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小説_聖徳をまとう

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ミステリー風味のオリジナル連載小説です。 タイトル/ 聖徳をまとう あらすじ/ 出来心から娼婦ユミの跡をつけた私だったが、不注意がきっかけでそのストーカーじみた行為はユミ本人に知…
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#創作大賞2024

聖徳をまとう_七/愛は多面的に

 前話はこちら   ◇  平塚もえぎは滔々と語り始めた――。   ◇  ありきたりなこと…

シュシュ
5日前
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聖徳をまとう_六/笛と電話

 前話はこちら  ◇ 「三十一のリコーダーアンサンブルや!」  担任の島脇先生が黒板の前…

シュシュ
1か月前
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聖徳をまとう_五/女王の墓

 前話はこちら   ◇ 「六角堂?」  肇が唐突に私に問いかけてきたのは石段を降り始めて…

シュシュ
1か月前
5

聖徳をまとう_四/いもこさん(2)

 前話はこちら   ◇  小野妹子は聖徳太子と同じ飛鳥時代を生きた官人である。推古天皇の…

シュシュ
2か月前
1

聖徳をまとう_四/いもこさん(1)

 前話はこちら   ◇  音の無い漆黒の世界。海の底で深海魚を見上げる夢を見た。身をくね…

シュシュ
2か月前
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聖徳をまとう_三/地を這う(2)

 前話はこちら   ◇  交わした約束はまもなく果たされた。  カウンセリングの二日後、…

シュシュ
2か月前
2

聖徳をまとう_三/地を這う(1)

 前話はこちら   ◇  四肢の関節の痛みに耐えかねて目が覚めた。頭上から差し込む薄明かりが二日酔いの脳髄を刺激する。仰向けのまま、あたりに視線を巡らせた。ハスラーの車内だ。エンジンはかかっていない。私は後部座席のシートに手足を曲げた窮屈な姿勢で横になっていた。  頭を起こして窓外をうかがうと、ジビエ料理店の外観が見えた。瓦屋根の上には白々とした朝ぼらけの空。どうやら昨夕に停めたコインパーキングから動いていないらしい。ということは、店で酔い潰れた私を車内に運び込んでくれ

聖徳をまとう_二/故郷にて(4)

 前話はこちら   ◇  太子町に飲食店は少ない。叡福寺で私をピックアップした横谷姉弟は…

シュシュ
3か月前
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聖徳をまとう_二/故郷にて(3)

 前話はこちら   ◇  叡福寺は、推古天皇の時代、聖徳太子の母である間人大后の御廟に太…

シュシュ
4か月前
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聖徳をまとう_二/故郷にて(2)

 前話はこちら   ◇  矢も楯もたまらず、惹かれるように向かった先は八城邸だった。イン…

シュシュ
4か月前
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聖徳をまとう_二/故郷にて(1)

 前話はこちら   ◇  好奇心は猫をも殺すというが、まずもって、好奇心は時に人を動かす…

シュシュ
4か月前
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聖徳をまとう_一/ストーカー(3)

 前話はこちら   ◇  地元で顔の広い、旧友と呼べる存在は田辺雄平だけだった。帰郷して…

シュシュ
4か月前
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聖徳をまとう_一/ストーカー(2)

 前話はこちら   ◇  その日の己の醜態を気にしていなかったわけではない。  時折は、…

シュシュ
4か月前
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聖徳をまとう_一/ストーカー(1)

  ◇  仕事をやめて地元に帰ることにした。  早朝、引っ越し業者に少ない荷物を預け、地下鉄で名古屋駅へ向かった。懐が寒いので新幹線は使わない。名鉄百貨店前のナナちゃん人形に横目で別れを告げつつ近鉄特急の乗り場を目指す。およそ二時間電車に揺られ、十年ぶりの大阪に降り立った。  アパートは既に契約していたが実際に目にするのは初めてだ。大阪南東部に位置する富田林市、その北の玄関口にあたる貴志駅至近に私の新たな寝床はあった。三階建て鉄筋コンクリート作りの古アパート。一階部分の