 
 それでもどうにか気を紛らわせたくて、友達に電話をして不安な気持ちを抑えつけていた。そうして、長すぎる土曜日をクリアした。が、また日曜日も同じように耐えないといけない。苦しくて涙が出た。
 
 日曜日も運動をして、山に登った。山に登ると少し落ち着くと分かったからだ。ぐるぐると考え事をしながら、どうしようどうしよう、なんでこんなに苦しいのかな、不安なのかなと考えていた。

ふとした瞬間だった。

なんだか自分で自分の首をしめている現状がなんだか馬鹿らしくなった。自分で勝手に不安になって、自分を苦しめている。金曜の夜以降、パニックの症状はでていない。出るかもしれない、自分は変な病気かもしれないという不安だけが、今の僕を苦しめていた。

そうやって俯瞰して自分の現状を見たときに「もう、受け入れてしまおう。淡い期待なんか捨てて、どういわれても僕はこの痛みを受け入れてあげよう」そう思った。

すると、胸にあった荷物がスーッと降りた。今まで何事もなく健康に生きてこれた自分との比較をやめたからだと思う。もちろん不安はあるものの、夕方からは、妙に落ち着いた気持ちで過ごせた。

今まで出ていた症状にただ、名前がついただけ。名前がついたのが、2日前というだけ。受け入れる勇気がなくて、あたふたしていただけなのだ。
 
 翌日、病院へ行くと、診断結果はパニック障害と解離性障害だった。別にショックではなかった。強がりではない。前日に受け入れたからだ。まあ、そうだよねって感じ。
 
 
 何か現状が悪くなったときに、すぐに受け入れることは怖いし、受け入れることが難しいと思う気持ちは本当に分かる。向き合わないで曖昧にしておきたい。症状の原因を誤解していた面があるとはいえ、僕も5、6年は曖昧にしていた。

でも中途半端が一番よくないのだ。受け入れれば次に進める。

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