歯医者でショック、そして大人になる。

歯医者の定期健診の日が来た。それすなわち、休みの日である。
私は9連勤を終え、久しぶりの2連休だったのでこの日を楽しみにしていた。

朝起きて洗濯物を回し、お茶を淹れて朝ご飯を食べた。
食器を片付けて身支度をし、洗面所とトイレと床掃除までした。
家を出る時間までにやれることは全部済ませ、意気揚々と歯医者へ向かった。

いつものように検査をしてもらって、水が出る機械で歯のお掃除。
慣れたもので「もうすぐ口をゆすいでくださいって言われるな」とわかるようになった。私がのんきに口をゆすいで待っていると担当の人が言った。

「着色汚れを取るためにお水と粉が出る機械でお掃除しますね。顔に粉がかかるかもしれないのでタオルをお顔にのせますね」

私ははじめてのことで少し驚きつつ「あ、はい」と小さく答えた。
了承したものの、お水と粉が出る機械のことがとても心配になった。

以前、別の歯医者で塩が出る機械を使われてとても苦しい思いをしたことがあり、今の歯医者に来た頃に塩が出るやつは使わないでほしいとお願いしていたのだ。

私は「お水と粉の粉ってなんなんだろう。塩じゃないのかな。塩じゃないただの粉なのかな。それにしてもその機械を使わないといけないくらい着色していたのか...…最近コーヒーをたくさん飲んでいたしな......」などとイスを倒されながらぐるぐると考えていた。

担当の人が顔にタオルをかけてくれたのだが、フェイスタオルを3枚くらい使って口だけが出るようにとても厳重にカバーしてくれた。
私は「そんなに激しく粉が飛ぶのか」とますます心配になった。

暗闇の中「はい、口あけてください」と言われ、おとなしく口をあける。

いざお水と粉が出る機械が私の口の中に入ってくる。


しょっぱい。

その粉は塩だった。塩味が私の口を支配している。私はショックだった。
しかし以前経験した時よりも口の渇きや塩っ辛さはマシだったので数分のことだと思い我慢した。

大人になると我慢しなくてはいけないことが増える。
それが大人になるということなのだ。私は今また大人になった。

数分後、我慢の時間が終わり口をゆすいで次の工程を待った。
イスを倒す前に担当の人が言った。

「こちらの機械でのお掃除は4月から有料になるので無料のうちにお試しでやらせてもらいました。また希望されるときは言ってください」

私は「そうだったのか、ならこの数分我慢したのはいくらかの価値があることだったのか。我慢した甲斐があった。またお願いすることは無いと思うけど」と思いながら
「ありがとうございます。わかりました」
と笑顔で答えた。

お掃除も終わり、歯医者をあとにしてすがすがしい気持ちでお昼ご飯を食べにマクドナルドに向かった。

ピカピカになった歯をてりたまチーズバーガーとコーヒーでさっそく汚した。

それでもその日の夜、歯磨きの時に「あれ、いつもより歯が白い!」と気づき驚いたのでこんなに目に見えて効果があるならたまにはお願いしてもいいかもしれない。


今の歯医者に行き始めたころの話


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