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CBA ビアテイスター、醸造学基礎セミナーに参加しました

1/15, 16 に CBA(クラフトビア・アソシエーション)が主催するビアテイスターセミナー、醸造学基礎セミナーに参加してきました。

ビールとワインは、違うお酒の種類ではあるのですが、今回この講習に参加したことで、そもそもの世界観が違うんだということに気づくことができました。

ビアテイスターセミナー

主催団体の "CBA" とは、クラフトビア・アソシエーション(日本地ビール協会)のことで、同団体のホームページには次のように案内されています。

日本地ビール協会(英文名 Japan Craft Beer Association)は、日本および世界のビール、地ビール(クラフトビア)の文化の普及と 振興及びビールが醸す人々との交歓を目的に1994年7月24日に発足しました。 小規模醸造が1994年に解禁され、日本に地ビールが誕生したのが1995年です。ビールを分類すると、さまざまなビアスタイル (ビールの種類)があり、世界で80以上のビアスタイルがあると言われています。そのビアスタイルを理解する「ビアテイスター」の普及と振興及び人々との交換をを目的とし、 日本のビールの品質向上を図り、消費者がビールの本当の魅力を知り、より楽しくビールを味わえるように、 当協会は次のような活動をしております。
(太字は筆者が施しました)

http://beertaster.org/seminar/application/cba_info.html

で、このビアスタイルを理解する第一歩として「ビアテイスター」というのがありまして、その講習を 1/15 に受講してきました。

「ビアテイスター」は CBA によると、「官能評価(テイスティング)によってビールの出来の良し悪しを客観的に鑑定し、その理由を理論的に説明できる人」ということで、講習では約40種類のビールを試飲しながら、官能評価のポイントと主要なビアスタイルのアウトラインを学びました。

講習で飲んだ(ティスティングした)ビールがこれ全部です
(15人くらいで1本なので、飲んだ量は少ないですよ)

ワタクシの理解だと、ビールのスタイルは、

  • ドイツ、オーストリア、チェコ系

  • ブリティッシュ(イングランド、スコットランド、アイルランド)系

  • 北アメリカ系

  • その他

にざっくり別れていて、その中で原材料の生産地との距離感でスタイルに変化が出ているという風に感じました。

いずれの地域もなんどか訪れている場所なのですが、これまで漫然とビールを飲んでいてもったいないことをしたなぁと感じております。

醸造学基礎セミナー

1/16 の日曜日には醸造学基礎セミナーに参加しました。醸造学は酒造りのための学問ですが、CBA では、ビールを客観的にテイスティング(官能評価)するためのベースの知識として醸造学が位置づけられています。こういう科学的なアプローチは好みですよ。

で、基礎と銘打ったセミナーだったのですが、内容は基礎レベルではありませんでした。ワインをつくるためにあちこちで醸造に関する話を聞いてきましたが、実践的にここまでのレベルでの醸造についての説明はなかなか聞けなかったです。どんな内容なのか、CBA の紹介ページから少し引用してみます。

煮沸/ワールプール工程で抽出・生成もしくは低減される化学成分の理解
ホップα酸の異性化、ホップアロマの抽出、メラード反応の促進、ホットブレークによる不要成分の除去/麦汁清澄化、DMSの除去、その他

アルコール生成のメカニズムと発酵工程で生成される化学成分の理解
酵母代謝活動の概要、エタノールおよび高級アルコール類の生成、エステル系アロマ・フレーバーの生成、各種有機酸・硫黄化合物・ケトン・フェノール・アルデビド系アロマ・フレーバーの生成、アロマ・フレーバー成分の生成と発酵温度の関係

http://beertaster.org/seminar/application/bs_info.html

この内容をみて、「内容はわからないけど、基礎レベルだね」と感じられる方はうらやましい…(おそらく化学好き、あるいは専攻されてますよね)

実際としては、この講習の内容は醸造酒(ビール、ワイン、日本酒)の成り立ちの理解を深めるのに最高のコンテンツでした。ビールに興味がある方々向けだけでなく、例えばソムリエや唎酒師のような資格を取る方も、この講習を受けるとロジカルで科学的な理解が深まるんじゃないかと感じました。

異なる世界観

ビアテイスターを説明したところで、ビアスタイルというキーワードが出てきています。「ビアスタイル」はビールのスタイルを文章で表現しているものです。たとえば、よく見かける IPA という種類のビールがありますが、これのアメリカンなスタイルの場合には、次のように表現されています。

101. アメリカンスタイル・インディア・ペールエール
アメリカンIPAの色合いは、ゴールドからカッパー(銅色)の範囲。冷温白濁があっても許される。温度にかかわりなくホップ・ヘイズ(ホップによる濁り)があっても許される。フルーティーなエステルはローからハイと範囲が広い。ホップのアロマとフレーバーはハイ・レベルで、アメリカ品種特有のフローラル、フルーティー(ベリー、トロピカル・フルーツ、プラムやアンズなどのストーンフルーツ、その他)、硫黄臭ないしディーゼル・オイルに似た香り、玉葱/ニンニクの香り、シトラス(柑橘)な香り、あるいは松脂や樹脂の香りを伴う。こうした香りの特徴を持つホップであれば、アメリカ品種以外のものを用いてもよい。ホップの苦味はミディアム・ハイから非常にハイ・レベル。モルトのアロマとフレーバーはミディアム・ローからミディアム。ダイアセチルが感じられても、非常にロー・レベルなら許される。ボディはミディアム・フルからフルの範囲。ミネラル含有量の多い水を用いると、スッキリとしたドライなビールに仕上げることができる。

http://beertaster.org/beerstyle/web2004/101X.html#japanese

「ビアスタイル」という考え方では、あるビアスタイルはこの表現の範囲内にあれば、どの麦芽、ホップを使用していても良いのです(上の説明にも「こうした香りの特徴を持つホップであれば、アメリカ品種以外のものを用いてもよい」とありますよね)。つまり、あるビアスタイルを実現するということは、原材料の産地、ワインで言うところのいわゆるテロワールは関係ないということです。これは品種と産地に執着するワインの世界から見ると、とても柔軟な考え方だなーと感じます。

ワインの場合には、世界各地でつくられるぶどう品種を「国際品種」と呼びます。多くの国際品種はフランスが原産地であり、ぶどうの生産地とワインの味・風味の結びつきを「テロワール」という言葉で強化する(呪縛するようにも感じます)ので、どうしてもフランス至上主義的な世界観にならざるを得ないわけです(一般的な考え方であるかどうかはわかりませんが、少なくともワタクシはそのように感じています(特に飲み手側にそういう偏りがが多いような…))。

ピノ・ノワール=ブルゴーニュじゃなきゃ、という偏見(?)はまだ根強いですね

それが、ビアスタイルと言う言葉を用いることで、特定の地域との結びつきを無くしてしまえるなら、色んな土地で、いろんなスタイルのビールを作り出せる自由さを獲得できるわけです。なんかそういうって良いなあと思って。

ビール、ワイン、どちらが良い・悪いという話ではないのですが、それぞれの分野における評価の仕組みを理解することで、それぞれの世界観を立体的に捉えることが出来るものだな、と、今回の講習参加を通じて感じたという話でした。

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