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人生のひととき


いつも私は
前を歩く貴方の歩みにならって歩けばよかった。

狭い歩道に仁王立ちする電柱も
群がって広がる学校帰りの子供らも
忙しなく行き交う色んな色した自動車も
先に貴方が避けるから
私は貴方の足下を見るだけで良かった。

ときどき私は酷く落ち込んで
いつもより頭を垂れて
貴方の歩みも見えなくなった。
ときどき貴方はふいに空を見上げて
突然歩みを速めると
私はそれに追いつけなくなった。

私は重たい頭を持ち上げて
もう一度貴方を視界に入れるような
私は暗い眼差しを見開いて
もう一度曇った世界に貴方を探すような

そんな私のほんの些細な努力でも
ほんの小さな一歩でも
貴方の歩みは続いてた。
貴方の背中は待っていた。

突然降り出した雨の中
先の貴方は
傘を広げて私を待ってる。

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