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デビッド・ボウイが愛した、京都の庭。

5月末から6月上旬にかけて、神奈川県から西日本までクルマを走らせ、ほぼ2年ぶりに長い旅に出ました。行き先は京都〜岡山県の山の中〜岡山市内〜琵琶湖周辺〜浜名湖周辺。コロナ禍ですっかりご無沙汰していた友人や、街への再訪。この2年間、貯まりに貯まった放浪癖を満たすには、まだまだ2〜3回は、このような旅が必要だと思います。

京都では2日間、予定を入れずに、まずは深呼吸。

僕がたびたび京都に来る理由は、有名無名を問わず古い建物が好きだから。
歴史的建造物や街並みはもちろん、街の真ん中に残る、明日にも解体されそうな建物にまで目が向いてしまい、なかなか観光客らしいことはしていません。それでも決して飽きることはなく、いつも街の中ばかり歩いています。通りの向こうに山が見えるというのも大きなポイント。四条通の向こうに東山が見えると、京都にいることを実感します。
さらに付け加えると、神奈川県から西日本までクルマで向かうときに、ちょうど京都あたりの距離で一泊したくなるからでもあります。

京都で時間が余ったときは、必ずやって来る鴨川公園。比叡山、うつくし。

季節で言えば、桜が散ってから梅雨に入るまでの今がいちばん好きです。たしかに京都で見る桜は格別だけど、あの人混みを我慢してまで見るほどのものか。そして紅葉もまた然り。しかし、この「青紅葉」の時期だけは、京都の街が国際観光都市であることを忘れ、普通の街としての姿を取り戻しているような印象を受けます。冬もいいけれど寒いしね。
今回は「青紅葉」の時期から二週間くらい遅れたかもしれない。それでもどこへ行っても新緑がオミゴトでした。

市営地下鉄「北大路」駅からバス。バスを降りて徒歩15分ほど。

写真は、いつか京都でヒマな日があったら、ぜひ行ってみたいと思っていたお寺です。ここは、あのデビッド・ボウイが足繁く通っていた寺としても知られており、ボウイは日本公演に来るたびに京都に来て、この庭を眺めていたそうで、やがて京都に来るために休暇を取るようになり、『俵屋旅館』に泊まり、ここに現れていたとのこと。

参道は思いのほか長く、ゆるやかな登り。見渡す限りの緑。

僕にしては珍しく早起きして、まだ空いてそうな時間を狙って行ってみました。地下鉄とバスを乗り継ぎ、バス停からはさらに15分ほど歩くという場所にありました。有名な観光地では上賀茂神社が近いのかな? 思いのほか長い参道。深い緑。ここってもしかすると青紅葉の隠れた名所かもしれない。そして何より静か。たまに、ウグイスの鳴き声しか聞こえてきません。おそらく夏は蝉時雨なのでしょう。

お寺の名前は正伝禅寺。臨済宗南禅寺派。庭は江戸初期、小堀遠州によって作られたとのこと。枯山水は、普通であれば岩が置かれている場所に、ツツジの刈り込みが配置されている。そして何より目を引くものは、遠くに見える比叡山の借景。方丈の中は撮影禁止なのだけど、出入り自由。畳の上に寝転がっても、寝落ちしても、誰も文句を言いに来そうにない雰囲気がありがたい。もちろんそんなことはしませんが。
なお、この方丈は伏見桃山城の遺構であり重要文化財。方丈の襖絵は狩野山楽によるもので、こちらも重文です。

獅子の児渡し庭園。江戸時代初期、小堀遠州の作。

結局飽きることなく、ここには2時間近くいました。その間、ほかの観光客は誰も来ませんでした。

ツツジの刈り込みは、右から7,5.3の配置。

さてと、デビッド・ボウイは、ここのどこがそれほど気に入ったのだろう? 今となっては理由を聞くことができないので残念です。

この天井は、関ヶ原の戦いの前に落城した伏見城の木材が使われている。
自刃した武士たちの血の跡や手形が残っており、ちょっと怖い。

立ち去るのが惜しい。できればここに住みたいぞ。などと思いながら帰りの参道を歩いていると、頭の中で『Space Oddity』が何度も煩悩のようにリフレインされるのには参りました。せっかくの静けさの中、もう少し無心で歩かねば。

デヴィッド・ボウイも見たであろうお地蔵さんを眺めながら、静かなお寺を後にする。

なお、乗ってきたバスの進行方向に乗れば、出町柳まで出ることができます。同じルートを戻るのはもったいないので、出町柳行きに乗り、少し手前の鴨川公園で下りれば、とても快適な散歩になりますよ。


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