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ブリ猫。さんの『うつ甘』シリーズを読んでみた話。

鬱病(双極性障害)についてブリ猫。さんが描いたコミックエッセイ『うつを甘くみてました』『家族もうつを甘くみてました』を読みました。
イラストは人間を猫として描いていて可愛らしいのですが、内容は壮絶でした。重度の鬱だと生活するどころか本当に何も出来なくなるんですね……。

ざっくりとあらすじ

『うつを甘くみてました』は当事者であるブリ猫。さんの視点から、『家族もうつを甘くみてました』は御家族であるお父様の視点から描かれています。

ブリ猫。さんは元々キャリアウーマンで、同じく忙しく働く旦那さんと幼い娘さん2人がいて幸せに暮らしていた……はずでした。
しかし、旦那さんの浮気が全てを壊す始まりとなります。大きなショックを受けたブリ猫。さんは、自分でも気付かないうちに精神のバランスを崩していました。
鬱病とパニック障害だと診断され、そしていきなり強い薬を大量に処方され、さすがに御両親も何かおかしいと気付き始めます。

無理解な旦那さんに心無い言葉で侮辱され、その浮気相手は別れた後もブリ猫。さんに嫌がらせと脅迫を繰り返し、彼女は追い詰められて行きます。
そんな中で味方になってくれたのは、転院先の主治医でした。そして病名も双極性障害二型に変わります。

ブリ猫。さんにも子供達にも愛情を持てなくなっていた旦那さんとは、最終的に離婚する事になりました。
まだ寛解(完治ではないものの日常生活を送れる状態まで回復する事)には至っていませんが、ブリ猫。さんは御両親と娘さん達と共に穏やかに暮らしています。

理解者の存在が与える影響

ブリ猫。さんにとって良かったのは、御両親が味方になってくれた事だと感じました。
世の中には精神的な病に苦しむ家族を「面倒見切れないから入院させる!迷惑だ!」と病院に放り込むだけの人々もいるのですから(映画「閉鎖病棟」にもそのような状態に置かれた患者さんが出て来ました)。
だからこそ、旦那さんの浮気で辛い想いをして来た事を打ち明けられたのでしょう。

正反対だったのが、一番近くにいたはずの旦那(元旦那)さん。
ブリ猫。さんが病気になる前からモラハラ気味の性格だったようですが、過呼吸で苦しんでいる妻を放っておいたり、オーバードーズ(薬の過剰摂取)で倒れている人間を罵倒するだけで救急車も呼ばなかったり。さすがにそれは人間としてどうなのよ、と。漫画での見た目は猫ですが。

精神的な病は検査でわかるものではありませんし、単なる怠けやわがままだと誤解されやすい傾向にあります。また、精神科に通っているというだけで「身内として恥ずかしい」「気が狂ったのか」と言う周囲の人々もいます。
だからこそ、それを理解しようとしてくれる方がいる事で病気は回復へと向かって行けるのです。

患者を助成する制度もある

『うつを甘くみてました』で描かれているのが、精神科に通う患者さんをサポートしてくれる公的な制度です。こう言う事って、意外と教えてくれないお医者さんもいたりするんですよね。

まず、ブリ猫。さんが利用したのは「自立支援制度」です。薬が多かったり、長く治療に通っている方はどうしてもお金がかかりますが、その自己負担を3割から1割に軽減してくれます(ちなみに沖縄では無料になります)。
申請は役所に書類を提出するだけ。ブリ猫。さんもポカーンとしてしまう程の簡単さです。

次に、精神障害者手帳と障害年金。障害者手帳には等級があり、それによって受けられる支援も変わります。
ただ、申請するには初診からの病歴や生い立ち、発症の原因などを細かく記した書類を出さなければいけないのです。患者さん本人が書くのは辛い事が多いのですが、書類に不備があると等級をきちんと判断して貰えなかったりします。
ブリ猫。さんは社労士さんに依頼し、書類作成などを手伝って貰ったそうです。

公的支援を受けるのは悪い事でも何でもありません。困った時に助けて貰う、そのために税金も年金も払っているのですから。
私も自立支援制度を利用しています。パニック障害と最初に診断されてから20年近く、こんな制度があるとは今の病院に転院するまでわかりませんでした……。教えてよ最初の先生。

寛解までの道をゆっくりと歩く

鬱病や双極性障害など、精神科に通うような病は「完治」とは言いません。「寛解」と言います。
身体の病気なら手術や投薬で完全に治るのでしょうが、精神的なものは再び大きなストレスがかかったりすると再発の危険性があるのです(私がそうでした)。

ブリ猫。さんは、現在も御家族の力を借りながら生活をしています。通院や服薬をしながらも、いつか御両親の支援が最小限になり娘さん達と3人で暮らせるようになった時が、きっと彼女の寛解なのだと思います。
それまでは、ゆっくりと。
どんなに焦って治そうとしても、良くなるのが早まるわけではないのですから。

それにしても……旦那(元旦那)さんがクズ。本当に人間のクズ!!
ブリ猫。さんもお父様も「彼は根っからの悪い人間ではない」「ただ受け入れられるキャパシティが小さかっただけ」と書いていらっしゃいますが、あまりにも酷いです。
私だったら一生彼の行動に苦しむし許せないと思います。ブリ猫。さん父娘の心は広いし、優しいです……。

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