アイドルファンがみんな「リアコ」だと思うなよ
アイドルを推していてモヤっとしてしまう瞬間
アイドルのオタクをしていて不意にモヤッとしてしまう瞬間がある。それがいわゆる「リアコ」のカルチャーだ。リアコとは「リアルに恋してる」の略で、アイドルのコンテンツの中でも「ファンの皆さんが彼女だと思って胸キュン台詞を言う」とか、「デートシナリオを考える」といった恋愛を想定したものが散見される。先日あるアイドルグループのメンバーが出演していたWeb番組を見ていたときのこと。次々に出される質問に瞬時に答えていく企画の中でふとモヤッとしてしまう瞬間があった。
「好きな異性のタイプは?」
メンバーはちょうどいい塩梅の回答をしてさらっと流されていたが、私はどこか釈然としない気持ちでいた。なぜアイドルに恋愛の話題を振るのだろう。そもそもパーソナルな部分にそこまで深く切り込む必要があるのだろうか。好きな異性のタイプは?———異性愛を前提としていることもさることながら、仮に私たちが日常生活で信頼関係も築けていない人にこんなことを聞かれたらどう思うだろう。アイドルだから、芸能人だから聞いていいという話にはならない。この質問が当該の番組の制作の過程で浮上してくること自体、アイドルのファンは「リアコ」であるという固定観念が内包されているのではないかと強く感じた。
「男なのに男のアイドル好きなんだ」
私はこれまでK-POPやJ-POPのアイドルの歴史的な変遷やトレンド、音楽性などさまざまな視点からnoteを執筆してきた。
他方、これまで自分は一体どのグループを推しているのかといった話はしてこなかったように思う。現在の推しはINI。人気オーディション番組「PRODUCE 101 JAPAN SEASON2」によって選出され、11月にシングル「A」でデビューを果たした男性アイドルグループだ。私自身も男性でありながら、男性アイドルグループを推している。それを他人に告げると時折こんな反応が返ってくることがある。
「男”なのに”男のアイドルが好きなの?」「男のアイドルが好きってことはセクシュアリティは〜」
男なのに??セクシュアリティ??お前は何を言っているんだ??正直ブチギレている。じゃあなんだ。自身が男性で、女性アイドルを推している人はみんな推しを性的な目で見ているのか?女性が男性アイドルを推すときみんながみんなリアコなのか?はっきり言っておく。それは違う。絶対にそんなことはない。もちろん、アイドルオタクの中にリアコと呼ばれるような推し方をするファンも一定数いることは事実で、そこに照準を合わせてリアコ向けコンテンツを公式がYouTubeなどで配信するアイドルグループもある。しかし、アイドルオタクがかならずしもリアコかというとそうではない。むしろリアコにモヤモヤを抱えるオタクも多いのではないだろうか。
アイドルはなぜ「アイドル(偶像)」という言葉で表されているのだろう。それはおそらくファン自身が、推しであるアイドルが虚像であることに自覚的で、なおかつその人の見せる「偶像」としての姿に惹かれているからではないだろうか。アイドルの魅力はかならずしも性別に裏付けられるものではない。むしろ、努力の過程や歌唱やダンスのスキル、メンバー間での交流、ブログやプライベートメールを通して紡がれる言葉…。そうした人間的な部分に惹かれつつ、どこか遠い存在として見守っていたいという気持ちは恋愛とは明白に違う感情だと思う。
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