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”宣言明け”最初の旅は東京観光①:佃島編

いきなりワタクシごとで恐縮ですが、2年前、東京から、今の神奈川県の真ん中あたりに引っ越しました。高い家賃を払いながら、無理に住む必要はなくなったし、必要とあればいつでも東京に出ることはできるし、田んぼはたくさんあるし。ということで、神奈川県の田舎は、住んでいてとても快適な地域なのですが、引っ越して半年後にパンデミックが来るなんて思ってもいなかった。

もともとリモート中心の仕事なので、業務上で困ることはなかったけれど、東京に行く理由って仕事だけじゃなかったんだな、と、つくづく思ったコロナ禍。多摩川の向こうに行けないと、意外なところで禁断症状が出るものなんですね。
たとえば、週一で行っていたラーメン屋とか、喫茶店からぼんやり眺めていた人の流れとか、ネットではなくて、店頭で商品を手に取りながら選べる買い物とか。すべてが懐かしい都会の成分。

そんなこんなで宣言明け、さっそく遠くへ旅に出たいところだけど、まず東京に向かってみたのでした。まだホテル代も安い状態なので、一週間。過ごしたのは花の銀座のど真ん中でした。

銀座まで歩いて行ける東京の漁師町。

まず最初に、佃島に行ってみるのだ。
ここは僕が25年間も住んでいた東京の故郷。とは言っても幼なじみなんていないんだけどね。会社が東銀座にあったので、「いちど歩いて会社に通ってみたい」というバカな思いから、2〜3年住んでみようと引っ越したのでした。ところが隅田川を眺める暮らしがあまりに心地よく、部屋は東向きで日の出が見えるのが楽しく、ついつい四半世紀も過ごしてしまったのです。

降車駅は都営地下鉄大江戸線か営団(今は東京メトロか…)の月島駅。改札を出ても、つい昨日もここを歩いていたように感じるくらい今でも馴染んでいるけれど、出口の案内表示が微妙に変わっていたりして、少し切なくなる。
地上に出ると、古いオフィスビルは取り壊され、広い駐車場になっているし、毎日立ち寄っていた本屋さんは閉店して空き家になっているし、おなじみのスーパーに入れば食品の棚の配置が変わっているし、そのような小さな変化を見ると、さらにぐいぐい切なくなる。これが2年間の時の流れというものでしょうか。

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佃島を象徴する佃小橋。下を流れる佃堀は、つい最近まで木の杭に釣り船が係留されていた。住吉神社の大祭で翻る大きな幟旗を支える支柱は、この堀に埋められて保管されている。堀そのものも整備され、小さな公園になっている。ちなみに、奥に見える高層マンション群は、かつて石川島と呼ばれており、そこには造船所がありました。その手前、少しこんもりと木が生えた公園あたりには、あの長谷川平蔵が開いた人足寄場がありました。

下に貼る写真は5年前のもの。上の写真の右の方、住吉神社の裏から見た佃堀です。この眺めを懐かしく思う人は、まだいないかな。

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島だからこそ守られる、居心地の良さ。

とは言え、江戸開府から間もなく築島され、400年近い歴史を誇る佃島。変わらないものは、これっぽっちも変わらないのだ。
長屋の屋根を突き破ってそびえる巨大なイチョウの木と天台地蔵尊。そして佃島の、というよりも東京湾の守り神とも思しき住吉神社。そして何より、島の風景と、のんびり流れる隅田川。
島だからこそ、路地や袋小路が多く、地元のクルマ以外にはめったにクルマが通らない。だからお年寄りたちは道の真ん中で立ち話をしているし、子どもたちは車座になって遊んでいる。昭和なのです。

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これが佃天台地蔵尊の入り口。佃では普通に見かける路地の入り口と変わりません。ここは近所の方々が、いつもきれいに掃除をされており、ゴミ一つ落ちていません。そして下の写真が地蔵尊の中。右のイチョウの大木が、屋根を越えて長屋の上を広々と覆い尽くしています。大きすぎて、少し離れた場所からではないと写真に撮れない。

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ところでこんなポスターが貼られていました。今年は3年に一度、この小さな島が熱狂する住吉神社の例大祭が行われるはずでしたが、コロナ禍によって来年に延期されたらしい。

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この幟旗は2018年の例大祭より。この旗は、かつて江戸の街の遠くからも見えていたらしく、歌川広重の『名所江戸百景』にも描かれています。下の写真は、佃煮発祥の店のひとつ、『天安』さんの飾り付け。

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住吉神社の神輿は、通称『八角』。天皇の玉座である高御座を模したものと言われています。小さいけれど美しいのですよ。

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そして八角の神輿は船に乗せられ、佃と周辺の隅田川や運河を渡御して回る。この台船の上は江戸時代なのです。

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なんだか先日の佃島ではなく、3年前のお祭りの話で終わってしまいました。佃の歴史を語れば、一本の時代劇ができそうなほどおもしろいのだけど、またいずれ。うっかりこのnoteを見てしまった人は、引き続き隅田川、その他、東京湾岸の話をいくつか書こうと思いますので、ぜひお付き合いください。



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