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#59 アメリカ資本主義と学校教育I

"アメリカ資本主義と学校教育I"を読了。
教育制度に関して「資本主義」という切り口から鋭い指摘を行っている内容。
フレデリック・テイラーの科学的管理法などが20世紀のアメリカの教育のあり方を変えた、という切り口は興味深い。
「NYのあるハイスクールで有利/不利に働く性格特性」に関する指摘も面白い。確かに、起業家を育成するというよりは労働者側も増やす取り組みのように映る。

特に印象に残った学びは下記の3点。

  • 社会的プロセスとしての資本主義的生産は、本来的に労働者と経営者との間の敵対的な関係に基づき、常に爆発する可能性を秘めたものである。階級間の闘争は様々な形をとるが、最も基本的な闘争は剰余価値の生産と収奪をめぐるものである。

  • 我々がここで展開するアメリカの教育制度に関する分析は、教育改革の運動が挫折したのは、経済分野における所有と権力との基本的な構造を問題とすることを拒否したからであるということを示唆している。

  • 今日のアメリカの学校教育のあり方を決定しているのは資本と特権と利潤の至上命令であって、人間的能力や技術的現実ではない。これが我々の主要な命題である。

これは良書の予感。
次のIIも楽しみ。

以下、学びメモ。

ーーーーー
・我々がここでとる基本的な視点は資本主義的な生産が、単なる技術的プロセスではなく、社会的プロセスでもあるということである。経営者にとって最も中心的な話題は、企業の中に、そしてできれば社会一般で、そのような労働者の目的を剰余価値の生産と収奪のために利用できるような、社会関係と組織形態を作り上げることである。
→★その意味で、社会的プロセスとしての資本主義的生産は、本来的に労働者と経営者との間の敵対的な関係に基づき、常に爆発する可能性を秘めたものである。階級間の闘争は様々な形をとるが、最も基本的な闘争は剰余価値の生産と収奪をめぐるものである。★
・★アメリカにおける教育は、剰余価値すなわち利潤が創出され、収奪されていく社会的プロセスの中で、相対する2つの役割を果たす★:
①技術的、社会的技能と適切な動機づけを与えることによって労働者の生産能力を高める
②爆発の危険性を内在する、生産過程の階級関係を不活性化し、非政治化し、そして労働生産物の一部が利潤として収奪されることを正当化するような社会的、政治的、経済的条件が永続されることに役立つ
・★我々がここで展開するアメリカの教育制度に関する分析は、教育改革の運動が挫折したのは、経済分野における所有と権力との基本的な構造を問題とすることを拒否したからであるということを示唆している。★
・20世紀における教育の歴史は、進歩主義の歴史ではなく、新しく起きつつあった資本主義体制における権威と特権のピラミッドを反映した「営利的価値観」と社会関係が学校に強要されていった歴史である。
→この期間はアメリカ教育の発展は、改革された教育制度のもとで、産業労働の持つ”残酷で疎外的な面”がなくなってしまうという可能性を求めたジョン・デューイやジェーン・アダムズの楽観的な主張によって導かれたものではなかった。むしろ、フレデリック・テイラーとか科学的管理学派の時間・動作重視論が、仕事の細分化、官僚機構、上からの管理強化を伴いながら、支配的な役割を果たしていった。
・デューイの理想とする社会は、経済生活そのものが民主化されたとき(すべての権力、権限関係が参加と民主的合意に基づくものになったとき)に初めて実現できるのである。しかし、アメリカにおける経済の社会的関係は、民主主義・平等主義とは程遠い。我々は、この事実から出発して、労働疎外と経済的f平等の社会的関係に根ざすものであり、そのような社会的関係が市場と所得の関係の構造、資本主義企業内の管理の体系、資本主義の不均等発展の動態の中に組み込まれていることを明らかにした。
・青少年を教育して、成人してからの職業的役割に統合しようという教育制度の役割によって、そこで育成できる人格的発達の類型は限定されたものになってしまい、真の人格的発達の機能には相反するものになってしまっているのである。
・★今日のアメリカの学校教育のあり方を決定しているのは資本と特権と利潤の至上命令であって、人間的能力や技術的現実ではない。これが我々の主要な命題である。★
・NYのあるハイスクールで有利/不利に働く性格特性:
有利)我慢強い、信頼できる、堅実、学校への帰属意識を持つ、秩序を重んずる、几帳面、目先の満足を求めない、外から動機づけられる、頼りになる、如才ない
不利)創造的、積極的、独立
・両親は、意識的であると否とを問わず、自分たち自身の社会階級の生活の条件から得た教訓を、子供たちに伝える傾向を持つ。このことは、子どもたちが同じような階級的地位を得る準備をすることを助けることになる。このようにして、家族は不平等を永続させるというメカニズムを果たすことになる。
・★社会的対立の性格の変化は、階級構造やその他の権力、特権の関係の推移にその原因があり、教育機関の再編成が周期的に行われてきた。と同時に、資本主義社会の基本的矛盾と対立を激化し、政治化するという形で進展してきたのである。★

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