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兎の目指していた人/兎の中の人

エブリスタで書いた『兎の中の人』でも、この人を心から尊敬していると書いた人がいる。
実はオーディション用のプロフィールにある尊敬する人の欄にも必ず書く人で、私がずっと追い続けていた背中と言ってもいいだろう。

 ―――小林賢太郎さんだ。

ラーメンズとして片桐仁さんとコントをしたり、自分で作成した舞台で演出や脚本、監督をしつつも自身も演者を続けてきた方だ。
芸術家としても尊敬できるし、何より自分の作品に対するストイックな姿を見て夢へ向かう勇気や希望を貰ってきた。
そんな賢太郎さんが、11月16日に引退したとニュースが流れた。

本人が上げた文章を見る限り、すでに4、5年前から決めていたらしい。
そんな中、私は新しく見つけた夢に向かい頑張っているということを恥ずかしげもなくアンケートに書いていたことを覚えている。
舞台に立つ機会もあり、同じように立つことが出来たと思っていたことも書いた気がする……一体、どんな気持ちで読まれていたのだろうか。
 
最期に見たのは今年の2月で終演した『うるう』だ。
4年に一度の楽しみでもあり、今年で3回目だった。

2回目のときは「次のうるうも楽しみだね」と、友人と話していたものだが、今回の『うるう』に関しては今までとは違う何かを感じた。
作品の完成度が上がっているのはもちろんだが、今までの作品のすべてを詰め込んだような素晴らしいものではあったがそれ故に「次の4年後はもうないのかな?」といつも賢太郎さんの舞台を見に行く友人と話をしたものだ。

絶対に映像作品にはしたくないと言っていた『うるう』がDVD化された時にその違和感は本物になった。
だがまさか『うるう』どころか引退なんて……
今年、中止になったカジャラなんて幻の作品になってしまったではないか。

今思えば、舞台の楽しさを知ったのは小林賢太郎さんの作品に出合ってからだ。
こんな贅沢な趣味は他にない。
のどかな田舎で現状満足し、生き続けていたら一生出会わなかったであろう。

ずっと追い続けているその背中。
それが見えなくなった今、私の次の目標は……明日はどこへ迎えはいいのだろうか。

まだ数日しかたっていないため、心の傷は癒えてはいないが少しずつ前向きに感がるようにしている。
賢太郎さんは表舞台には立たないが裏方での作業に専念すると制作活動に力を入れるそうだ。
ならば、私はいつか彼の作ったものに関われるそんな役者になりたい。

 舞台、アニメ、ラジオ、絵本の翻訳……

考えてみたら意外とたくさんありそうだ。

ひよっこどころかまだ卵から孵ってもいない存在のくせにこんなことを書くのはおこがましいかもしれない。
だが、新たな目標の一つとして考えたいと思うのだ。

そして、心の整理が追い付いたときに言いたい。


  賢太郎さん、

  今までたくさんの感動と夢を与えてくれてありがとう。

  お疲れさまでした。

  また新しい形での感動と夢を待っています。





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