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ファシストはムッソリーニとヒトラーだけか|クレムリンの狂人#5

左からムッソリーニ、ヒトラー、昭和天皇。

ウクライナ政府公式Twitterがこの3名の顔写真を並べて、
ロシアの行為をファシズムとナチズムになぞらえた。

これに対し、唯一政府として抗議したのが、日本だ。
ネット上でも、昭和天皇をムッソリーニとヒトラーと同列に扱うことへ批判が殺到。

これを受け、ウクライナ政府は当該ツイートおよび動画を削除し、ムッソリーニとヒトラーのみの動画を再投稿した。

この問題には2つの論点があることを忘れてはならない。
1、ウクライナを支援する国家の過去を持ちだしてロシアを批判することの是非
2、昭和天皇をファシズムおよびナチズムの象徴として扱うことへの是非

まず、1の論点から。
結論、問題ないと思われる。
ロシアの残虐性を示すためには、有効な広報だろう。
一方、支援をする側(この場合、日・独・伊)からすると複雑な感情を持つ人や不快な感情を抱く人も出てくるのは当然であろう。

しかし、ウクライナを支援する国は過去の自国の侵略行為への反省があるからこそ、ロシアを批判しているという見方もできる。
こうしてみると、日本政府はやや過剰な反応をしたのではないか。
イタリア・ドイツも国民レベルでは、批判する声もあろうが、現在のところ公式にウクライナ政府を批判しているわけではない。

そこで出てくるのが、2点目の論点。
結論として、昭和天皇をファシズムやナチズムの象徴として見るのは
当時の政治体制や戦後の日本のあゆみを考慮すると難しいと思われる。

確かに、満州事変から敗戦までの約15年間、大日本帝国の元首であり続けたのは昭和天皇であり、一連の大日本帝国の侵略・虐殺行為を指揮した最高責任者と見ることができるだろう。


真偽は定かではないものの、当時の連合国軍の総司令官ダグラス・マッカーサー元帥と面会した際、昭和天皇は「(戦争の)全責任は私にある」と発言したとも言われており、天皇自身が自らの戦争責任を自覚していた可能性がある。

しかし、戦時中の昭和天皇はいわば“御飾り”。実質的な権限や発言権は軍部にあったと見るのが自然。
とはいえ、相対的に見れば、大日本帝国がナチズムやファシズムの側に位置していたのは間違いない。

では、何を象徴とすべきだったのか。それは、大日本帝国そのものであると考える。これは当然ながらファッショのイタリア、ナチス・ドイツにも当てはまることだ。

他国への憎悪感情を煽り、選民意識を植え付け、偏狭で全体主義的な仲間意識に酔狂する。今のプーチン・ロシア、大日本帝国、ファッショ、ナチス・ドイツに通底する流れだ。

日本は今回のウクライナ政府の投稿を批判するだけに終わるのではなく、改めて大日本帝国とプーチン・ロシアを重ね合わせ、「二度とあってはならない」との決意をより強めるべきではないか。
いつまでも、「あの戦争は自存自衛の戦いで選択肢が残されていなかった」と目を背け続けていては、また同じ惨禍が繰り返されないとも限らない。

また、一部で見られる「日本はウクライナへ多大な支援をしているのに、 (この投稿は)残念だ。」との批判はあたらない。
支援に対して謝意を示すのと過去の歴史と重ね合わせることはまた別だからだ。

ここを混同すると、ウクライナだけでなく思いを同じくする国々から思わぬ批判を受けるおそれがある。
もちろん、いくら侵略を受けている側とはいえ、ウクライナの動きに追従するだけでは判断を誤ってしまうので、慎重で冷静な言動が求められよう(ただ、この状況で公然とロシアに肩入れする言動は憚られるが)。


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