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#3 入国審査……?

現地時間の8月22日17:20ごろ、私はリガ空港に降り立った。
空港は思っていたよりもずっと小さく、そして最も肝心と思われる入国審査がまるでなかった。流れてきた荷物を拾い上げて順路通り歩いていくと、あっという間に外に出てしまった。渡航前に入国審査用に必死に準備した入学許可証やビザ、ワクチン接種証明書、陰性証明書、CovidpassのQRコード……何一つ使わずに。流石にこれはおかしいと思い、一度空港内に戻るも、それらしきスペースがどこにもなく、もう気にすることを諦めることにした。大変だったな、準備……。さて、ここから10日間の隔離期間を過ごすDodo Hotelに移動しなければならないのだが、日本で準備した海外用のSIMカードが全く機能しない。カタールからフィンランドに向かう飛行機の中で、PINも入力し、ローミングもオンにし、設定という設定を施したにもかかわらず、iPhoneは「圏外」を示すのみ。おそらくSIMカードが上手に設定できていないせいで、空港のFree Wi-Fiにも接続できない始末。行く前にGoogle Mapで空港から隔離のホテルまでの道のりを調べておけばよかったものの、なぜかそういう準備まで頭が回らないのだ。ただ、こうした事態に慌てたり不安になったりする脳の機能まで欠落しているため、行き方わからないな…と思いながらまずリガ空港の写真を撮った(のちに、ラトビアでは空港や政府の建物は撮影が禁止されていることを知る)。とても歩いて行ける距離ではない気がしたので、空港内のTravelers Centreに行き、おそらく今回の留学で初めてしっかり英語を話した。Hello, I’m an exchange student of Latvia University, I came from Japan so I have to be under self-isolation, and I booked a room of Dodo hotel,,, “What hotel?”, “Umm..do-do(ドゥ)”, “Dodo(ドド) hotel?”, “ah maybe yes and I don’t know how to get there so…”とこんな感じだったと思う。案内の朗らかなおばさんはRigaのマップをわざわざGoogle Mapで調べて印刷してくれ、空港の出口を出て車が停まる場所を突っ切っていくとバスの停留所がある、そこからでる22番のバスに乗って「セントラル・リガ」という駅で降り、15番のトロリーバスに乗り換えて行くといい、バスの乗車券はトロリーバスやトラムも一括で同じ券を使えて、バスの停留所に発券機がある、と教えてくれた。ありがとうと言ってバスの停留所に向かうと、確かに発券機があるが、買い方がいまいちわからない。今から考えれば、バルト三国の地球の歩き方を持っていたのだから発券機の使い方はそれを参照すればよかったのだが、どこになんの情報がありどういう時に役立つのかをあまり把握していないせいで思い出せず、ぽちぽちと手当たり次第触ってみた。バスだけに使える券や、一日乗車券、5日乗車券、6回の乗り換えまで可能なチケットなど様々あり、私はバスとトロリーバス一本ずつを使って行く予定だったので「2trips」と書かれたオールマイティの乗車券を購入した。乗車券の表紙にはInternet Explorerの「e」マークが印刷されており、色味や紙の硬さなどがどこかUNOのカードに似ている。なぜIE。日本だと行き先までの距離によって値段が変動するものだけど、ここでは関係なく乗車の回数をカウントするみたいだ。結局、よくわからないながらも正しいチケットを買えた気がして、バスの停留所で待っていると、日本では感じだことのなかった秋口の寒さが急に手足を襲った。18時近くになるのに明るすぎる空は、十分に長かった1日をさらに引き延ばした。Travelers Centreのおばさんは「どこで降りたらいいのかちょっとよくわからないけど、バスに乗ったら周りの人が助けてくれるはずだから大丈夫よ」とアドバイスをくれたのだけど、今考えるとおばさんがそう言い切れるくらいラトビアの人々は当たり前にいろいろ助けてくれる人たちだということであって、ちょっとすごい。日本で道を訪ねてきた外国人に対して自分は、「ここからどうやって乗り換えたらいいのかわからないけど、電車に乗っている周りの人に聞いてみれば教えてくれるはずだよ」とサラッと答えられるだろうか。
22番のバスが来るのを待っている間、やっぱり不安になってきたので、目の前でバスを待っている女性に声を掛けた。見た目は2,30代くらいで、ヨーロッパ人を見慣れていないから何人っぽいとかそう言ったことはわからなかったが、少し顔つきがしっかりしていたのでロシア人のようだった。すると彼女は、「バスがもうすぐ来るからついておいで、あ、そのカードも貸して、やってあげるから」と、驚くほどサラサラと手を貸してくれた。バスに搭乗するときも、スーツケースを持ち上げてバスの中心の方の広いスペースまで押してくれ、そのままカードを柱についている読み取り機にピッとタッチした。彼女は、自分はトラベラーのような生活をしていて、ラトビアに住み始めてまだ3年しか経っていない、スイスにいたこともあるし、一番話せる言語は英語ではなくロシア語だ、と教えてくれた。その後彼女は自ら電話番号を教えてくれ、困ったことがあったらいつでも連絡するようにと言い残して先に降りて行った。確かに素性はまだわからないけれど、ここまでしてくれたことには感謝で胸がいっぱいだし、これから地道にやりとりを続けて行って信頼できる関係になれたらいいなと心から思った。

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