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日本代表の検討~金メダルからベスト8へ~

はじめに

現在の日本サッカーは、歴代でも高い水準にあると言って差し支えない。

”至宝”久保建英、”クラブの宝”冨安健洋、リバプール→セインツのミナミーノ、ドイツ最強デュエリスト遠藤航、戦術級FW大迫勇也、クラブ年間MVP鈴木優磨、ベルギー強豪の主力伊東純也……。Jリーグでも、三苫薫、中野伸哉、大迫敬介、沖裕哉といった新鋭が台頭している。

森保一も監督として高い手腕を発揮している。親善試合の結果や一部子飼いの選手の招集が非難されているが、標榜する目標の実現への過程は妥当で、選手の伸びを見るに指導力にも優れている。森保監督については後述する。

直近のイベントは東京五輪のグループリーグ抽選会だ。日本は”死の組”に割り振られて、だからこそ楽しみである。

歴代最強と呼ばれるユース代表がどんな結果を残してくれるのか。そしてカタールW杯で悲願のベスト8進出を成し遂げるのか。

サッカー日本代表について、様々な観点からアプローチし検討したい。

なおあらかじめの注釈だが、当記事はコラムやデータの統計ではないし、私はジャーナリストでもライターでもない。これは正解でないのは言わずもがな、提言と呼ぶにも物足りない代物である。
あくまでも趣味の延長線上に過ぎないことを了解していただきたい。

1.森保体制の通信簿


①発足 ~ロシアW杯の経験値~

2018年ロシアW杯は批判に始まり称賛に終わった。
ハリルホジッチ電撃解任の尻拭いを押し付けられた西野朗は即戦力を重視。香川真司、本田圭佑、岡崎慎司のように世界の頂点を知る選手や、長谷部誠、長友佑都、吉田麻也のような世界を相手に戦う選手、そして柴崎岳や大迫勇也といった戦術クラスのプレイヤーを招集する。

戦術のキーマンには柴崎岳が選ばれた。
2016年にレアルを追い詰め、2017年春に不安障害を乗り越えてテネリフェ島を席巻、夏にヘタフェでバルサ相手のゴラッソを奪い、そしてジェラール・ピケに削られた影響で出場機会を減らした。ある種”干されていた”天才パサーが、西野朗のメインウェポンに選ばれたのである。
彼のロングパスは効果的だった。原口の走力を活かし、乾のテクニックを引き出し、大迫に数多くの選択肢を与えていた。
弱点である守備面は長谷部誠がカバー。加えて両サイドにはダイナモ原口と守備センスに優れる乾がいる。後方には鹿島時代の同期、昌子源。
これほど待遇で整備された柴崎システムは、コロンビアを打ち破りセネガルに食らいつきベルギーを追い詰め、そして敗れた。

柴崎岳は森保体制発足後も2020年まで主力であり続けた。相方にはディフェンスファイター遠藤航、サイドハーフには原口が続投される他に快足の伊東純也や運動量豊富な南野拓実……それだけ柴崎のロングパスは重宝されていたいたのだ。そしてクラブでの不遇が続くほどにロングパスの輝きは褪せていった。

さて、ベルギーでの敗戦後に西野朗はこう言った。

「何が足りないんでしょうね」
https://www.soccerdigestweb.com/news/detail/id=43480

魔の30分に足りなかったものとは何か。例えば……
・フェライニとぶつかり合えるファイター
・本田圭佑に「蹴るな!」と言えるフィールドプレイヤー
・デブライネのパスを封じられる選手
・シャドリに追い付ける走力
・3点目を先に奪えるアタッカー
・流れを引き寄せる”個”の力
などなど、挙げればキリがない。

その中でも「流れを引き寄せる3点目の可能性」について、決定的なモノを持っている選手がいた。

親善試合で出色の活躍を見せた中島翔哉である。

西野朗は彼について「ポリバレントではない」と選外の理由を話していた。今でこそ結果論で好きに言えるが、当時の中島は代表での定着度はまずまず。
それほどの出場時間でありながらも守備の軽さは露呈していて、西野はそれを危惧したのだろう。結果的に彼の招集外が、ベルギーに屈する形で表れた……のかは定かではない。

しかし、もしあそこで強気に戦い続けられるアタッカーがいたら。3点目を奪うポテンシャルが1/11でもあれば。歴史は変わっていたかもしれない。とはいえ、スペシャルなアタッカーがいなかったのではない。少なくとも西野が期待を寄せていた選手はいた。

ガンバ大阪ユースの最高傑作、宇佐美貴史。
しかし宇佐美はポーランド戦に出場しており、思うような結果を残していなかった。あの一戦で西野の慧眼は彼のイマジネーションが失われていることを見定たのだろう。だからこそベルギー戦でも出せなかった。

森保体制が発足したとき、中島翔哉は当然のように名を連ねた。
黄金の2列目には南野拓実や堂安律も選出。ワントップの大迫勇也こそ変わらないものの、とにかく森保一は攻守に渡っての貢献度よりも分かりやすい攻撃力を重視したのだ。
顕著なのはウルグアイを4-3で破った試合である。スアレスやカバーニを欠いていたとはいえ、極東の小国に先生されたウルグアイが「負けてもいっか」と思うはずもない。本気の南米を相手に、”三銃士”あるいは”NMD”は4点を奪ったのである。同時に3失点もした。

さらに時を重ねて、攻撃力は厚みを増す。
伊東がベルギーで躍動し”至宝”がプロリーグで躍動、レアルへ買い取られる。
その後も鎌田大地、鈴木武蔵、鈴木優磨、古橋享吾、三苫薫とアタッカーの活躍が続く。
日本の攻撃力は進歩しているはずだ。

ではディフェンスは?

コロンビア、セネガル、ポーランド、ベルギーとW杯では全ての相手に得点を許している。
守備力に欠ける柴崎が中枢にいたから必然ではある。しかしベスト8を阻まれた14秒を思えば、「仕方ない」と諦めきれるものではない。
日本が圧倒的に後手を踏んでいたのは身体能力だった。空中戦、フィジカル、走力、スピード。そういった単純な面での勝負を落としていたのだ。
14秒のカウンターにおいて、自陣前方でデブライネと対峙したのは山口蛍だった。Jリーグ屈指の掃除屋をもってしても、あのカウンターを防ぐことは不可能だった。

森保体制が発足したとき、ディフェンスの陣容には2つの変化があった。
ウルグアイを破ったあの試合、ボランチには遠藤航がいてCBには三浦元太がいた。とりわけ光ったのは遠藤航で、日本の弱点であったエアバトルをことごとく制していた。

ロシアで足りなかった攻撃と守備を、森保ジャパンはカバーできているはずだ。
もしいまベルギーと戦うとどうなるか。
断言はできないが、あの日以上の善戦を見せてくれるだろう……

果たして本当にそうだろうか?

ロストフで日本に足りなかったもの。
それを得られたと考えるのは、まだ早計かもしれない。

②逃した王座 ~NMD/三銃士の功罪~

代表監督に着任した森保一がメンバー発表をしたとき、リストにはフレッシュな名前が並んだ。
堂安律、南野拓実、中島翔哉。
満を持しての選出に日本中が湧いていた。

当初の親善試合はチリやウルグアイといった強豪が並んでいて、北海道地震の影響でチリ戦は中止になってしまったが、ウルグアイ戦は熱狂のままに勝利を奪取。
世界水準のイマジネーションを持つ中島、美しいシュート技術を持つ南野、果敢な仕掛けを見せる堂安はたちまちアイドルになった。メディアは「三銃士」「NMD」ともてはやす。

ワントップに大迫勇也がいたのも大きかった。
2021年現在もそうであるように、大迫にポストを任せて二列目が果敢に仕掛けるスタイルは、無類の破壊力を発揮する。

この前衛は世界を驚かせた。

ワールドワイドな勢いのままに望んだのが2019年アジアカップである。

あまりに痛いニュースが飛び込んできたのは大会の直前であった。

攻撃の主軸を担っていた中島翔哉が負傷離脱。

追加招集の乾(当時ベティス)は、スペインでも通用するテクニックを持つものの、中島ほどの発想力と決定力は持っていない。
そもそも森保監督が掲げる命題の1つは世代交代。起用されたのは原口元気だった。

大会が始まり、やはり攻撃は行き詰まる。
大迫に預けても二列目の攻撃は単調化。柴崎のロングパス+原口の走力は徹底的に警戒され、あろうことか初戦は先制点を許してしまう。
結果的に大迫の2得点などで勝ったものの、ウルグアイを打ち破ったような攻撃は見られなかった。大迫に預けての”タメ”から2列目以降の選手が攻め上がるという、発足以降から続けてきた攻撃の型は機能していなかったのである。

さらに大迫勇也が負傷。
これで日本は「中島のアイデア」と「大迫のタメ」という2つの武器を失った。
ワントップに起用された北川航也は精彩を欠き、武藤嘉紀も得点が遠のく。アジアカップ予選は綱渡り状態が続いた。

それでも地力で勝って決勝トーナメントへ進出。
サウジアラビア相手に堅実な試合運びで勝利し、曲者ベトナムには堂安の打開力でPKを奪取。そして準決勝ではイランの伸びた鼻をへし折った。

このイラン戦が象徴するように、アジアカップでは大きな収穫があった。

冨安健洋。
後に20-21シーズンフィールドプレイヤーとしてセリエA最長出場時間を果たす守備の要。サウジアラビア戦でセットプレーから得点し、イラン戦ではアズムンを完封した。
優勝候補の一角であったイランが慢心していたことは間違いないが、精神的な優位ほど心強い味方はない。格下相手が警戒していた柴崎―原口ラインも、イランはあっさりとパスを許し失点につなげた。

さて、決勝のカタール戦である。
日本の恩師ザッケローニ率いるUAEを打ち破ったカタールは強かった。帰化選手が多いのに加えてチームの主力は多くが同チーム。個としても組織としても日本を上回っていた。それは認めざるを得ない。

とはいえ、言い訳がないこともない。
守備の要であった遠藤が負傷離脱していて、柴崎の守備力をカバーできる選手がいなかったのだ。

つまり森保ジャパンは、大会前までに調整しておいて切り札を、攻守両面において欠いていたことになる。出鼻を挫かれた、といっても過言ではない。

結局アジアカップは準優勝で終わり、森保監督は一気に批判を浴びることになる。
決勝戦で打開策を講じられなかったのは事実かもしれないが、かねてより準備していた戦術のキーマンがいなかったのも事実である。

それにポジティブな面もあった。ボランチの最適解は柴崎&遠藤であること、CBに冨安が台頭してきたこと、中島がいない中でも南野は動き回っていたこと……世代交代は着実に進んでいた。

もう1つだけ、日本が欠いていたものがある。
GK中村航輔だ。

当時柏レイソルで期待の若手として頭角を現していた中村は、親善試合でも度々招集されていた。
権田修一、シュミット=ダニエル共にパフォーマンスは低調で、若手を重んじる森保監督が中村を起用した可能性はある。キーパーが変わることでチームの雰囲気が上向きになることは往々にして起こる。
もし守護神の新陳代謝が行なわれていたら……。少なくとも現在まで続く権田・シュミット時代は揺らいだはずだ。

③至宝の参戦 ~天才と天才~

2019年6月9日。宮城のサッカースタジアムに歓声が響き渡った。

バルセロナユース出身”日本の至宝”久保建英のA代表初出場である。キリンチャレンジカップ、エルサルバドル戦でのことだった。
中島翔哉と共にピッチ脇に立った久保は、投入されてすぐに相手サイドを切り裂いて湧かせる。当時Jリーグ首位争いを繰り広げていたFC東京の中心選手であり、クラブでの勢いそのままに代表戦でも魅せた。

日本中が歓喜した神童は順当にコパアメリカの遠征メンバーに選出される。
そもそもコパアメリカは、「A代表でも通用する東京世代」がコンセプトである。
久保建英をはじめ、マンチェスターCに青田買いされた板倉滉や当時大学生だった上田綺世が選出。そして彼らを支えるベテランも呼ばれ、GKの川島永嗣やFWの岡崎慎司が帯同した。

コパの前に話しておかなければならないトピックがひとつある。アジアカップ後に喧伝されるようになった、日本代表の「”脱・大迫”問題」である。
ロシアW杯以降から顕著になった大迫依存は、アジアカップで限界を迎えた。メディアが執拗に取り上げた……と言えるかもしれないが、森保監督の起用を見るに解決策を模索していたのは容易に推測できる。  
そして森保監督は実際に新しい解を見つけた。

ひとつは永井謙佑をワントップに据えた高速プレス戦術。このスピード戦術の志向によって、伊東純也は代表に定着していった。
もうひとつは鎌田大地をワントップに据えたテクニカル戦術。鎌田の巧みなボールコントロールと南野の攻撃センス・中島のアイデアを掛け合わせた攻撃スタイルだ。

これにより日本は攻撃のスタイルを複数有することができ、コパアメリカ後のW杯2次予選でも上記のパターンが軸になっていく。

話をコパアメリカに戻そう。
2分1敗の予選敗退に終わったコパアメリカは、良くも悪くもたくさんの収穫があった。
ポジティブな面では……
・攻撃面で三好康児が非凡な存在感
・久保建英が南米のA代表相手に躍動
・守備の要であることを再強調した冨安健洋
・クラブではパッとしない柴崎岳も代表では抜群のパフォーマンス
ネガティブな面では……
・技術力を欠いた前田大然
・決定力を欠いた上田綺世
・安定感を欠いた板倉滉
・いまひとつ噛み合わない中島翔哉と久保建英

特に深刻だったのは、中島と久保のミスマッチ。天才の共演はことごとくチャンスを潰した。
元々互いが味方を”使う”タイプ。日本に多い”使われる”タイプではない。なまじテクニックがあるため、ベストなタイミングを待てる。待ててしまう。そして互いにオフザボールの質はイマイチ。常にスペースに出したがり、常に足元で受けたがる。共演は競演に終わった。
守備の強度にも問題があった。コパアメリカ中は柴崎が好調だったため目立たなかったが、彼らの守備意識は極端に低く、それは時としてチームの弱点となる。
前線からのプレスと狭い局面でのプレスバックを求める森保スタイルに、中島と久保を同時に使うのはミスマッチと言う他なかった。

以降彼らは代表で一度も共演していない。
2人とも海外選手を驚かせる程の技術があるだけに、飼い殺しにするのはもったいない。
https://twitter.com/YutoNagatomo5/status/1110525485090525185?s=20

これは仮の話。
アジア最高の堅守を誇る現在の日本であれば、天才のコンビネーションはもう1度見られないだろうか?
前線にはワールドクラスのオフザボールを持つ南野や上田がいる。前田大然や浅野拓磨をひたすら走らせるのもいい。中央には時空を掌握できる鎌田大地がいる。あるいは大迫を配置して、2列目の創造性を高めるのも一考の価値ありだ。
とにかく、彼らの持つ天才的な発想力はこれまでの日本になかった。攻撃の質がベースの部分で異なるのは一目瞭然。世界と戦うことを視野に入れるならば、中島と久保に合わせるチームでなければならない。

コパ・アメリカを終えた数日後、久保建英はレアル・マドリードへ移籍した。

④難航する世代交代 ~圧巻の二次予選、最終予選へ~

カタールW杯二次予選は大荒れだった。
韓国やUAEがジャイアントキリングに泣き、アジアサッカーの底上げと頭打ちを痛感する羽目になる。

一方の日本は全勝。
格下相手とはいえ堅実な試合運びで終えた。
中でも冨安・吉田のイタリアコンビは鉄壁で、両SBにはマルセイユの長友と酒井、そしてドイツで存在感を高める遠藤がボランチに配備された。

さらに橋本拳人や安西幸輝といった新戦力も試用。森保監督は母数の拡大を度々口にしてきたが、新たな人材の発掘は着実に進んでいるように見えた。

しかし実態は異なる。
とりわけ両サイドバックとボランチの人材難は深刻だった。

まずはサイドバック。
酒井宏樹・長友佑都と実力実績共に圧倒的な名手の後を、中堅~若手は追従していなかった。安西の他にも室谷成や中山雄太を器用しているが、結局は年長者2人に並び立つ存在とは言えなかった。
安西にはスピードと推進力という武器がある。しかし老化によって長友に欠けてきた守備力を補えるかと言えば、答えはNoである。むしろ守備が課題という面で、長友と変わらない。

そしてボランチ。
極上のパスセンスと不安定なコンディションを持つ柴崎は、たびたび批判の的になってきた。実際に凡ミスや守備面で不安を残す場面は散見されるものの、「じゃあ誰を使う?」となったときに絶対的な代役が見当たらない。
2次予選で起用された橋本も、ボール奪取面では遠藤に後れを取りパスセンスでは柴崎に及ばない。チームとしての総合力に暗雲が立ち込めていた。

そんな矢先に開催されたのがE-1、東アジアの頂点を決める大会である。

ここで日本はようやく”舐めプ”をした。
代表ウィークに指定されていない期間のため、必然的に海外組は呼べなくなる。
招集されたのはJリーグ選抜とさえ呼べないチーム。アンダー世代の育成も見越した、若手主体の構成であった。中国・香港には勝ち星を上げたが、韓国相手に脆さが出た。

収穫が無いかと言えば必ずしもそうではない。相馬勇紀はサイドを切り開いたし、大島僚汰はレギュレーション違反級の大活躍。光るものはあった。
しかし例えば、両サイドバックの新星が見つかったとは言えないし、クラブで存在感を増していた上田綺世がユニバースシードで見せたような活躍をしたとは言い難い。
何よりその年のJリーグMVPだった仲川輝人の不発が痛かった。

代表がイマイチ盛り上がらないまま、世界はコロナ禍を迎える。ナショナルチームはおろかクラブも活動停止を余儀なくされるが、2020年の開幕は日本サッカーにとっては明るい兆しであった。
南野拓実のリバプールへ移籍し、久保建英がマジョルカで大活躍を見せる。

世界的な注目を集めながら、やがて10月11月に代表活動が再開される。
海外組のみの招集となった日本代表は、アフリカ勢との2連戦を1勝1分で終える。とりわけ安定感のある守備陣が高い評価を受けた。
しかしそれも盤石ではない。2020年11月に無観客で開催されたメキシコ戦は0-2の敗戦。強豪国相手ではまだまだ太刀打ちできない、実力の差を見せつけられた。W杯でベスト8を目指すにはまだまだ物足りないだろう。

とはいえ一概に守備陣の責任とも言い切れない。再三の決定機を逸した攻撃陣にも目を向けるべきである。
リバプール移籍で注目されていた南野拓実は不発、久保建英も左サイドでの起用だったとはいえ存在感は希薄、クラブでは好調だった鈴木武蔵も決定力を欠いた。

なお、久保建英の左サイド起用が批判に晒されるが、私はそれで問題ないと考えている。久保がスペシャルワンの可能性――19‐20シーズンでメッシに次ぐドリブル数を誇る技術を持っているのは、世界中が知っている。
であればこそ、彼はプレーの幅を広げるべきなのだ。右サイドで足元にもらった場合にのみ活躍できる……というのではワールドトップクラスにはなれない。まだまだ神童、誰よりも時間のある選手だ。じっくりと多くの経験値を積めばいい。

さて、W杯2次予選である。
結果はご存知の通り快勝。手放しに称賛したいところだが、メキシコに敗北した試合から大きな変更は無かったことを忘れてはいけない。
果たしてもう1度強豪を相手にして、安定した勝率を誇れるだろうか?

なにか大きな収穫があったかと言えば、山根視来、小川諒也、守田英正といった新規戦力の発掘ができたこと。そして鎌田、伊東が絶対的な存在として君臨したことか。
十分と捉えるか不十分と捉えるかは……難しいところだ。

もうじきオリンピック、そして最終予選が開幕する。
2020年代に入っての日本サッカーは、ハッキリ言って順調だ。だからこそ警戒しなければならない。どれだけ快勝を積み重ねたところで、相手は格下ばかりだった。


2.代表メンバーの検討

①GK・DF編

GK

森保監督が苦しんでいる課題のひとつが、A代表で主力に相応しい守護神を据えることだろう。
現在はシュミット=ダニエルと権田修一の二強時代だが、どちらも目を見張る活躍を見せているとは言い難い。若いGKが育っている現状はあるものの、カタールW杯を見据えたとき、果たして世界的な名手が育っているだろうか。
川口能活、楢崎正剛、川島永嗣。偉大な先達に続く守護神の登場が望まれる。

権田修一
真面目な性格が災いしてオーバーワークに悩まされた苦労人。満を持してポルトガルへ旅立ったものの、定位置を掴むにはいたらずエスパルスへ帰還。Jリーグでスタメンを張っている。安定感のあるセービングが特徴。長い間森保ジャパンの正守護神を任されていたが、ここ最近は確固たる地位を築いているとは言い難い。
「キャッチしろよ!」と非難されることもあるが、取りこぼしてピンチを迎えるよりも弾いた方がよっぽどマシである。とはいえ世界の一線級で戦えるかと問われれば首を傾げざるを得ない。

シュミット=ダニエル
シントロでは正守護神に位置しているものの、チームの失点は多い。一概にシュミットの責任と言えない場面も多いが、そこを強引に守り切ってこその守護神である。
足元の技術と高い身長に定評のあるキーパー。世界水準の体格はたしかに武器だが、守護神と呼ぶに相応しいセービングには欠ける。1対1の局面で防ぎ切れるようになると、頼もしさが一気に増すだろう。
https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/football/wfootball/2019/12/14/_split_gk/index.php

中村航輔
森保体制発足当時は期待の若手だったが、気付けば中堅に差し掛かる年齢に。権田に続いてポルティモネンセで修行しているが、まだ出場機会を得られていない。ガッシリした体格と安定したキャッチは魅力的だし、なにより果敢な飛び出しができる。チャンスさえ掴めれば……。
個人的に負傷でアジアカップに出られなかったのがかなり痛いと思う。もしあそこで中村が出ていれば、守護神争いは変わっていたかもしれない。思えば、あそこが森保監督が世代交代に出遅れた転機であった。

西川周作
エデルソン並みのキックを持つ浦和の守護神。セービング技術は権田らに劣るが、オプションとしてはアリかもしれない。とはいえ年齢が気になる。今シーズンの好調ぶりが続けば、W杯に帯同するかもしれない。

大迫敬介
期待の若手筆頭。大柄な体躯とあどけない顔立ちから繰り出される堅固なキャッチには光るものがある。コパアメリカに際してはチリ相手に4失点を喫してしまった。焦らず着実に実績を積み上げてほしい。

谷晃生
大迫に代わってアンダー世代の守護神に定着した感がある。データによると21シーズン最も高いセーブ率を誇っているという。直近の代表戦ではなかなか見せ場が訪れないものの、クラブでの安定感は抜群である。ガッシリした体躯を持っていて、コーチングも明るい。仮に代表に若手枠があるとすれば、今後は谷が優先的に埋めることになるだろう。

前川黛也
日韓戦・モンゴル戦にて代表初招集。ACLではPKを与えるミスもあったが、圧巻のパフォーマンスを見せていた。ポドルスキとかビジャとかイニエスタとかとシュート練していたらそりゃ上手くなるのも当たり前である。
21シーズンはここまで主力に君臨している。それでも代表で出番がなかったということは、トレーニングでのコンディションに難があったのだろう。神戸特有の前に出過ぎる悪癖を改善できるか。※ここでいう改善は「前に出るな」ではなく飛び出るからには防ぎ切れという意味である

CB

世界と渡り合えるポジションのひとつ。間違いなく選手層はアジアNo.1。イタリアで活躍する冨安・吉田をはじめ、フランスの植田にオランダの板倉といった”戦える”人材が揃っている。
現有戦力は控えを含めて充実している。アビスパ福岡で指導する元代表井原正巳のおかげだろう。最後尾がこれだけ充実していれば3バックのオプションも手堅い。
だからこそメキシコ相手に崩壊したことが悔やまれる。ラウール・ヒメネスやイルビン・ロサノを跳ね除ける守備力を発揮しなければ、W杯でベスト16の先へは進めまい。

冨安健洋
ボローニャの宝。体格に優れるが、それ以上に俊敏性とサッカーIQが高い。右サイドバックを任せられることも多く、その際はサイドを駆け上がり起点のパスを放る攻撃性能を発揮している。最近は弱点だった対人戦の強度も改善されるなど右肩上がりに成長中。
森保体制の発明のうち、おそらく最も偉大なのはこの男だろう。なにより特筆すべきは東京世代という圧倒的な若さ。これから十数年間は冨安が日本の門番を務めるはずだ。右サイドバックを務めることもできるが、わざわざそこに起用するかは悩ましいところだ。

吉田麻也
長らく代表の門番を務めているベテラン選手。プレミアでぶつかってきた対人の強さはイタリアでも健在。C・ロナウドら世界最高峰のアタッカーと戦っている。代表ではキャプテンとして精神的支柱の役割も果たしている。長谷部誠という偉大な先達の意志を継いでほしい。
とにかく勝負強さが売りで、試合終盤には前線でパワープレイに走ることもできる。冨安の台頭ももちろんそうだが、吉田が安定したパフォーマンスを発揮し続けたのも日本が堅守を誇る理由だ。守備時のポカも最近は減少気味。風格を増したアジアの壁として、東京五輪にOAで出る。
実はロングフィードが抜群に上手く、最後尾からの長いボールがたびたびビッグチャンスを呼び起こす。そしてフリーキックも蹴れる。

板倉滉
オランダで評価を高める若手株。ここまでフローニンヘンで全試合出場中。東京世代では主力として活躍していて、187㎝と十分な体格を活かした強度を武器としている。
ボランチ起用にも応えられる守備のスペシャリスト。コパアメリカではバタバタと忙しない印象だったが、場数を重ねるごとに安定感を増している。セットプレーからは打点の高いヘディングシュートを叩きこむことも。

植田直通
対人戦で無類の強さを誇る。ベルギーでは大人の事情によってハブられていたが、フランスでは一気に主力として活躍。フィジカルとヘッドの強度は尋常なく強い。ボールテクニックはあんまり上手くない。どうしようもない怪物タイプのアタッカーが出てきたとき、植田を投入することで対応できるだろう。もしまたフェライニが強襲してきたなら、そのときは彼に託そう。

昌子源
CBとしての総合力No.1。ただし負傷癖あり。ロシアW杯では唯一の国内組として活躍。コロンビア戦のセットプレーでは「飛ぶなよ?絶対に飛ぶなよ?」で飛んでしまうなど、海外での不慣れさが出た。とはいえ、全体としては安定したパフォーマンスだったと言える。
なにより昌子はメンタルが強い。ロストフの14秒で唯一あの長い長い数十メートルをスプリントしていたあの強さ。それが必要なときは絶対に来る。だから昌子は外せない、と思う。

谷口彰悟
バカ強い川崎フロンターレのバカ強いディフェンスリーダー。相方はバカ強いジェジエウで、リーグ屈指の堅守を発揮している。対人も強く1対1にも負けずフィードも正確。どの能力も高水準にある。
このクオリティで代表に招集されないのは、冷遇されていると言わざるを得ない。どうやら各クラブからの招集人数を絞っているとのことで、実際にCBが飽和しているが……。なんにせよ優秀なディフェンダーであることには違いない。
直近の代表戦ではボランチ起用も増えている。そこまでボランチの人材が枯渇しているとも思えないが、板倉と並び上背のあるスイーパーとしてのオプションにはなり得るかもしれない。強い上に上手いのがいい。

畠中慎之助
森保体制発足して以降招集され続けている。気が付けば中堅層になっている。タイプとしてオールラウンダーといった感じだが、やや安定感に欠ける印象。激化するポジション争いに今後も食らいついていけるだろうか。注目である。

SB

日本の両サイドバックはハリルジャパンの頃から酒井・長友の両翼が君臨してきた。そして彼らに変わる絶対的な存在は未だ現れていない。日本のアキレス腱のひとつと言えよう。
スピードタイプの内田篤人とパワータイプの酒井宏樹が、たびたび歴代最高右SB論争の的になる。ワールドクラスのサイドバックが健在なのは頼もしい限りだが、若手や控えの突き上げはあってほしい。室谷成、山根視来の今後に期待である。
一方の左SBはより深刻だ。不屈の心で何度も何度もクラブの主力に返り咲く長友は確かにタフだ。だからこそ彼に甘えてはいけない。それに長友とて衰えは見られる。新たなオプションを探さなければならない。安西という絶対的な個性を持つ選手がいるものの、より安定感を求めたいところだ。

酒井宏樹
ネイマール・ムバッペと対峙するマルセイユの右翼。最近は出番を減らしているが、フロリアン・トヴァンは酒井と組んでいるときが一番活き活きとしている。うっちー曰く「サイドバックに求められるシンプルな動きをシンプルにこなせる」らしい。
対人守備で負けず、サイドを駆け上がってクロスを上げ、ライン際の攻防で守り切れる。ここまで頼もしい選手が日本にいるのは心強い。思えば内田→酒井と安定感のある選手がい続けていたことで、ある種の慢心があったのだろう。とんでもない怪我でもしない限り、今後も酒井の一強時代は続くだろう。カタールまではそれでいいが……。

室谷成
攻撃センスの高いハノーファーのサイドバック。Jで示していた攻撃力を遺憾なく発揮し、ドイツでも地道にアシストを重ねている。クロスの精度は一級品なのだ。クラブのステップアップがあるかは不明瞭だが、手堅い活躍を続けていれば立場を確立できるだろう。
欲しいものといえば守備の強度だろうか。アフリカ系の選手とぶつかり合っても負けない強度が身に付くとなおよし。酒井にはそれがあるのだから。

山根視来
頭脳派サイドバック。フロンターレで主力を張っており、外でも中でも攻撃に絡める器用さを持つ。日韓戦で挙げた先制点がまさに象徴。ゴール前でプレーできるのは、緻密な戦術を志向する上で大きな武器となる。
実力的には海外でも十分にやれそうなレベルである。できれば早い段階で海外に慣れてもらいたいが、フロンターレで戦術理解度を伸ばすのもアリだろう。欧州や南米の選手と渡り合えることが望まれる。

菅原由勢
AZで愛される若いサイドバック。キック精度が非常に高く、得点やチャンスメイクに絡んでいける。ぜひアレクサンダー=アーノルド的なスタイルを志向してほしい。
まだまだ世界的なアタッカーとやり合えるレベルではないものの、絶対的な得意とひたむきな吸収性と愛されるキャラクター性がある。将来的に伸びるのはこういう選手だろう。カタールまでにどれだけ完成するか。

長友佑都
イタリア→トルコ→フランスを渡り歩いてきた名手。体幹のスタミナがえげつないのは言わずもがな、不屈の闘志が大きな武器である。序盤は言いたい放題にされていたマルセイユでも、今ではすっかり主力である。この執念には驚かされた。
とはいえ長友もいい歳である。彼が40歳になっても左サイドを往復させるのだろうか? 望まれるのは左SBの台頭である。欲を言えば守備に安定感のある選手がいい。

安西幸輝
強い推進力を持つスピードスター。ポルティモネンセでは高い位置を任せていることから分かる通り、攻撃力が高く守備力が低い。能力の数値でいえば代表クラスにあるだろうが、数値の内訳が戦術的に適しているかというと疑わしい。
快足を活かしたプレスバックには目を見張るものがある。とはいえ現状はベンチスタートの方が活きるだろう。まずはプレーに安定感を。

中山雄太
元はボランチの選手だが、欧州遠征では左サイドバックにコンバート。そつのないパフォーマンスを見せていた。とはいえ個の力は弱く、正面切って一対一の局面になったらまずぶち抜かれてしまう。
無難でシンプルな選択肢を取り続ければ安定感のある選手だが、不用意に魅せたがるのもマイナスポイント。代表ではたびたびキャプテン・副キャプテンを任されており、人柄は評価されている模様。このままどっしりと構える選手に育ってほしい。

旗手怜央
個人的にネクスト長友の最右翼である。長友と役割は異なるものの、新しい形として、旗手に掛かる期待は大きい。とにかくポリバレント。複数ポジションをこなせることは武器になるが、FWからSBまでかなりの高水準でこなせるのはハッキリって異次元である。
今後は右に山根で左に旗手の川崎コンビを中心に据えてもいいかもしれない。彼は極めてサッカーIQが高い。変幻自在にポジションを移し、ときにライン際に攻防に走り回り、ときにバイタルエリアでチャンスを生み出し、ときにゴール前でラストパスを送り込む。酒井・長友のようなシンプルな動きを求められるSBから、複雑怪奇に動き回るSBに変化する時代かもしれない。

MF編

ボランチと二列目の”ミッドフィルダー”は伝統的に日本人の得意なポジションである。中田英寿や香川真司といったワールドトップクラスの日本人は皆ここにいた。例に漏れずいまの日本もここは激戦区である。
今回はボランチとサイドハーフに分けるものの、二列目の真ん中を”トップ下”とするか”セカンドトップ”とするかは諸説である。その辺りは起用する選手によって変わってくるだろう。3バックを志すなら、シャドーの役割を見越したセカンドトップの働きを任されそうなものだが。

ボランチ

日本は代々ボランチは2人で組んでいて、それぞれに明確な役割があった。すなわちディフェンスを助けるアンカーと攻撃のタクトを担う司令塔である。前者は長谷部誠、後者は遠藤保仁を浮かべてもらうと分かりやすい。
以前までの森保体制もそれは変わらず、絶対的な司令塔の柴崎岳を中枢に据えた上で相方のアンカー(あるいはスイーパー)を探す形であった。その筆頭格が遠藤航であり、橋本拳斗や板倉滉が続く形となっていた。
転換の兆しが見えたのが日韓戦である。ロシアW杯以降初めて未招集となった柴崎岳に代わり、ボランチの主力を務めたのが遠藤航と守田英正である。このコンビは凄まじい堅守を発揮しただけでなく、司令塔の不在を感じさせないゲームコントロールを行なっていた。もはや柴崎がいなくても、パスは捌けるのである。ドイツ屈指のチャンスメイカー鎌田大地の存在も大きい。ボランチから気の利いたパスを出す必要がなくなったからである。
なんにせよ、チームのスタイルには少なからず変革がある。それに伴って求められる資質も変わるのだろう。今後の戦術に注目したい。ただひとつ確かなことは、柴崎のパスセンスは強大な武器であることだ。

柴崎岳
天才司令塔。レアルマドリードを追い詰め、テネリフェ島を湧かせ、バルセロナを黙らせ、ロシアで躍動し、そしてスペインで燻ぶっている。プレースタイルについて今さら言う必要もあるまい。局面を変えるロングパスは垂涎もので、守備の強度も意外に高い。ただしデュエルに弱い。
試合勘、試合勘、と口を酸っぱくして言われるが、実際に柴崎の試合勘が衰えていた場面を見たことがない。ただしコンディションにムラがあるのは事実である。せめてスペイン2部では無双してもらいたい。それにしても、かつては適応障害に悩まされた彼が、今ではスペインのクラブを渡り歩く流浪の民なんてなあ……。

遠藤航
いまブンデスでもっとも強い選手。主観的な感想ではなく統計的なデータである。決して背は高くないが跳躍力が高く身体がブレない。そのため空中戦に滅茶苦茶強い。ロングボールを真ん中に放られても、遠藤がいれば安心である。アジアカップで優勝を逃したのは彼の負傷離脱が要因だった。
かつてはバタバタと忙しないプレーが目に付き、完全に守備要員であった。今ではパスも散らせる万能型のボランチである。戦術の中心になるようなタイプではないが、どんな戦術であっても主力になるタイプである。世界的な名手である。

守田英正
ようやく海外移籍を果たした。最強川崎フロンターレの、かつてに最強ボランチ。とにかくボール奪取能力が高い。ピンチの芽を摘む目立たなくて厄介な選手。しかもミドルシュートを放てる。それが決まる。
日韓戦では遠藤とコンビを組んで呆れるほどの堅さを見せた。クラブでの活躍に期待が集まり、おそらく答えられるだろうと思う。ぜひステップアップを果たしてほしいが、ポルトガルに着実に経験を積むのもありだろう。

橋本拳人
満を持してロシアへ渡ったボールゲッター。守田よりもフィジカルコンタクトの多いスタイル。粗いロシアリーグでは負傷しながらも奮闘しており、力強さに益々拍車が掛かるだろう。おまけに得点能力がやたら高い。フィジカル勝負のロシアで、フィジカル勝利して得点してるのだからタフである。
これから屈強なファイターに成長すれば、パワープレイの補強要員になれる。植田と共に次のフェライニに備えよう。

田中碧
若き天才バランサー。既に世界の舞台を経験しており、まだまだJリーグのみでの活躍だが、既に”海外慣れ”は済ませている。ボランチに求められることは何でもできる。U24アルゼンチン戦では、彼がいるといないで大違いだった。
強いてケチをつけるならば、どちらかと言えばサポート型なので、スペシャルワンではないことか。柴崎の相方にして彼をパサーに専念させるか、遠藤の相方にして攻守のバランスを整えるか。指揮官の手腕次第で輝きが変化する選手だろう。

川辺駿
読みは「かわべはやお」。罠みたいな読みである。そして罠みたいなボランチである。
とにかくインターセプトの精度が抜群に高い。自陣内で深い位置から飛び出してパスカット……は比較的やりやすい。しかしそれを相手ゴール前で行なって得点に結びつけるのだから驚きである。食わてあろうことか自分でそのまま得点することまで可能。ミドルシュートの技術も非常に高い。スイスでの活躍に期待である。

サイドハーフ

激戦区である。最高レベルのポジション争いが繰り広げられているが、世界的に見てもスーパースターはここにいる。メッシロナウドネイマールアザールサラー……このポジションに付くからには世界のトップを目指してほしい。
難しいのは決して攻撃センスだけでなく。守備への貢献も求められること。原口伊東南野が重宝されて中島や久保が出遅れているのはそういう理由だ。

久保建英
日本の至宝。19-20シーズンドリブル数・成功数共にメッシに次ぐリーガ2位。スペイン語版ラ・リーガ公式Twitterのヘッダーに起用。アジア向けの客寄せパンダなどと揶揄される一方、たしかな実力と実績と人気を誇っている。今シーズンの不調だけで判断してはいけない。
左足でボールを持った右サイドの久保建英は、一時的に世界トップレベルの選手になる。あのレベルのプレーができる日本人選手は、歴代でもフリーキッカーとしての中村俊輔と、1~3mでマークを背負った香川真司しかいない。久保建英はアトレティコ・レアル・バルセロナの守備陣を単独で崩壊させるレベルである。20~21シーズンは警戒されて不本意に終わるが、代表では依然として存在感を発揮。
レアルマドリードが許した猶予は残り3年である。カンテラを後悔させるための時間はまだある。

伊東純也
開いてよしカットインしてよしの快足アタッカー。チャンスメイクも得点もできる万能型でゴラッソも多い。守備での貢献度も非常に高く、できることはかなり多い。怪物ひしめくベルギーリーグの強豪で主力を張っているだけのことはある。
中央の選手を活かすこともできるし、中央で潰れている場合は自分でフィニッシュまで持っていくことができる。かつてはジョーカー起用が最適解とされていたが、これほどまでに攻撃力を証明していてはスタメンで使いたくなってしまう。

堂安律
かつてのヤングスター。ドイツ1部のチームで主力を張っている選手がこの注目度って、日本も偉くなったものである。愚直なドリブラーは現状堂安しかおらず、このメンタリティは唯一無二である。ブレない体幹とシュートで終われる攻撃力が魅力。

原口元気
とにかくよく走る選手。左サイドでは魅力的な攻撃力を発揮する反面、右サイドでは守備に奔走する汗かき役に徹する。他のタレントに比べて華が無く、アイデアにも欠ける。しかし他の誰にもない運動量とスピード感のあるドリブルとフィニッシュを持っていて、今後しばらく代表に招集され続けるだろう。右と左でそれぞれ明確な役割を持てることが大きい。

中島翔哉
日本最高峰のイマジネーションを持っている。ポルト移籍以来斜陽を迎えているが、外国人も翻弄する発想力はまだまだ日本に足りない部分である。守備面での弱点はたしかにネックだが、ドリブルパスシュートの全てを高い水準でこなせるのは、やはり魅力的過ぎるオフェンスセンスである。あのフィジカルで南米の選手をけちょんけちょんにするのだから、彼のテクニックがどれほど優れているかが分かるだろう。
中島翔哉を過小評価するべきではない。今後彼が必要になる場面は間違いなく訪れる。かつては中島の発想についていける選手が少なかったが、ここ数年で全体のレベルは上がっている。今こそもう一度中島翔哉を起用するべきだ。

古橋享吾
代表ではサイド起用が多いものの、アタッカーの役割であればほぼどこでもできる。スピードを活かしたプレーはもちろんだが、ボールを持ってからゴールまで短い距離で運べる。シュートセンスに優れるのもポイント。

三笘薫
間違いなく現在最も注目されているJリーガーである。非凡なドリブルセンスの持ち主で、サイドを抉ってから豊富な選択肢で得点に結びつける。秀逸なのが右足アウトサイドの使い方で、凄まじい回転を掛けてディフェンスの間を通してアシストさせる。もちろんカットインから巻いてゴールに放ることも可能。ドリブルだけでない、プラスアルファの技術にこのアウトサイドがあるのは大きい。
懸念点は川崎フロンターレにレアンドロ・ダミアンがいること。あれだけ汎用性の高いストライカーがいればウインガーとしてもやりやすいだろう。センターが頼りないときに三笘単体でどれだけやれるだろうか。まずはオリンピックに注目したい。

③FW編

トップ下
森保体制の発足以後、フォーメーションは一貫して4-2-3-1を採り続けている。ときに3バック(5バック)のオプションがあるものの、ベースは大きく変わらない。必然的に現代サッカーでは化石とさえ呼ばれる、トップ下というポジションが生まれる。
このポジションにはそれなりの歴史があって、発足当初はトップ下というよりシャドウだった。この位置の中心選手が南野拓実であり、大迫に収めさせて南野が飛び出す。この形で得点を積み重ねてきた。南野は適応力に優れ、大迫不在の場合でもプレーし続けていた。
この役割が司令塔に変わったのは最近の話。鎌田大地のテクニックと戦術眼が、本格的にトップ下として変えさせた。大迫に集中していたポスト・タメを鎌田にも担わせ、加えてラストパスの質を向上させる。サイドには得点力に優れるアタッカーが揃っているため、それで問題ない。というより彼らを活かすことにフォーカスしている感まである。
シャドウにせよ司令塔にせよ、このポジションが攻撃で重要な役割を担うのは間違いない。

鎌田大地
いまこのポジションに君臨するプレイヤー、というより日本人で最も能力の高い選手ではないだろうか(”能力の高い”の基準はさておき)。視野が広く、キープ力に優れ、パスの質も高い。メンタリティーにも優れる。
ゴール前での異常な落ち着きで味方の数を揃える。決定的な位置に決定的なパスを送り込む。単独で相手DFを剥がすこともできる。ブンデス5位の主力は伊達じゃない。
ボディバランスに優れ、膝下の降りが速い。しかし何といっても、足裏の使い方が上手い。足元にボールを収めてディフェンダーの出足を牽制し、軽やかにボールを引いて瞬時に反転する。この形で幾度となく角度を変えて、ゴールへの距離感を縮められる。

南野拓実
得点力に優れるアタッカー。最近では左サイドで起用されていて、それでもなお高い決定力を誇る。とにかくボールへの嗅覚に優れていて、ルーズボールへの食いつきが速い。
香川真司のように相手を背負った状態でのターンが上手く、ボールの受け方によっては単独であっという間に得点することも珍しくない。最近の日本代表の得点パターンとしては、中央で溜めて右サイドへ展開して、ゴール前に南野がゆとりをもって飛び込む……という形が最善だと考えている。
とはいえ絶対的なストロングポイントは捉えずらい。シュートセンスやオフザボールなど、強みは多くある。問題なのはリバプールで活躍しているイメージが湧かないことだ。久保や伊東や鎌田のように、絶対的な武器を磨かなければ、クラブでの幸せは掴めないだろう。

江坂任
非凡な視野とパスセンスで攻撃のタクトを振るう司令塔。オルンガを巧みに飼いならし得点を量産させた。オフェンスセンスは素晴らしいのだが、柏レイソルのフロントがアレなばっかりに気付けば浦和レッズにいた。レイソルサポよく怒らないよなあ(絶対怒ってるだろうけど)。
司令塔タイプの2列目としては申し分ない。惜しむらくは鎌田・南野に比べて、自力で得点する力に乏しいことか。

トップ
大迫勇也がスペシャルワンとして君臨してから何年経っただろうか。得点を奪う役割の他に、もう1つ2つの仕事を任せられることが多く、その意味で大迫は最適である。ポストプレーの質が非常に高い。彼と同じ役割を任せられる選手は当分現れないだろう。
であるならば、異なる仕事ができる選手をどのように活かすかが問題だ。ポスト大迫としていま熱いのはオナイウ阿道だ。日本人離れした身体能力を活かして、あり得ない体勢でのシュートやあり得ないスピードでのプレスやあり得ないフィジカルで勝負できる。キルギス戦でのハットトリックは記憶に新しい。

大迫勇也
いまの日本で最も戦術を左右する選手である。冨安や遠藤のようにチームのクオリティを左右する選手はいるが、チームの在り方を丸ごと変える選手は他にいない。
体格で優れる屈強な選手相手でもバチバチと戦い、安定してボールを収めて味方に供給できる。大迫依存とは言うものの、戦術級の選手であるのは間違いない。空中戦も競れるのがいい。大迫にはヘディングのイメージがある。

オナイウ阿道
対してオナイウにはヘディングのイメージはない。ゴール前に力強く飛び込んで得点を挙げることができる。当てる部位は問わない。ゴールに結びつかなくとも、間違いなく相手守備陣の脅威になり得る。それだけの体格と身体能力を持っている。

浅野拓磨
スピードスター。セルビアで得点を重ねるも、代表ではたびたび技術不足を露呈している。DFの裏に抜け出せばそれだけで脅威になるので、パサーを後方に配置すれば輝く。……とはいえクラブでのパフォーマンスの割に代表では物足りない感が否めない。

上田綺世
決定力を非難されたコパアメリカ時点ではまだ大学生。それから鹿島アントラーズに飛び級で加入。クラブでは抜群のパフォーマンスを見せながら、満を持して東京五輪に臨む。
オフザボールの質は言わずもがな、ガッチリした体格に違わない凄まじいフィジカルの持ち主。ラフなボールも力強いトラップで収められ、屈強なディフェンダーにも当たり負けしない力強さを持つ。そして意外にプレスが上手い。純粋なストライカーとしては最も有望な選手だろう。

前田大然
快足アタッカーは数多くいるが、前田ほど抜け出しとプレスの上手いスピードスターはいない。横浜・F・マリノスではディフェンダーを追い詰め、ミスを誘い、ボール奪取から得点の結び付ける場面が非常に多い。

林大地
泥臭く戦える”ビースト”は、21シリーズで目覚ましい活躍を見せて五輪への挑戦権を獲得した。フィジカルや粘り強さなど、目に見える武器も多いが、何よりも愚直なメンタルが魅力。上手い下手じゃなくて応援したくなる選手だ。
技術不足はやはり否めず、決定機逸やコントロールミスなどでチャンスを棒に振ることもしばしば。それでもやはりU-23アルゼンチン相手にも競り負けない力強さは唯一無二である。気持ちで戦える選手がいかに頼れるか。それは岡崎慎司が証明済みだ。

鈴木優磨
ベルギーで二桁得点のストライカー。森保一の失策のひとつが、彼との確執によって代表未招集を続けていることである。何をやらせても問題なくこなせる万能型である。汎用性の高いFWは決定力に欠けがちだが、鈴木は肝心のフィニッシュも抜かりない。
オフザボールの質に加えて、決め切ってほしい場面で決め切れる勝負強さも売り。ヘディングのパワーは言うまでもないだろう。勝気な性格とストイックな姿勢は、ビッグクラブでも通用しそうだ。ぜひ大舞台へのステップアップを積み重ねてほしい。

3.今後のメンバー予想

カタールワールドカップ2022

次回ワールドカップもいよいよ来年となった。まだ出場権を獲得できたわけではないが、アジアの上位4チームに入っているのは前提として考えたい。メンバーはA代表+U-24の融合になるだろう。
しかしこれまでの森保体制が取り組んできた”世代交代”は後回しで、将来性よりも現状性が優先されると考えられる。そのため若さを理由に選ばれることはあるまい。
とはいえ最終予選のメンバーを見ないと分からない部分も多い。
まだワールドカップまでは1シーズン残されているため、これから調子を上げる選手と下げる選手の両方が出るだろう。
あくまでも現時点での有力な予想として、考えていく。

GK
・川島永嗣
・シュミットダニエル
・中村航輔

他候補
・権田修一
・谷晃生
・大迫敬介
・鈴木彩艶
・沖裕哉

現時点での実力は川島が圧倒的である。代表引退を表明しない限りは彼が主力になるだろう。
他は足元の技術に優れるシュミット、ポルトガルで挑戦を続ける中村が選出か。どちらも海外で目覚ましい活躍を見せているとは言い難いが、まだチャンスは残されている。

他候補について、A代表の候補とU-24の守護神以外の突き上げは見られない。
ここ最近の権田は代表での序列を下げており、Jリーグに引っ込んだことを考えると難しいように思える。
谷晃生はオリンピックでのパフォーマンス次第だろう。クラブでは既に圧倒的な存在感を放っていて、海外挑戦へのキッカケさえあれば、更なるステップアップを望めるだろう。ネックなのは、海外初年度とワールドカップの時期が被った場合、本調子で大会に臨めないことか。
彼の後塵を拝す大迫、沖にもまだまだチャンスはある。特に大迫はかつての正守護神だっただけに実力の証左は十分。これからパフォーマンスが上がっていけばチャンスはあるはず。沖には唯一無二のキック精度があり、オリジナルの武器で勝負できる。
鈴木彩艶の伸びしろは強大だ。凄まじいポテンシャルの持ち主で、カタールでバックアップメンバーに選ばれる可能性は十分にある。

DF
CB
・吉田麻也
・冨安健洋
・植田直通
右SB
・酒井宏樹
・山根視来
左SB
・長友佑都
・旗手怜央

他候補
CB
・谷口彰吾
・昌子源
・中谷進之助
・町田浩樹
・瀬古歩夢
右SB
・室谷成
・橋岡大樹
・菅原由勢
左SB
・中山雄太
・安西幸輝
・小川諒也

CB
吉田&冨安の候補は揺らぐまい。たとえ彼らがパフォーマンスを落としたとしても、その圧倒的な実績は簡単に埋められるものでない。
むしろ争いが激しいのはセカンドチョイスで、板倉滉はボランチでカウントした上で、四枚目がどうなるかである。ここではロストフの14秒におけるフェライニへの対策を反省し、対人に強い植田を挙げた。しかしテクニックに難がある上に、21-22シーズンはフランス2部での戦いを余儀なくされる。粗削りな武人は粗削りなままカタールを迎えるかもしれず、より繊細なCBが求められる場合には、国内の有力選手が帯同するに違いない。

他候補についても、アンダー世代・国内組共に充実している。
川崎で盤石の守備を見せる谷口、ロシア戦士の昌子はクラブ・代表共に安定したプレーを見せている。実力については言わずもがなだ。
アンダー世代の町田と瀬古もそれぞれ大きな強みを持っていて、五輪や来シーズンの動向次第でいくらでもチャンスはある。

右SB
酒井宏樹はほぼ確定。セカンドチョイスは山根とした。
山根に関しては、海外にいないのが不思議なレベルのクレバーさである。高水準のテクニックと試合を組み立てられるゲームメイク能力は、今の日本で唯一無二の存在だ。サイドバックがキーマンとなる戦術は現代サッカーの主流である。「戦術・山根」あるいは「ヤマネ・ロール」が見られる日は近いかもしれない。

他候補については室谷成が強い存在感を放つ。攻撃性能で言えば一番手で、果敢な攻撃参加とオープン戦術では力強いオプションになるはずだ。しかしクロス精度を活かすには中央にエアバトラーがほしくなる。日本は緻密な組み立てて攻めたいので、やはり山根の方が向いているだろう。
橋岡と菅原も前への推進力やキック精度に光るものがあり、菅原に関していえばアレクサンダー=アーノルドに似たキック力を持っている。しかし守備での貢献度に鑑みると、やはり年長者に分があるのではないか。
とはいえ酒井の後継者問題は片付いていると言っても過言ではない。中堅の山根・室谷が今後充実したシーズンを過ごし、橋岡・菅原が順調に育てば安泰である。

左SB
相変わらず人材難は解決しておらず、とりわけ中堅の不在が深刻だ。
後継者問題を先延ばしにするのはいただけないが、長友がファーストチョイスであることは21シーズンで証明されたと言える。全体的な体力に衰えは見られるものの、粘り強さと精神力はやはり頼りになる。
であるならば、セカンドチョイスの決め手はどれだけ豊富なオプションを施せるかである。その意味で、ポリバレント性が高く連携力に優れる旗手を一番手とした。山根と同様に戦術理解度が高く応用も利く。アタッカーとしての性能も十分で、3バックを試したいときに重宝するはずだ。

他候補としてはアンダー世代の主力中山を筆頭に、スピードスターの安西と攻撃力に優れる小川がいる。しかし不安定な守備はやはり気になるところで、バランス型の中山も”怪物”タイプには弱い。中野伸哉の突き上げには期待したいが、まだまだスペシャルワンとは言えまい。
国内組には佐々木翔をはじめ、酒井高徳や車屋新太郎や永戸勝也がいる。選択肢に入るかどうかは……何とも言い難い。

MF
ボランチ
・遠藤航
・田中碧
・柴崎岳
・板倉滉
二列目(右WG左WGトップ下)
・伊東純也
・堂安律
・久保建英
・鎌田大地
・南野拓実
・原口元気

他候補
ボランチ
・川辺駿
・守田英正
・橋本拳人
・森岡亮太
二列目
・三笘薫
・三好康児
・相馬勇紀
・坂元達裕
・中島翔哉
・江坂任

ボランチ
ワールドクラスのエアバトラー遠藤航は不動の存在である。紛れもなく世界水準だ。今のパフォーマンスが続けば必然的に遠藤の相方を探す形になる。
まずはバランサーの田中碧。競り合いや守備は遠藤に任せた上で、穴を埋めたりパスコースを増やしたりと地味だが欠かせない仕事を任せられる。当然だが、ミドルシュートを狙うのもアリだ。
もう1人はやはり柴崎岳である。唯一無二のパスセンス、これは他の誰にもない武器だ。ベルギーに風穴を開けた先制点も柴崎のパスから生まれていて、攻めあぐねる試合での弾丸としては十分すぎる機能である。守備の遠藤、司令塔の柴崎。この組み合わせは外せない。
また板倉滉はCBも兼任できるオプションとした組み込める。セットプレーから得点できる上背は魅力的だ。日本が高さに欠ける小さな国であるのは既に過去の話。

他候補としては、守田英正と橋本拳人がいる。どちらも能力的には申し分ない名手だ。守田のボール奪取能力も橋本のファイティングスピリットも心強い武器である。柴崎の調子が上がらなければ、彼らが選ばれるのは間違いない。さらにスイスへの挑戦を決めた川辺も捨てがたい。果敢なインターセプトと高精度のミドルシュートは圧巻で、ハイプレス戦術に際しては強力な得点源になり得る。森岡は森保体制では未招集なものの、柴崎に負けず劣らずのパスセンスを持ち合わせている。ベルギーの強豪でハイパフォーマンスを続けているだけに、今後のメンバー争いに絡んでくる可能性は高い。
他にもロシアで戦い続けるボックスtoボックスの齋藤未月など、選択肢は無限に等しい。誰が選ばれてもおかしくない層の厚さだが、それでも不動の存在と呼べる遠藤航は改めて凄まじい。

二列目
こちらも潤沢な選択肢である。そして同時に不動の存在も多い。
現在日本で最も価値あるサッカー選手の鎌田と至宝・久保建英は確定。他には内外両刀のウインガー伊東、得点力と順応性の南野、(五輪のパフォーマンス次第だが)アンダー代表で得点を量産している堂安が有力。他の選択肢も異常に多いが、守備への貢献度に鑑みて原口を推す。とりわけ左サイドバックは安定感に欠けるので、彼の馬力で誤魔化せねばならない場面は出てくるはずだ。
とはいえ左サイドには三笘・相馬・三好と素晴らしいウインガーが揃っている。彼らの攻撃センスも捨てがたい。贅沢な悩みである。

他候補で言うと、比較的ポリバレントに欠ける印象である。二列目ならどこでも……という選手は三好くらいで、それも最近の代表で見かける程度。他は相馬が左右どちらでもいけるが、それでもサイドに限定される(サイドでもジョーカー起用で絶大な効果を発揮するが)。
他は限定的な起用になってしまう。例えば三笘は左サイドでこそ非凡な攻撃センスを発揮するが、中央ではライン際での攻防が減るし右サイドではアウトサイドを活かしにくくなる。中島翔哉も、左→中央へ流れる流動性の中で攻撃力を発揮するタイプであり、彼のイマジネーションとテクニックは世界水準にあるものの、汎用性で言うと微妙である。幻影のキックフェイントを使う坂元も右サイド起用が主になるだろう。彼のチャンスメイクは垂涎ものだが、中島と同様汎用性には首を傾げたくなる。卓越したゲームメイク能力を持つ江坂も楽しみな選手だが、同じポジションで似た役割を担う選手に鎌田大地がいる。プラスアルファの武器が無い限りチャンスを得るのは難しい。

FW
・大迫勇也
・オナイウ阿道
・古橋享吾

他候補
・鈴木優磨
・上田綺世
・浅野拓磨
・林大地
・前田大然

戦術大迫が崩れることはないだろう。というより怪物揃いの二列目を活かすためのポストプレーがFWの役割であって、それを捨ててまでオフェンスを託したいスペシャルワンのストライカーがいない。つまりFWを選ぶ基準は「ポストプレーが上手いか否か」なのであり、いま一番それが上手い選手こそ大迫なのである。
セカンドチョイスには人並み外れたオナイウが現時点でのセカンドチョイスとしたが、似たタイプだが海外で上手くいってない選手に鈴木武蔵がいる。まずはフランスでの活躍に注目だ。
フィジカルやポスト以外の選択肢を持つストライカーが古橋だ。神戸のみならずJリーグ全体に多くのものを残してセルティックへ向かう男は、異次元のシュートテクニックを持つ。純粋なストライカーとして起用するのであれば、決定力のある古橋がトップに踊り出る。

他候補についてだが、古橋に負けず劣らず(むしろ古橋を優に超える)決定力を兼ね備えた鈴木優磨が筆頭に上がる。ストライカーとして点を決めることもポストとして起点となることもできる万能型は、監督との確執さえなければ今すぐにもで代表に選ばれるべき素質である。鈴木を呼べないことは森保一の失策と言わざるを得ない。鈴木のストライカーとしての素質を持っているのが上田綺世で、ポストとしての素質を持っているのが林大地だ。特に林に関しては岡崎慎司を彷彿とさせる献身性があり、唯一無二の個性を持っているという点で有力だ。
またスピードタイプの浅野・前田は招集の可能性が高い。これまでも継続的に呼ばれ続けていて、異なる特性を持つことからもチーム内である程度の役割を持てるはず。

アジアカップ2023

アジアカップ

GK
・シュミットダニエル
・中村航輔
・谷晃生

DF
CB
・吉田麻也
・冨安健洋
・植田直通
右SB
・山根視来
・菅原由勢
左SB
・中山雄太
・旗手怜央

MF
ボランチ
・遠藤航
・田中碧
・守田英正
・板倉滉
二列目(右WG左WGトップ下)
・伊東純也
・堂安律
・久保建英
・鎌田大地
・南野拓実
・三笘薫

FW
・オナイウ阿道
・古橋享吾
・上田綺世

カタールW杯から大きくは変わらないだろうと予想する。ただし主戦術の転換は望まれるところで、大迫・柴崎といった戦術級の選手から”卒業”することが望まれる。ありがたいことに選択肢は豊富なので戦力ダウンにはなるまい。また長友・酒井からも”卒業”しておきたい。アジアカップでは新陳代謝がキーワードになっているので、いまと異なる顔触れが並ぶ可能性はあるが、現時点ではこんな感じになるはず。何よりそろそろ「王座奪還」とやらを成し遂げてもらいたい。

カナダ・アメリカ・メキシコワールドカップ2026

五年後の日本サッカーについて語るのは不毛かもしれないが、むしろここで伝えたいのは「日本サッカーの未来は明るい」ということである。二列目とボランチでは世界水準の選手が続いており、CBやストライカーにも有力な若手の台頭が著しい。川口能活と円堂守のおかげでGK需要も満たされつつある。北中米での開催ということでサッカー新興国のアメリカは両腕を振り回しているだろうが、そこに待ったを掛けてやりたいところだ。
願わくば現状では思いもやらない彗星がたくさん現れて、W杯ベスト4入りを果たしてほしいところだ。
※有力な候補を挙げるので、人数はバラバラです

GK
・谷晃生
・大迫敬介
・沖裕哉
・鈴木彩艶
・小久保玲央ブライアン
・熊倉匠

東京五輪世代が中心になっているかは不明瞭で、むしろメンバー争いの渦中にいるのはパリ五輪世代かもしれない。注目はポルトガルで研鑽を積む小久保玲央と浦和で存在感を放つ鈴木だ。今後の日本GKを牽引するのは間違いなくこの二人になる。
だが選手権でセンセーショナルな活躍を見せた熊倉も忘れられない。凄まじいリーダーシップの持ち主である。

DF
CB
・冨安健洋
・瀬古歩夢
・町田浩樹
・菊池流帆
右SB
・山根視来
・橋岡大樹
・菅原由勢
左SB
・中山雄太
・旗手怜央
・中野伸哉

吉田麻也、酒井宏樹、長友佑都は勇退しているだろう。CBの主軸は冨安が担うとして、彼の相方がどうなるかである。東京世代の選択肢は豊富だが、これといった一番手はいない。両サイドバックも同様で、円熟期を迎える山根と中堅として君臨しているはずの旗手が主軸になっている可能性は高い。ではセカンドチョイスは誰になるかと言われれば、まだまだ突き上げのほしいポジションである。
注目は左SBの中野だ。鳥栖で躍動する若手はパリ世代。これからの五年間でどれほどの飛躍を遂げるのかが楽しみだ。

MF
ボランチ
・遠藤航
・田中碧
・守田英正
・板倉滉
・橋本拳人
・齋藤未月
・藤田譲瑠チマ
・松岡大起
二列目(右WG左WGトップ下)
・堂安律
・久保建英
・鎌田大地
・南野拓実
・三笘薫
・本間至恩
・荒木遼太郎
・鈴木冬一
・中井卓大
・三好康児
・相馬勇紀
・武田英寿
・樺山諒乃介
・森島司
・安部裕葵
・宮城天

言うまでもなく凄まじい選手層である。このときには世界の一番手に名乗り出ている可能性も低くない。その筆頭はもちろん久保建英だ。
世界を意識するのであればボランチにも注目である。遠藤がこのパフォーマンスを維持しているかどうか、田中碧がどこまで成りあがっているのか、板倉はマンチェスターシティに認められているのか……楽しみな部分である。ロシアで奮闘する齋藤未月の成長も気になる。さらに藤田や松岡といった若手もいて、選択肢には事欠かない。
その倍くらい楽しみなのが二列目だ。久保と堂安は言わずもがな、鎌田がどこまで上り詰めるかも楽しみだ。フランクフルトが全盛期になるのか、さらに上のメガクラブで躍動しているのか、寄せる期待は大きい。三笘薫の栄光が増しているのか褪せているのかも気掛かりである。他の若手では、バルセロナの安部やJ2の怪物本間やマリノスの隠し刀樺山がいる。最近ではポスト三笘として宮城天も台頭してきた。
しかし何といっても恐ろしいのは、このときにはレアルマドリードの選手が二人いる可能性があることだ。中井卓弘は現時点で既にトップチームへたびたび参加している。

FW
・古橋享吾
・オナイウ阿道
・鈴木優磨
・前田大然
・上田綺世
・林大地
・若月大和
・西川潤
・斉藤光毅

大迫の後釜が誰になっているのか……未だ答えは出ていない。最も未知数のポジションである。明確なチャンスが用意されているのは古橋だ。セルティックで得点を量産すれば日本の主砲として君臨する。もちろん身体能力に優れるオナイウも楽しみだし、この頃には鈴木優磨も仲直りしているか森保体制ではなくなっているはず。上田綺世がひと皮もふた皮も剝けていることにも期待したい。あるいは岡崎の再来と名高い林が、新しい奇跡の証人になっている可能性もある。
もうひとつ楽しみなのが、若い力が多くいること。既に海外で戦っている若月と斉藤は楽しみな選手だ。想定できる限りで最上の未来は、西川潤がバルセロナのエースであることだ。

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