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ラッシュライフ(レビュー/読書感想文)

 ラッシュライフ(伊坂幸太郎)
 を読みました。2002年の作。伊坂さんの単行本にしてデビュー2作目にあたります。

 伊坂さんの作品はぼちぼち読んでいます。前回読んだのは「魔王」でした。

 さて、今回は「ラッシュライフ」です。ネットでたまたま見たレビューがキッカケで気になり読み始めました。

 泥棒を生業とする男は新たなカモを物色する。父に自殺された青年は神に憧れる。女性カウンセラーは不倫相手との再婚を企む。職を失い家族に見捨てられた男は野良犬を拾う。幕間には歩くバラバラ死体登場――。並走する四つの物語、交錯する十以上の人生、その果てに待つ意外な未来。不思議な人物、機知に富む会話、先の読めない展開。巧緻な騙し絵のごとき現代の寓話の幕が、今あがる。

新潮社「ラッシュライフ」紹介ページより

 壮大な群像劇です。
・泥棒の黒澤
・神に憧れる河原崎
・カウンセラーの京子
・無職になりたての豊田

 四人の人物の物語が入れ代わり立ち代わり描かれます。

 本書を仮にミステリーとして読む場合、謎の中心は「死体が短時間で突如バラバラになり、再びくっついて歩き出す」という奇想天外なものです。この謎の種明かしだけでも充分に楽しいのですが、その他にもミステリーとしての読みどころはあります。

 広義の◯◯トリックに含まれるのでしょうが、スピード感ある物語に魅かれてどんどん読み進めてしまうあまり私は中盤まで察しが付きませんでした。文庫版の解説でも言及されているとおり、とてもとても大きな騙し絵(群像劇)です。

 ただ、恐らく伊坂さんは本書をミステリーとしては書いていないようにも思えました。

 本書の扉裏には「ラッシュ」の持つ英語の意味が列記されています。
 lash
 lush
 rash
 rush
 むち打つこと、遊び、激しく動かす、豊富な、景気のいい、華麗な、酒、のんだくれ、無分別な、軽率な、せっかちな、発疹、突進する、殺到する、むこうみずに行動する、突撃、忙殺――

 勝手な想像ですが、様々な「ラッシュライフ」を、交錯するたくさんのキャラクターの内面・感情を通じて描きたかったのかもしれません。後味も良く、読了後はなんだか上を向きたくなるお話でした。

 それにしても――そのプロットの緻密さに圧倒されます。文庫本にして約450ページ。それほどの大作というわけでもないのに物凄い密度の物語です。


#読書感想文
#伊坂幸太郎
#推理小説
 



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