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#66 建築の多様性と対立性

"建築の多様性と対立性"を読了。
前回読んだ本に続いてヴェンチューリの名著をチョイス。

コルビュジェが純粋なものを賞賛していることについて、「単純性がうまく作用しないと、ただ単純さが残るだけである。あからさまな単純化は味気ない建築を意味するのだ。より少ないことは退屈である」という正反対の視点からコメントを述べているが、その実、両者の主張は補完関係にある点が面白い。
そして、ヴェンチューリは”統合”について、「排除によって達成される安易な統合」よりも「包合によって達成される複雑な統合」を重要視している。
課題を排除しすぎた建築は一見完成しているように見えるが、多くの課題を扱い未完状態の建築の方が深みがあり、ヴェンチューリは「好み」だと言い切っている。これも面白い点。

学びは多くあった中で、特に印象に残ったのは下記の3点。

  • 建築の各要素は、形態としてもまた構造としても、表面としても材料としても把握される。このような固定的でない関係、すなわち多様性と対立性が、建築の方法の特徴である曖昧さと緊張の源泉なのである。

  • 後で壊されてしまうにせよ、秩序は存在すべきである。どんな芸術家といえども、自身の特性と状況に関連づけて全体を把握する手段として、秩序の役割をみくびることはできない。

  • 内部の要求から発してデザインしていくのと同様に、その逆の場合も必然的に緊張が庄司、それが建築のデザインに役立つのである。外と内とが異なるものだとしたならば、その接点である壁こそは何かが起こるべきところであろう。外部と内部の空間や用途上の要求が衝突するところに建築が生じるのだ。

良書だった!
以下、学びメモ。

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・(解説)コルビュジェの偉大な教師はギリシアの神殿、すなわち、景観の中に一つポツンと存在する白い躯体と、陽光の下に確としてある輝かしい厳粛さとを併せ持つ、それであった。
→一方、ヴェンチューリにとってのインスピレーションの源は、歴史的に見てもイタリアの街並みのファサードにあった。そこには内部と外部との果てしない辻褄合わせが、そして日々の生活の種々の様相を反映する屈曲が認められる。
・★単純性がうまく作用しないと、ただ単純さが残るだけである。あからさまな単純化は味気ない建築を意味するのだ。より少ないことは退屈である。★
・★建築における多様性と対立性の分類が、プログラムと構造の表現としての形態と内容に関するものだとするなら、第一の分類は方法に関係し、芸術における知覚と、意味の生ずる過程そのものに固有の逆説に関することである。つまり、実際のイメージと想像されたイメージを並列することから生ずる多様性と対立性である。★
・多様性と対立性を備えた建築には曖昧さと緊張とがつきものである。建築は形態であるとともに実質でもあり、抽象的であるとともに具体的であり、そしてその意味は、内部の特徴からとともに外部の環境から引き出されるのだ。
→★建築の各要素は、形態としてもまた構造としても、表面としても材料としても把握される。このような固定的でない関係、すなわち多様性と対立性が、建築の方法の特徴である曖昧さと緊張の源泉なのである。★
・多様性と対立性を備えた建築は、このような明確な接合や明快性を表現することをせず、「二者択一」を排斥するというよりは、「両者共存」を取り入れてしまうのだ。
・「二重の機能を持つ」要素と「両者共存」とは関連はあるけれども、明らかな相違点がある。すなわち、二重の機能を持つ要素はどちらかというと個々の使われ方とか構造に関係しているのに対し、両者共存は全体に対する部分の関係に関わっているのだ。両者共存は二重の機能よりは二重の意味に重点を置いている。
・★後で壊されてしまうにせよ、秩序は存在すべきである。どんな芸術家といえども、自身の特性と状況に関連づけて全体を把握する手段として、秩序の役割をみくびることはできない。「システムのない芸術作品などありえない」とは、コルビュジエの至言である。★
・イタリアの町を歩いていると、その表情の豊かなことにも気づくが、その豊かさの大部分は各世代ごとに、たとえば古いパラッツォの一階にとても洒落た今風のバーを設置するごとくに、商店に供される一階部分を、改修し近代化する慣わしの結果なのである。しかし、建物の本来の秩序は強くあらねばならない。ニューヨークのグランド・セントラル駅の空間は、どんな乱雑さにも負けることはないが、現代の建物ニオイは、たった一つの異質な要素が入り込むことで全体の効果が損なわれてしまうことが多い。
→建物というものは、タバコの自販機よりも寿命が長くならねばならないと思う。
・ポップ・アートから次のことを学べる。
→★ありきたりの安っぽい要素こそ、都市景観に偶然の変化と活気をもたらすのであり、全体の様相を平凡で俗悪なものにしてしまうのは個々の要素がそうであるというよりは、空間やスケールとの絡み合いによるのだ。★
・★内部の要求から発してデザインしていくのと同様に、その逆の場合も必然的に緊張が庄司、それが建築のデザインに役立つのである。外と内とが異なるものだとしたならば、その接点である壁こそは何かが起こるべきところであろう。外部と内部の空間や用途上の要求が衝突するところに建築が生じるのだ。★
・★屈曲は、より単純な全体とともに、二重性を有する複雑な全体の辻褄あわせに寄与する。それは二重性を解消する一つの方法なのだ。★

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