見出し画像

オブジェクト指向から見るアイドルと芸人

師走も半ばを過ぎたこの頃。コロナの収束が未だ見えない中、今年の年末年始は巣ごもりでテレビやパソコンを前にする時間が増えそうです。そこで、画面の向こうで活躍する「アイドル」と「芸人」に関連してつぶやかれるツイートを調べてみました。ともに華やかな世界で戦っている存在ですが、似ているところと微妙に異なる要素が見受けられました。例えるならば、プログラミング開発のオブジェクト指向で言う、抽象クラスとインスタンス。よく分からなければ、抽象的な属性のようなものと生身の実体と思ってもらって構いません。(こじつけの感もあるので、個人の感想と思って受け流してください。。)

やったことは、「アイドル」「芸人」のキーワードとともによくつぶやかれる単語の、大ざっぱな意味での自動グループ分けです。(具体的にはword2vec(WikiEntVec(鈴木正敏、2019年/CC-BY-SA))と呼ばれれる単語の高次元空間上でクラスタリングを行います。詳しいやり方は過去の投稿「言葉の海に浮かぶ島」。)前回前々回で分析したコロナや政治といった社会的なトピックでは、人々の関心が多岐に渡っていることが見て取れました。一方今回のような比較的狭いトピックでは、異なる角度から見える姿が現れてきます。

キーワード「アイドル」

画像1

「アイドル」というキーワードとともにつぶやかれた11/28~12/3のツイートに頻出する単語は、上のように大きく4つのグループに分けられました。上の2つはアイドルマスター等のアイドル育成ゲームに関連する単語のようです。(左上は宝塚女優の芸名みたいですが、おそらくゲームに登場するキャラクター名…。)左下は「ご当地アイドル」「正統派アイドル」などの「○○アイドル」という単語が目につきます。「声優アイドル」「バーチャルアイドル」という言葉もありますね。右下は、韓流アイドル関連ワードが多くあります。そういえば、「乃木坂」や「嵐」のような日本の有名アイドルの名はどのグループにもありません。まあ、アイドルであることは自明だから、「アイドル」の単語と一緒につぶやかないのかも。

キーワード「芸人」

画像2

一方、11/20~12/12の間に「芸人」のキーワードと一緒につぶやかれた単語を同じようにグループ分けした結果がこちらです。左上は「ひな壇芸人」やテレビ番組の名前など、テレビ関連の単語が集まっています。右上は、アイドルでもあったような「○○芸人」という単語が多いですね。左下は、M-1グランプリが近いこともあり、「賞レース」等の言葉があります。右下は、各種芸人の名前など雑多な印象です。

以上から、まずアイドルと芸人で共通している要素としては、様々な修飾語がついた「○○アイドル(芸人)」があり、多方面で活躍していることが分かります。逆に異なるのは、アイドルはゲームやネット上での仮想的なアイドルがトピックとして大きく表れていますが、芸人ではテレビに関する話題が多いという点です。YouTubeに進出する芸人も出てきましたが、まだ主戦場はテレビということでしょうか。また、芸人に関してM-1に代表される賞レースは影響度が増している印象ですが、アイドルではそのようなトピックワードは見当たりません。AKB全盛期に盛り上がった人気投票という名の熾烈な競争も、今では下火になっているようです。

バーチャルな世界に進出するアイドルと、テレビの賞レースでしのぎを削る芸人。どちらも人々の関心を大きく集め、活動の幅を広げていますが、微妙に異なる様相が見えてきます。アイドルはそもそも偶像という意味ですが、現在ではまさに、アイドルという象徴的な属性をもった存在が広がっています。そこにはリアルもバーチャルも関係ありません。一方芸人は、テレビという枠の中で、体一つで笑いを起こす、極めてリアルな生身の存在と言えるのではないでしょうか。今後デジタル化がさらに進んでも、バーチャル芸人というのは個人的には広がらないような気がします。

オブジェクト指向的には、抽象クラスを継承したアイドルと、実体としてのインスタンスである芸人と言えるかもしれません。哲学的に、神の美を目指すものと、人間に根差す笑いを表現するもの、と対比的に捉えることもできます。

さて、今夜はM-1。去年は優勝したミルクボーイの漫才フォーマットや、ぺこぱの「ノリ突っ込まない」スタイルなど、新たな笑いの形が生まれました。今年はどんな笑いの可能性、そして人間の可能性を見せてくれるのでしょうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?