一家離散 1
工場は線路沿いにあり、電車が通るたびに小さく揺れていた。
工場では大きなプレス機でガタンゴトンと毎日何かの部品を鍛造していた。
日中は常にプレス機が動いていてずっと大きな音が響いていた。
工場の二階が僕の家だった。
十代になるまでそんな家で暮らしていた僕は音に対してのストレスに強い。
僕はこの家で過ごしたおかげでどこでも眠ることができる。
一階の工場には大きな水槽があって大きな魚が何匹か泳いでいたけれど、僕が小学校に上がる頃には水槽にはガラクタが入っていた。
水槽の側にも僕の背丈よりも色んなガラクタが積み上がっていた。
二階の僕の家に上がる階段が急だった。
木製の古い階段で十四段あったのだが、一段一段が高く急だったので、小さな僕は足を滑らせてよく階段を落ちていた。
でも僕は運がよかったのか怪我はしなかった。
階段を上ると
誰も鳴らさない電子ピアノが一つ。
大きな本棚が三つ。
引き棚が三つ。
扉が五つ
あった。
どの本棚にも漫画がビッシリと詰まっていた。
引き棚の中身は知らない。家の鍵が隠してあったくらいだ。
扉の内二つは和式トイレだ。
二つの内一つのトイレしか使わなかったのは、奥の扉を開けるとカラス死んで干からびていたからだ。
僕がトイレに篭っている時間は長く、漫画を一冊読み切るまでは和式トイレのポーズで入られた。
立ち上がると足はいつも痺れていた。
一つの扉は物置きだった。
たくさんのロッカーと
大きな本棚が三つと
たくさんの漫画が
並んでいた。
積んであるダンボール箱には手塚治虫が雑誌に掲載していた漫画のスクラップが入っている。
残る二つの扉は、
三階に続く扉と
僕の家の扉が
あった。
そんな家に住んでいる僕の母はノイローゼになった。
つづく
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