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旅で気付いたこと(5)~世界は先入観でできている
(写真)1995年7月バングラデシュ・ダッカ。歩いているとジロジロ見られ、色々聞かれた。
日本から脱出し日本人であることからも脱出したいと思って海外へ出て来たのに、海外へ出ると逆に日本人であることを強く意識させられてしまうのは、
この男性は日本人だーといった当てはめ方が、他者にとって分かりやすい記号のようなものだからなのでしょうし、
一旦、日本人、と思えば、その人が生きてきた中で形作ってきた「日本人」のイメージを、一個人である僕に全力で押し付けてきます。
日本人は失敗すると切腹する、と思っている人はさすがにそんなにはいないとして(でも、いる)
休みなく働き続ける、とか、YESの時はNOと言う、とか、はよく言われました。
英語が理解できないと思っていて、こちらから話し掛けても拒絶したり、
ひどかったのは、宿のチェックアウトの時、宿代がいくら、というような簡単な言葉も聴き取れないと思ったのか(実際に聴き取れない日本人旅行者は多い)こちらが英語で尋ねているのに黙って返事もせず数字を紙に書いて見せた宿主が居ました。(タイ北部にある、欧米人が経営するゲストハウスでした)
その時、怒りや悔しさのような感情が生じるのですが、それは、相手が一人の人間としての自分を見ようとせず、その人のイメージの中の「日本人」だけを見ていることを感じるからで、
人種差別というのも、全く同じ現象だと思います。
↑タイ北部メーサイから国境を越えたミャンマーの町タチレク。1996年7月。
様々な人種が隣り合って暮らしているアメリカなどの国々では、日常的に、黒人だから、アジア系だから、と見下されたり排除されたりするだけではなく、住む所や仕事を与えられなかったり、
黒人=粗暴、などの誤った理解から来る警戒心から銃撃事件が起こったりしているのですが、
これも、その人一個人の人格を見ずに、外形的な「条件」みたいなものだけを見ていることによる現象で、
戦争の原因もそれで、ある意味、人間に備わった、危険を回避する生存本能のようなものでもあるのでしょう。
人種が比較的多様ではないと言われる日本で(厳密には違うが)そんなことは起こっていないのかと言うと、
最近では外国人技能実習生への激しいいじめや実習生による殺人事件、実習生の脱走など起こっています。
日本人どうし、同じ人種どうしではどうなのか、と言うと、
その人そのものを見ずにその人の属性や条件的なもののみを見る、という人間の悪癖は同じ人種間でも遺憾なく発揮され、
身に着けている服や車、会社や大学のステータス、金持ちか貧乏か、派手か地味か、面白いか面白くないか、など、次々と人を何かの枠に当てはめ、決め付けていきます。
僕自身は、初対面では真面目そう、無口そう、冗談を言わなさそう、と思われることが多く、冗談を言うと大げさに驚かれたりしますが、全く冗談を言わない人間なんて居ないと思うのですが。
そんなこんなで日本国内でも相手の先入観が影響して人と仲良くなるのに時間が掛かったりはします。
ただ、そうした先入観、決め付けは、自分の中にもあり、この人はこんな人だろう、と自分自身の経験の中から類推しなくては人と関われないところがあります。
自分の中の先入観を先入観と認めて、その人の本当の姿を見るようにしたい、とは思っています。
長い旅行の中で、それまで自分が持っていた先入観が覆る場面は多かったです。
例えば、イスラム教徒・イスラム教国について。漢民族について。中国東北部の人達の日本への感情について、などです。
↑シリア・ダマスカスのウマイヤドモスク。1999年1月。
やはり行ってみないと、行って人と関わってみないと分からないことは多いです。
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