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魂のかたちを語れるか

森美術館で開催している「塩田千春展-魂がふるえる-」に行ってきた。
作りあげられた空間の没入感がすごくて、写真で見るより絶対行って感じるものが大きいと思う。
写真もOKだったので記録用に何枚か撮ったけど、作品の雰囲気がちっとも写真には収まらないから、途中で撮るのもやめてしまった。代わりの覚書として印象に残った作品について記しておく。

糸を紡ぐ

今回の展示のキービジュアルとして使われている赤い糸を空間いっぱいに編み込んだ作品。真っ白い空間に張り巡らされた糸は、血管みたいにも見えた。
糸って色々なものに見立てられる。人と人との繋がりや歴史、人生、運命など。何もない場所に糸は張れない。繋がりのない場所にいきなり飛び級はできないから、生きたい場所には糸を伸ばして繋がっていくしかないんだよなと思ったりした。

焼け落ちたピアノ

火事にあった経験をもとに作られた、焼け焦げたピアノをモチーフにしたインスタレーション。まっくろなグランドピアノが燃えてさらに黒くなり、鍵盤は焼け落ちていて、弦もボロボロ。きれいな音楽を奏でるはずのピアノのその姿にすごく感情がゆさぶられた。
ボロボロなのにどこか気高さがある姿が余計に悲しかった。甲高い不協和音が鳴り出しそうで。ピアノの森で森のピアノが燃えるシーンのことを思い出したりした。

魂ってどんなかたち?

展示の最後に小学生たちのコメントを映した映像があった。
「魂(ゼーレ)ってどんなかたち?どんな色?」という質問に対して、こどもたち一人ひとりがちゃんと自分の意見を答えている。
「隣にいる子の魂が僕には見えるよ!」と元気よく言った少年もいたし、「魂は切っても切れないものだと思う」という少女もいた。
実態のない不確かなものをちゃんと言葉にしている様子を見て、感心すると同時に言葉にすることを怠ってきた怠惰な自分自身が恥ずかしくなってしまった。
そんなこと突然聞かれたらわたしは答えられない。ちゃんと考えたいと思ったので、これは私の宿題とする。

余白の中で考えること

すごく久しぶりの美術館だったけど、作品が投げかける問いにたくさんひっかかりながら楽しむことができたなと思っている。

今の会社に入るとき最終面接で「これからたくさんインプットしなさい」と言われた。「そうでなければ、追いつけないよ」と。

思えば、前職で働いていたときは忙しさにかまけてこうしたインプットにまったく時間を割いてこなかった。
抽象的でぼんやりとしたものから思考することを避けて、即効性があってすぐに実になる情報ばかりを追い求めてしまっていた。

自分自身の専門性や仕事の範囲の外にこそ、アイディアのヒントがあるのに、視野を広げる機会をあっさりと捨ててきたんだなぁ。

平日夜にひとりで行った美術館は、たくさんの発見があったし、休日に行くよりも落ち着いていて居心地が良かった。余白の中でしっかりと思考する、そんな時間の使い方をこれからはしていきたいなと思う。

同時開催している細野晴臣デビュー50周年記念の「細野観光」もダブルヘッダーで観てきたので、そちらの感想もまた。

nowplaying

スピッツの楽曲がサブスク解禁されましたね。スピッツのアルバムの中でも一番思い出深いのがスーベニア。真っ赤なアートワークが好み。


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