自分の声だけを聞く時間。
ただいまって玄関をあけて、背負っていたランドセルをほおりなげる勢いでおく。パタパタと走っていって、手を洗う。うがいもねって言われて、慌ててうがいして。また、パタパタと走っていって。用意してある飲み物をはこんで、一足先にテーブルにつく。
ニコニコしながらやってくる母の手には、おおきなお皿とフォークがふたつ。
甘いシロップいっぱいのホットケーキを、おおきな口でほおばりながら。
あのね、あのねって今日のことを話すんだ。
言えること、言えないこと、話したいこと、話したくないことを意識してしまうようになってから。自分のことを話すことは少なくなったけど、その代わりに、聞いてもらう場所はここになったんだ。
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手帳を開いた瞬間は、たくさんの声が聞こえてる。誰かの言葉やセリフや書いた文章とかが、頭のなかいっぱいにあふれてる。
その声を、ひとつずつ整理していく。いいなって言葉は書いてながら。たくさんの声を聞いていく。
だんだんと声が少なくなってから、やっと聞こえてくる声がある。ささやくように小さいのだけど、この声を聞きたくもあったんだ。
その声こそ、自分の声だ。
やっと気づいたこととか。あの時に言えなかった言葉とか。もっとこう言えばよかったなぁとか。そういうの。
言葉にならないけれど、想っていたことを丁寧にそのまま聞いていく。
ここにくるまでに、時計の針はけっこう進んでいることが多いのだれど。そのくらい、色んな声に隠れてしまいがちなんだよね。でも、ほんとは、たくさんあるんだよね。
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あのね。あのねって話していたころと同じくらい聞いてほしいこと、たくさんあるんだよね、本当は。
誰かに話そうとすると、一回考えてしまうときがあって。そのままを伝えることってなかなかないものね。
だから、聞くよ。ただ聞いていてもいいのだけど、少しは書きとめておくね。せっかく見つけられた声なんだもの。
ホットケーキをほおばりながら、紅茶を飲みながら、ゆっくりと。
手帳にかくことって、自分の声をゆっくり聞く時間なんだ。
いつも読んでくださり、ありがとうございます♡