倍速視聴を促すのはコミュニケーションの輪から外れる不安という仮説
はじめに
最近、2冊の本を読みました。「コンテンツ消費」と「教養の習得」では関連が薄そうですが「ファスト」というキーワードを通して共通点が見えてきます。どちらも不安に駆られての行動といえそうなのです。
今回は「映画を早送りで観る人たち」を中心に倍速視聴の理由となる不安について書いてみます。
倍速視聴の理由は仲間外れへの不安
『映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形』※1を読みながら、頭に思い浮かべていたのは『映画大好きポンポさん』が示す映画観でした。
大作映画はどんどん長くなっているように感じます。たとえば『アヴェンジャーズ/エンドゲーム』は訳3時間の長さです。そしてこれすら30本を超えるMCU作品群の1本でしかありません。
好きで追いかけている人には負担ではないでしょう。楽しい時間です。しかし突き合わされる人は堪ったものではありません。大して興味のない作品を、3時間も視聴させられるのは拷問です。何本も映画を見続ける祖父に育てられたポンポさんの心中やいかに。
周囲のみなは話題にしています。一方で自分は自分で好きな作品に時間を充てたいと考えています。このままではコミュニケーションの輪から外れてしまうのではないか? という不安が生まれます。そこに「倍速再生」や「総集編」、「ファスト映画」があるのならば、利用したいと思うのは自然な欲求でしょう。
こうした状況では作品をしっかりと味わいたいという思いは薄く、話題についていけるだけの情報を取得できればよいはずです。そして「倍速再生」はプレイヤーに備え付けの機能。使わない理由がありません。「総集編」も公式提供なら視聴への抵抗は少ないでしょう。違法な「ファスト映画」※1はさておくとしても。
倍速視聴の弊害
倍速視聴には切実な理由がありました。だからといって倍速視聴がいいことばかりとは限りません。話題を押さえてコミュニケーションの輪に入るのを優先するばかり失われるものが出てきます。
次回は、下記の議論を参考にさせていただいて、倍速視聴の弊害について考えてみる予定です。
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※1 元となったのは9本のWeb記事。「映画を早送りで観る人たち」の出現が示す、恐ろしい未来/映画やドラマを観て「わかんなかった」という感想が増えた理由 /『逃げ恥』『シン・エヴァ』…「リテラシーが低い人を差別しない」作品が時代を制する/「オタク」になりたい若者たち。倍速でも映画やドラマの「本数をこなす」理由/失敗したくない若者たち。映画も倍速試聴する「タイパ至上主義」の裏にあるもの/「インターネット=社会」若者の間で広がる「セカイ系」の世界観/若者のあいだで「批評」と「スポーツ観戦」が不人気な理由/『鬼滅の刃』『イカゲーム』も早送り…大学生が「倍速視聴」をする理由/「なるべく感情を使いたくない」映画やドラマを「倍速視聴」する大学生の本音
※2 「ファスト映画」公開の2人に総額5億円の賠償命じる 東京地裁
※本記事にはAmazonアソシエイトのリンクを含みます
※冒頭の画像はBing Image Creatorで生成
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