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何か足りない

世界中に流布する資本主義が人間に寄生し、モノや情報が目まぐるしく渦巻く現代。
私たちはいつも、「何か足りない」とどこかに不足したピースを嘆いては、"もっと"を追いかけている。

ないものすべてをねだり、隣の芝生はいつだって青く見える。
欲しいと思ったものをクリックしたのも束の間、手に届く時にはすでに次の商品に釘付けだ。

欲望と消費の追いかけっこ。いまではついに、欲望が消費を追い越した独走状態だ。自身のしっぽに見惚れてどこまで加速するのか見ものですね。

最近は、私たち人間の商品化・資本化が思ったよりも甚だしく、ゾッとしています。HRという言葉を聞くといつも笑ってしまう。
恋愛にせよ人材にせよマッチングアプリを眺めていたら、人間が商品として陳列させられているように見えておぞましくなった。
人間が最適化の一要素と捉われること自体にサイコパスみを感じる。

つまるとこ人間関係ですら、「何か足りない」を一時的に埋め合わせる間に合わせにすぎない物質的なものにすり替わってそうだなぁと、呆れてものも言えないわけですよ。

何でもかんでも手に入るこの時代、人々の"価値を測る目"は確実に衰えている。人を評価するにも、もはや定量化や比較という相対的な手段でしか行えないし、たいてい"何か足りない"スキルや感情が優先的に美化される。

恋は盲目というけど、もはや誰の目も正常な光を失い、足りない何かだけを頼りに惰民を貪っているのだ(うまい)。

ついさっき摘んだ花を渡す愛しい人も 思い出せないくらい
みんな急いでいる
ー『みんな急いでいる』/ THE NOVEMBERSー

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